『ウクライナ・ショック 覚醒したヨーロッパの行方』
三好範英著 草思社刊
を読みました
ロシアによるウクライナ侵略戦争の影響を受け変わり行くヨーロッパの現状と展望について書かれた本です

ロシアによるウクライナ侵攻により
それまで対露融和政策に偏りがちだったドイツを始めとする西側諸国
そしてまさに目の当たりにして脅威を身に沁みて感じて居る
ポーランド等の東欧諸国の現状と変化について
実際に現地に赴き(ウクライナへも)取材した著者ならではの実感の籠ったレポートであり分析であり展望ですので
国際政治ウォッチャーとしてとても参考になりました

NATO諸国は東西に別れ
ドイツやフランスと云った西側諸国はロシアに対しては経済関係をより密にする事で
ロシアを自由民主主義陣営に変えられると考えて融和政策を採って来た
特に環境保護が活発になるに連れてエネルギー政策でより二酸化炭素の排出量が少ないとされる天然ガスへの依存度が高まりそれに拠ってノルドストリーム等のロシアからのガスパイプラインへの依存度が高まって来た
それに対してロシア勢力と国境を接する東欧諸国が対露危機感を募らせ
西欧諸国との対露危機感の温度差が広がりつつあった処に今回のウクライナ侵攻を受けて
「それ見た事か!」となった

ドイツは我が国と同じく第二次世界大戦の敗戦国として平和主義に基づく外交路線でした
その為周辺国との和解と融和を優先しそれが上手く行って現在の地位を獲得出来たと云う強い自覚と自信を持って居ました
特に交戦国としてロシアに対してはドイツの側から侵略した(と教育されて来た)手前
極力寛大な対応を以て対しそれによって上手くやって行ける自信を持って居ました
クリミア半島をロシアが併合した際も融和政策によってロシアに寛大に接し
経済関係の密接さを深める事で相互依存関係を作り出し平和を維持出来ると考えて居ました
しかしその結果としてウクライナ侵攻を目の当たりにする事となったのです
流石のドイツも現実を直視し考え方を切り替えざるを得ませんでした

ポーランド側も
「我々は弱いドイツを望んでいない。ヨーロッパで責任ある強いドイツを望んでいる。NATOはドイツの軍事力が必要だ。ヨーロッパの抑止力と防衛の大きなハブであってほしい。ドイツの陸軍、航空戦力の弱点は我々の弱点でもある」
「ポーランドは歴史上初めては、強いドイツよりも弱いドイツを恐れている」
として居ます
これはドイツの部分を日本に置き換えると現在の台湾の気持ちに通じるのではないでしょうか

同じ敗戦国で戦後体制に甘んじて平和主義の病に浸かりながらも
ドイツはロシアによるウクライナ侵攻により目を醒ましました
我が国はいつまで平和主義と云う名の平和ボケに現を抜かして居られるのでしょうか

またこの本では安倍晋三元総理についても言及があります
「安倍の安全保障分野で成し遂げた功績は多いが、日本の安全保障におけるヨーロッパの重要性に早くから着目し、NATOとの関係構築に取り組んだのは慧眼だった」
とNATOと我が国との連携強化や安全保障分野での協力の必要性にいち早く先鞭をつけた事を大きく評価して居ました