5月28日(日)、日生劇場にて、ケルビーニ作曲のオペラ『メデア』を鑑賞した。日本初演、日生劇場開場60周年記念作品ということだ。

 

 

 

初めて『メデア』を鑑賞したのは、昨年の12月、METのライブヴィーイング。ソンドラ・ラドヴァノフスキーがタイトルロールを演じ、その鬼気迫る圧巻の歌唱に圧倒された。だから、今回の公演は、とても期待していたのだが。。。

 

残念ながら、今回の『メデア』、正直言って、眠かった悲しい大あくび大あくび大あくび

 

眠くなるのは、こっちの責任もあると思うけど、前回鑑賞した『リゴレット』みたいに、仕事帰りで寝不足で疲れていても、お目目ギラギラで、全く緊張が途切れずに鑑賞できるものもある。

 

やっぱり、眠くなるのは、”この公演が私の心に刺さらなかった”からなのだと思う。5年間くらいオペラ鑑賞を続けてきて、やっと、この当たり前の事実を認められるようになった。今までは、眠くなるのは、自分の鑑賞眼がないせいだ、と思っていた。

 

 

今回の公演で、唯一、バッチリと覚醒したのは

 

2幕、メデアの侍女ネリス(メゾソプラノ)が登場した場面。

 

ネリスが、アリア「貴方と一緒に泣きましょう」を切切と歌っている時には、思わず、涙が出てきた。歌い終わった時の観客の拍手もすごかった。今回の公演での一番の聴かせどころだったのではないだろうか。

 

ネリスを演じたのは、山下牧子。低音から高音まで、一つ一つの音の粒が揃っていて、ムラがない。メゾだからということもあるだろうが、中低音が響く、というのは、こんなにも心を揺さぶられるのだな〜、と実感した。

 

 

タイトルロールのメデアを演じたのは、中村真紀。4月に鑑賞した『平和の日』(R.シュトラウス)のマリア役で初めて聴いたソプラノ。その時から、声に芯のあるソプラノだな、と感じていた。

 

 

『メデア』(フランス語『メデ』)は、1797年にパリで初演された。その後、ドイツ語版が1850年代に作られ、イタリア語版は、1909年に生まれたということだ。

 

だから、コロラトゥーラ的な技巧も当然要求されるけど、ヴェリズモオペラ的な感情の爆発も要求され、大変な難役であるらしい。しかも、ほとんど休みがなく、1幕後半からずっと出ずっぱり、歌いっぱなしという過酷な役どころでもある。

 

特に、終盤で、自分を裏切った夫ジャゾーネに対する復讐心にかられて、愛する我が子を手にかけようと悩み狂う場面は最大の見せ場。

 

ここは、低音から高音へ、ピアノからフォルテへと、魔女の心情と母親の心情との間で、メデアが激しく揺れ動く場面。

 

だから、高音だけではなく、中低音をいかにしっかりと響かせられるかが、”愛”と”憎”に引き裂かれる心情を表現する要となると思うのだが、残念ながら、中村真紀の中低音はもう一つ響いてこなかった。高音だけはよく響いたので、全体的にどことなく一本調子に聞こえてしまうのは、やはり、中低音が弱いのが原因ではないかと思う。

 

だが、これだけの長丁場。若干の疲れは感じられたが、最後まで歌い切ったのは、見事だと思う。

 

 

ジャゾーネを演じたのは、城宏憲。お名前は拝見するけど、実際に聴くのは初めて。上背があって、舞台映えのするテノールだと思うけど。。。ウ〜ム。体で歌っていないというか、どっちかというと喉で歌っているというか、あまり心に残る歌唱ではなかったかな。。。

 

 

演出はシンプルだし、オーケストラ編成も小さいけど、日生劇場自体がこじんまりとしていて、アットホームでとても良い雰囲気。

 

興味深い演目を格安で提供してくれるこのNISSEY OPERAシリーズ。私はとても気に入っている。次回は、宮里直樹が出演する『マクベス』、その次が三島由紀夫原作の『午後の曳航』。どちらも非常に楽しみにしている。

 

 

 

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指揮:園田隆一郎
演出:栗山民也
 
メデア:中村真紀
ジャゾーネ:城宏憲
グラウチェ:横前奈緒
ネリス:山下牧子
クレオンテ:デニス・ビシュニャ