1月29日(日)、東京文化会館で、藤原歌劇団の『トスカ』を鑑賞した。
やっぱり、プッチーニは凄い!!
出だしから、緊張感あふれる音楽と共に、アンジェロッティが教会に飛び込んでくる。まるで映画みたい。観客を一瞬で物語の世界に引き摺り込む。前奏曲はない。
ちょうど先週鑑賞したばかりのロッシーニの『オテッロ』が1814年の初演、『トスカ』の初演が1900年だから、その間、86年の歳月が流れている。音楽もここまで変わるわけだ。
ロッシーニが歌手の歌唱に重点を置いているのに対し、プッチー二はドラマを重視している。だから、コロラトゥーラとか、どれだけ高音が出せるか、とかではなく、ストーリーのドラマ性とか登場人物の心理をどれだけ表現できるかに重点がある。
指揮は鈴木恵理奈。
オーケストラの演奏は、プッチーニのメロドラマ性を際立たせるものになっていた。ゆったりとしたテンポでメロディーを歌わせる感じ。歌手に配慮した演奏だったと思う。歌手の皆さんは歌い易かったのではないだろうか。
歌手陣について言うと(素人の勝手な感想で恐縮だが)
カヴァラドッシを演じた藤田卓也が突出して良かった。彼一人で舞台を盛り上げていたと言って良い。
藤田を聴いたのはこれが二度目だが、前回よりも上手くなっている気がする。
最初に聴いたのは2年前の『ラ・ボエーム』におけるロドルフォ役。その時は、コロナ真っ只中だったので、フェイスシールドをつけての歌唱であった。若干怒鳴っているように聞こえたのは、フェイスシールドをつけていたせいもあったかもしれない。
声量があり、熱い歌唱で、ちょっとヴィットリオ・グリゴーロを彷彿とさせる。声質も似ているかも・・・。
トスカ役を演じたのは、佐田山千恵。初めて聴いたソプラノ。残念ながら、声が前に飛んでこない。オケが鳴っていない時はいいが、ちょっと大きくなると声が届かない。(オケはかなり気を使っていたのではないか) 声質も私の好みではなく、ちょっと籠ったような響きであった。
その意味で、藤田とのバランスは良くなかった。
スカルピアは須藤慎吾。一度、宮里直樹等とのコンサートで聴いたことはあるが、オペラで聴いたのは初めて。あちこちで名前を拝見するので実力派のバリトンではないかと推察するが、スカルピアには向いてないと思う。(そもそも日本人でスカルピアに向いたバリトンがいるかどうかは疑問なのだが。。。)
スカルピアの人物像に合わせるために、無理をして歌っている感があった。須藤にあった役柄はもっと他にあるのだろう。
ただ、トスカとの相性は良かった。実力のレベルが合っているのか、声質があっているのか。。。
演出は極めてオーソドックスでシンプル。私は生でトスカを鑑賞するのが2回目なので、なんの不満もないが、幾度となく鑑賞している方々には物足りなかったかもしれない。
最後に一言。
コーラスがまだマスクをつけていた。子供たちも。
もういい加減マスクを外そうよ! 先週鑑賞した『オテッロ』ではだれもマスクをつけていなかったよ。
カーテンコールで手を繋がないわざとらしさも、もう止めてほしい!
歌劇団の体質ってこういうところにも表れる気がする。藤原歌劇団が読み替え演出を好まないのも、根っこは同じかも。
指揮:鈴木恵里奈
演出:松本重孝
トスカ:佐田山千恵
カヴァラドッシ:藤田卓也
スカルピア:須藤慎吾