これは、和尚の講和の中の一説ですが、翻訳していたのですが、そのファイルがなくなってしまって、私の記憶の中だけにあるお話です。
「昔、ある王様が栄華を極め、贅を尽くしていました。そこに、王様が信頼し、尊敬していたスーフィーの聖者から箱に入った贈り物が届きました。ただし、箱は生命に危険が迫ったときだけ開けるように、聖者から伝言されていました。箱を開けたい誘惑を抑え、いつしか年月が経ちましたが、王様は約束を守り、その箱を開けることはなく、その贈り物のことも忘れていましたが、あるとき、隣国との領土争いが起こり、戦争になり、王様が最前線で指揮を執ることになったとき、王様はあの箱のことを思い出しました。万が一、わが軍が負け、私の身に死が迫るかも知れまい。そこで、前線にその箱を持っていくことにしました。
案の定、部下が殺され、自分も追い詰められ、もうそこまで敵軍が迫り、敵の馬の足音が、岩場に身を潜めていた王様に聞こえ、死を覚悟した瞬間、あの箱のことが思い出されました。そうだ、聖者がいっていた時が来た。この箱を開けよう。いつも胸元にしまっていた箱を開けました。そこには薄っぺらい紙が入っており、なにやら文字か書かれていました。そこには{これもまた過ぎ去ってゆく}と書かれてありました。王様は深く悟るものがありました。そして、敵の馬の足音は王様から遠ざかり、王様は部下に助けられ、戦にも勝利し、無事お城へと戻ることができたのでした。その凱旋パレードで、王様の心の中には{これもまた過ぎ去ってゆく、人生も世界もただ夢のように現れて消えてゆくだけ}という響きがマントラのように心の中でこだまし、その後、どんなことにも執着がなくなり、動揺することなく、大王となって、多くの民に愛され、敬われ、天寿を全うしたのだった」
この人生に起こるすべてのこと・・病気、貧乏、苦しみ、悲しみ、寂しさ、不安、幸せ、喜び、戦争、勝利、敗北、当選、落選、複雑な人間関係、結婚、離婚、再婚・・・
みーんな{現れては過ぎ去り、消えてゆくだけ}
消えないのは自己の本心、鏡のような意識だけ
王様からそんなことを学んだのでした。