「フィガロの結婚」(石井宏訳・解説)を読む。名作の新訳(1998年)というだけあって、読みやすい。

 

 

表紙はエイフマンバレエの「フィガロの結婚」である。バレエにも「フィガロ」があるのは知らなかった。ぜひ見てみたいもの。

 

1784年、ルイ16世の反対を押し切り、フランス座で「フィガロの結婚」(戯曲)が公開されると、4,5千もの観客が劇場を取り囲み、開幕時には圧死者が出たほどの熱狂ぶりであったという。

 

モーツァルトは「フィガロの結婚」をオペラ化しようと、ヨーゼフ2世の禁令に抗して、作曲を進めた。台本作家のダ・ポンテは、皇帝に直談判して次のように言う。

 

皇帝陛下の主宰する劇場の品位を汚すような場面やセリフは全てカットしました。音楽は驚く程の美しさに満ちています、と。

 

ヨーゼフ2世は即座にモーツァルトの音楽を聴くことにした。結果、大いに気に入り、茫然とするほどであったという。(『オペラ対訳ライブラリー』を参照した)

 

 

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登場人物の年齢に関して、若干コメントしたい。

 

原作によれば、フィガロは30歳。

「おれなんぞは偶然のことから貧乏な30年を授かった・・・」とあることからこれは明らかである。

 

マルスリーヌ(フィガロの実母)はおそらく46〜48歳くらいと思われる。

 

「つまらない人生を30年も送った」というせりふがあるが、この30年は、フィガロを出産してから今までの年月を指す。彼女は何歳でフィガロを生んだかは分からないが、バルトロの屋敷に仕えていた若い時にフィガロを出産しているから、恐らく16~18歳くらいか?

 

では、シュザンヌ(スザンナ)は何歳か? 

 

シュザンヌが伯爵に向かって、次のように言う場面がある。

「奥様が血の道になられ、殿様のエーテルの瓶を拝借しようと走ってきました」

 

ここでいう「血の道」とは、月経、妊娠、出産、更年期等、女性ホルモンの変調に伴う症状のことである。「奥様が血の道になった」とは、月経痛になった、あるいは月経に伴うイライラや腹痛頭痛のことであろう。

 

それに対して、伯爵が、いずれお前も必要になるから(エーテルの瓶を)取っておけ、と答える。

 

つまり、スザンナはまだ月経が始まっていない?!

それとも、始まって間もない?

 

当時のフランスにおける初潮の平均年齢は分からない。日本の文献を見ると、1900年以前の出生で15歳前後、というものが見つかった。

 

フランス革命直前なので、それより若干遅いとしても、初潮前なので、スザンヌはやっぱり15、6歳だったのか?

 

少なくても、18歳以上ということはないと思う。伯爵は今のことばでいうと、ロリコンである。12歳のファンシェットを追い回していることでもわかる。(戯曲では、ファンシェットを「12歳のあどけない少女」と指定している)

 

ちなみに当時は、独身女はたくさんいたらしい(貴族は除く)。結婚年齢もそれなりに高かった。持参金を貯めるために、何年も働かなくてはならなかったため。

 

10代の若い娘がお屋敷で奉公する事はごく一般的なことであった。スザンナも、若い時のマリスリーヌもファンシェットも、持参金を得るために働いている。

 

当然、若い奉公人に雇い主の手がつくこともあった。フィガロは、バルトロと、彼の屋敷に奉公していたマリスリーヌの間の子である。

 

アルマヴィーヴァ公爵や夫人の年齢に関しては分からない。もう少し調べてみたいと思う。

 

 

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