そういえば。
 

有閑探偵コラリーとフェリックスの冒険」(以後、略してコラフェリ)を書くにあたって、いちばん影響をうけた本をスルーするのは、恩知らずじゃね?
 

と、突然気づいたので、前回までの流れはちょっと横においておいて、だれもが知ってるアガサ・クリスティ先生の話をします。

そもそもコラフェリってですね、ふっと思いついて、ちょこちょこっと短編を書いてみたのがはじまりなんですよ。

 言ってみれば、フェリックスの性格試し書き、みたいな。
 

アンリエットの面影」ですね。

 

でも、わたし自身はフェリックスって面白いと思うけど、他人がどう思うかはさっぱりわからなかったんです。

 

なにせ、わたしってちょっとひねくれてて(ちょっとか?)、多くの人が好まないようなものをあえて好む、みたいなところがあるもので。

 

なので、担当さんに原稿をおわたしして、「こういうの書いてみたんですけど、どう思います?」と訊いてみたんです。

ええ、作品の出来について評価してほしかったんじゃないんです。単に、フェリックスをどう思うか、訊いてみただけです。

結果、OKがでて、文庫にするために、もう一編書くことに。
 

それが「薔薇の埋葬」です。

 

 

でも、この時点では、ミステリーを書こうなんて、さらさら考えてはおりませんでした。
 

むしろ、当時のわたしの頭にあったのは、「椿姫」とか「マノン・レスコー」のイメージで。

 

しかし、「薔薇の埋葬」をお読みになった担当さんは、「ちょっとミステリーっぽいですね。そういう路線もいいかもしれません」と。

 

わたしは困惑してしまいました。
 

なぜならば、ミステリーとか推理小説と呼ばれるものが、子どものときから大の苦手だったからです。

ええ。なにかね、あのジャンルは、お話というより文章化されたクイズみたいで、味気ないと思ってたんですよ。

「ミステリーねえ……しかし、ミステリーって、そもそもどんなのがミステリーなんだ?」

これまでほとんど読んでこなかったので、まるでピンとこず。
 

そこで、担当さんとの打ち合わせの帰り、さっそく本屋さんに立ちよりまして。

 

「ミステリーといえば、有名なアガサ・クリスティ先生だわな」
(というより、ミステリー作家の名前をほかにほとんど知らなかった)
 

そして、わたしはアガサ・クリスティ先生の棚の前に立ったのでした。

 

**続く**
(すみません。このあと長くなるかもしれないので、いったんここで切ります)