7月13日(木)、東京文化会館で、二期会の『椿姫』を観賞した。
ここのところ、満足度の高い公演が続いていたのだが、久しぶりにフツーの公演を観賞した(笑)。仕事帰りで寝不足ということもあって、途中で眠くなってしまった。
眠くなるってことは、公演に緊張感がないってこと、感動がない、ってこと。(決して、レベルが低いと言う意味ではない)
”人を感動させる力がある公演”って、ものすごく稀有ことなんだな、ということを、改めて実感した。
正直に言って、私は『椿姫』があまり好きではない。
最大の理由は、登場人物のキャラが薄いからだと思う。
『椿姫』の登場人物はたった3人。でも、例えば『トスカ』だって3人だけど、めちゃめちゃ面白い。それは、『トスカ』の3人がそれぞれにすごーくキャラ立ちしているから。
一方の『椿姫』
不治の病に冒された高級娼婦:ヴィオレッタ
純情だけが取り柄のナイーヴな若者:アルフレード
堅実な常識人の父親:ジェルモン
この3人のキャラで観客を感動させるのは、なかなかに難しいのではないだろうか。
あとは、指揮者と、歌手(特にヴィオレッタ)の力量に全てがかかっているのだが。。。
今回ヴィオレッタを演じたのは谷原めぐみ。
1幕で最初の第一声を聴いた時、「え、これがヴィオレッタ?」と思ってしまった。重めのメゾに近いソプラノで、あまり魅力的な声質には聞こえなかったから。
その代わり、声量は凄かった。ただ、フォルテになると怒鳴るような感じになるのが気になった。逆に低音があまり響かないので、声にムラがあるように聞こえる。
むしろ、第3幕の死にゆく場面での、ピアノで歌う場面の方がずっと良かった。元々声量があるので、ピアノで歌ってもちょうどいい感じだし、声質も弱音の方が美しく感じられた。
アルフレードを演じたのは、村上公太。
今まで色々な公演で拝聴している。特に不満に感じたことはなかったけど、今回初めてずり上げて歌う歌い方が気になった。いいテノールって本当に少ないんだな〜、と改めて思う。
ジェルモンを演じたのは、今井俊輔。
三人のなかで(相対的に)一番よかった。何箇所かあれっと思うところはあったが、力みのない自然な歌唱で好感が持てた。カーテンコールでも一番拍手が行っていたように思う。(もう一つ拍手が多かったのは、ダンサーたち)
指揮者のアレクサンダー・ソディーは、注目の若手だと言うことだが、丁寧で歌手に寄り添う演奏ぶりがとても良かった。
客席は、結構、空いていた。
3年前のシーズンと同じ演出だし、今シーズンは、パレルモ=マッシモ劇場、ローマ歌劇場の引越公演でも『椿姫』の公演があって、いい加減観客も飽きたのでは? 来シーズンは、新国立でも『椿姫』があるし。
二期会は、海外勢を助っ人に呼ばず日本人だけで公演する、というポリシーを貫くのであれば、『椿姫』みたいな王道中の王道はできるだけ避けた演目選びをする方が良いのではないだろうか?
あるいは、王道を取り上げるのであれば、もっと奇抜な演出にするとか?
今回の演出は、椿の花びらを象った舞台で、それが最後まで続く。3幕のベッドも豪華なもので、とても所持金を使い果たした女の部屋には見えなかった。
来シーズンの二期会の公演は、
・ドン・カルロ
・午後の曳航
・タンホイザー
・デイダミア
・蝶々夫人
の五つ。王道の『蝶々夫人』も、演出が宮本亞門だし、全体的になかなか良い構成だと思う。
指揮:アレクサンダー・ソディー
演出:澤田康子
ヴィオレッタ:谷原めぐみ
アルフレード:村上公太
ジェルモン:今井俊輔