4月6日、東京文化会館にて、ワーグナーの『ニュルンベルクのマイスタージンガー』を鑑賞した。
30分の休憩を2回挟んで、約5時間40分!
絶対、寝落ちするよ〜、腰が痛くなるよ〜、と思って、今まで敬遠していたのだが、確かに2幕は眠くなったけど、1幕(80分)と3幕(110分)はバッチリ覚醒していたし、幸いなことに通路側の席で、リラックスした姿勢で鑑賞できたせいか、腰も全然辛くなかった。
でも、1幕の終わり、2幕の終わりで帰る方も結構いらして、3幕全部聴き通すのは、やっぱりハードルが高いんだな~、と実感。
今回も、『仮面舞踏会』に引き続き、演奏会形式。
意外なことに、私、演奏会形式、結構好きかも💓
オペラは演出があってなんぼ、と思っていたので、演奏会形式なんてつまらない、と今まで思い込んでいたのだが、どうしてどうして、これがなかなか面白いのだ!
演奏会形式だと舞台がないだけ、チケット代が安くなる。その分歌手にお金をかけることができ、実力のある海外ゲストを呼ぶことができる。
今回も実力揃いのゲストがずらっと並び、非常に聴きごたえがあった。
歌手の皆さんにとっても、妙な演出で疑問に思いながら歌ったり、動き回る演出で息を切らして歌うよりも、歌唱のみに専念できる演奏会形式の方が、実力を存分に発揮できて、案外、好評なのもしれない。
今回、カーテンコールで一番拍手が大きかったのは、ベックメッサーを演じたアドリアン・エレート。
楽譜を全く見ないで、演奏会形式にあるまじき(笑)演技振りだった。彼のおかげでこの公演が一層盛り上がったことは間違いない。
双眼鏡で覗きながら、どこかで見た顔だな、と思っていたのだが、昨年3月、小澤征爾オペラプロジェクト『こうもり』でアイゼンシュタインを演じた人だった! 道理で、コミカルな演技がうまいわけだ。
ザックスを演じたのはエギルス・シリンス。
2月に新国立の『ホフマン物語』で初めて聞いたシリンス。 『ホフマン』の時は変装していたので、今回、しばらくは同一人物だということに気づかなかった。
そのシリンス。出だしは調子が今一つだったのが、尻上がりに調子を上げてきた。ただ、準備不足なのか、楽譜をずっとガン見していたのは、どうなんだろう? 他の出演者が視線を送っても目を合わせず、楽譜をずっと見ている場面もあった。
シリンスの声質がザックスに合っているかどうかはよく分からない。シリンスの声は、どちらかというと、謹厳実直で、がんこ親父的なイメージ。でも、私のザックスのイメージは、もっと温かみのある感じ。
だって、若い娘(エファ)が好意を寄せるくらいなんだから、包容力がある人な気がする。それに、規則に捕らわれない新しい歌を認めたり、徒弟制度の拉致外にある天才肌の騎士ヴァルターの歌を認めたりするんだから、かなりの柔軟性もあるはず。
『マイスタージンガー』の最後は、ザックスの「ドイツ文化礼賛」で終わる。やっぱり、ワーグナーは、ドイツ人の魂に響くんだろうな〜。ナチスが、ニュルンベルクの街を国粋主義のメッカとして利用したことも納得できる。
指揮は、マレク・ヤノフスキ。
かなりのご高齢。1939年生まれというから、84歳 よろよろ歩いてきたけど、それが、5時間近いオペラを振るんだから、とんでもないエネルギー。
演奏自体がどの程度素晴らしかったのか、私には判断ができない。マイスタージンガーを聞いたのも初めてだし、コンサートってあんまり行かないし。。。
でも、カーテンコールでたくさんの拍手や総立ちのスタンディングオベーションがあったので、きっとワグネリアンたちにとって、満足のゆく演奏だったのだと思う。
さあ、次の「東京・春・音楽祭」は『トスカ』だ!
ブリン・ターフェルのスカルピア、楽しみ~
指揮:マレク・ヤノフスキ
ザックス:エギルス・シリンス
ヴァルター・フォン・シュトルツィング
:デヴィット・パット・フィリップ
ポークナー:アンドレアス・バウアー・カナバス
ベックメッサー:アドリアン・エレート
コートナー:ヨーゼフ・ワーグナー
ダフィト:ダニエル・ベーレ
エファ:ヨハン二・フォン・オオストラム
マグダレーネ:カトリン・ヴンドザム