夢・アフォリズム・詩 (平凡社ライブラリー (149))/F.カフカ
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フランツ・カフカ 『夢・アフォリズム・詩』です。

【内容】
張りつめた緊張と独特の論理にみちたカフカの生の言葉は、読む者の日常すらも脅かす。夢の記憶、箴言、詩を、日記、手紙、ノート等から精選し、小説ではない、もうひとつのカフカを一冊に。

カフカといえば、村上春樹のおかげで認知度が高くなった印象ですが、文学好きには、ずっと昔から定評のある作家でした。サルトルやカミュと並ぶ、実存主義小説の代表格です。『変身』とか『城』とか、名前は一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。どちらも非常に謎めいたテクストですね。とはいえ、サルトルやカミュが生前からすでに大スターであったのに対し、カフカは名声を得た作家ではありませんでした。しかし、彼の独創性に富んだイマジネーションと創作は、他の二人と比べても、劣るどころか、それを上回るほどのものです。

カフカを読んで、その虜になった人間を僕は結構知っています。彼の小説は、ある種の人間にとっては、強い磁石のごとく読む人間を引きつけて離さない吸引力と、昆虫にとってのフェロモンのような蟲惑的な誘因性を持っているのです。

本書は小説ではありませんが、小説以上の濃密な言葉の数々が読む者の心を、本当に「脅かし」ます。圧倒的な迫力と、身を切るような切羽詰まった緊張感にみなぎる文章には、すさまじい毒っ気が付随していますから、ご注意を。

村上春樹が、「フランツ・カフカ賞」を受賞したとき、受賞インタビューで、カフカ作品への思い出を語りました。15歳で『城』を読み、衝撃を受けたこと。そして、その衝撃が、彼の作家としての原点であるということを緊張気味に語っていました。そして、「小説とはどのようにあるべきか」ということについて、カフカが友人にあてた手紙の一節を読みあげました。本書にもそれが収録されているので、紹介しておきましょう。

【僕は、およそ僕自身を咬んだり刺したりするような本だけを読むべきではないかと思っている。僕たちの読んでいる本が、頭蓋のてっぺんに拳の一撃を加えて僕たちを目覚めさせることができないとしたら、それではなんのために僕たちは本を読むのか? 君の書いているように、僕たちを幸福にするためか? いやはや本がなかったら、僕たちはかえってそれこそ幸福になるのではないか、それに僕たちを幸福にするような本は、いざとなれば自分で書けるのではないか。しかし僕たちが必要とするのは、僕たちをひどく痛めつける不幸のように、僕たちが自分より愛していた人の死のように、すべての人間から引き離されて森の中に追放されたときのように、そして自殺のように、僕たちに作用する本である。本は、僕たちの内部の凍結した海を砕く斧でなければならない。そう僕は思う。】

鋭い批評に満ちた怜悧な言葉たちが、全篇を通じて連ねられています。お読みの際には、怪我をせぬようくれぐれも慎重に扱ってください。