上海から蘇州までは新幹線に乗れば、最速20分ちょっとで到着する。

上海近郊にも有名な水郷があるが、蘇州は蘇州で風光明媚な風景があって、非常にアクセスも良い上に、行った事はないので蘇州まで足を伸ばすことにした。

当然の様に今日も軍隊生活なので、5時半に起きて上海駅を朝6:48発に出発する新幹線に乗って蘇州へと向かった。


上海で新幹線が発着する駅はいくつかあるが、新天地から最もアクセスが良くて近い上海駅にしておいて良かった。

中国の新幹線はさも飛行機に乗るような感覚で、遅くとも出発の30分ぐらい前には駅に着いていなければならない。

昔は紙の切符+パスポートを持って有人の改札口その1に行かないといけなかったが、今はチケットにパスポートの番号が登録されているEチケット方式に変わったらしく、紙のチケットは廃止されている。また、中国鉄路12306で予約しておけば、予約手数料も無しでQRコードが発行され、それで改札口その2を通る事も出来るようになっていた。

その2つは我々外国人にとって有難い仕様変更だ。

と言っても、やはり日本の新幹線のように出発5分前に駅に着いてというわけには行かず、無駄に10分15分と駅の待合室で待たなければならない。



朝の上海駅は空いている


30分で蘇州に到着し、地下鉄で1駅移動した。

杭州や上海はAlipayのQRコードで地下鉄に乗れたが、蘇州はそうは行かなかった。

どうやら地元民?はQRコードでも乗れるらしいが、少なくとも私のAlipayでは蘇州の公共交通機関に乗るにはICカードを買うよう表示が出ていた。

なので、AlipayかWe ChatのQRコード決済で地下鉄の切符を買おうとすると、買う前に中国の電話番号を登録が必要で、中国の電話番号など持っていないので現金で地下鉄の切符を買った。以前中国に行っていた時の人民元の余りを持ってきておいて良かった。

蘇州の地下鉄だけが唯一現金が必要になった場面だった。


蘇州駅から1駅北寺塔駅まで地下鉄に乗り、駅を出るといかにも中国らしい塔が立っている。

そして、周りは蟹蟹蟹蟹と、蟹が全面に押し出されている。それも無理はない。日本で上海蟹として有名な蟹の名産地である陽澄湖は蘇州にあるので、街全体が蟹を全面に推し出している。そして、道端にはジャスミンの花で作った腕輪を売るおばちゃんがいっぱいいた。蘇州は水郷と蟹とジャスミンの街だ。


蘇州にいくつかある庭園のうち、一番大きな拙政園へと赴き、中国式の庭園を散歩した。人が多いのを除くと良い雰囲気だ


拙政園内その1 向こうの方に北寺塔駅横の塔が見える


その2


園内の建物内


拙政園を後にした我々は近くにある蘇州の昔ながらの街並みが残る地域を散歩した。東洋のベネチアと呼ばれる蘇州は水路が張り巡らされた所に柳の木が生えていて、それらしい雰囲気が残っている。

ここ最近はどうやら中国の若者の間で昔の漢服を着て写真を撮るのが流行っているらしく、蘇州はまさにそれに合った雰囲気がある。という訳で、そこら中に古顔変装だの古顔換装といった看板が掲げられていて、実際に漢服を来た映やす系の若者が大量増殖していた。


蘇州の水郷の風景その1


その2


朝早く起きて適当に朝ごはんを買い食いしただけだったので、11時前には既にお腹が減っていた。なので、お目当ての蟹叁寶蟹黄捞饭(苏州拙政园店)という蟹餡掛けご飯が有名なお店に向かって歩いて行った。

道すがら蘇州茉莉花茶と書かれたお茶屋さんがあったので、普段使い用のジャスミン茶を買う為に寄ってみた。そこでもあれやこれやと様々なジャスミン茶を試飲し、店のおばちゃんが日常用に飲んでいると言うジャスミン茶を買った。

街中に本当にジャスミンの腕輪を売っている人が多いので、蘇州のジャスミン茶は有名なのかと聞いてみると、清代からの名産品だと教えてくれた。


そのすぐ先にお目当てのレストランがあり、11時の時点では待ちは無かった。口コミによると行列するらしい。私は蟹アレルギーで蟹は一口ぐらいしか食べられない。酷いと吐いたり蕁麻疹が大量に出たり、気管が狭くなって喘息っぽくなったりする。なので、蟹料理屋でまさかの鶏肉のパリパリ焼きを食べるという、店の人からしたら何しに来た?状態になっていたが、妻氏は蟹餡掛けご飯定食と蟹小籠包を頼んでいた。全部で¥3,000ぐらいで蟹が楽しめてお安い。


蟹定食と鶏肉


味の感想を聞いてみると、昨日の人和館の蟹生煎包と違ってかなり美味しいらしく、余りに美味しそうなので一口だけ貰った。確かにかなり美味しいではないか。これはアレルギーが起こっても良いと思わせるぐらい美味しい。美味しいので鶏肉を蟹に付けて食べた。妻氏には都合の良いアレルギーだと呆れられた。実際その後何も起こらず、自分でも都合の良いアレルギーだと思う。蟹の種類によると思い込む事にした。


昼ご飯に満足し、次は寒山寺というお寺に行った。寒山寺も同僚曰くお勧めスポットらしく、中国式のお寺の中を見て回った。

すると、超絶達筆なじいちゃんがお札を書いている所があって、じっと見ていたら、めんふぃーめんふぃーと言っている。めんふぃー?と思いつつ、ああ免費かと閃き、お札と書いてもらいたい言葉を選んで書いてもらった。図らずもそれらしい良いお土産をゲットした。




お寺散策を楽しみ、結構雨も降っていたので上海に戻る事にした。帰りの新幹線では猛烈に眠気が襲ってきた。が、上海行きだったので、少々寝ようとも寝過ごす心配は無く、気付いたら上海に着いていた。


上海に戻ってきて少しばかり時間があったので、またお茶市場に行った。夜の一服用に高級龍井茶、普段使い用にジャスミン茶と烏龍茶を買うつもりをしていて、烏龍茶だけ買えていなかったのだ。

お茶市場は当然お茶屋ばかり集まっていて、正直どこが良いのかわからないし、大体どこも店主はやる気がなさそうで同じように見える。どこで買おうかと見ていると、たまたま店のおっちゃんがニコニコとしているお店があって、そこに烏龍茶と書いてあったので、そこへ入ってみた。


ここでもやはり大量に試飲させてくれる。店のおばちゃんも出てきて、あれも飲めこれも飲め、上海へは遊びに来たのか等言われ続け、大紅袍含め各種烏龍茶、白茶等合計10種類ぐらい飲ませてくれた。と言うか、滅茶苦茶営業された。

大紅袍は最高級茶の代表格なので、高級茶は龍井を買ったからなぁと思いつつ、値段を聞くとそこまででも無かった。財布の紐が緩みまくっているので、一服用にちょっとだけと普段用の烏龍茶を買った。


さて、中国最後の晩餐は高級レストランへ赴く。この旅は妻氏への誕生日プレゼントなので、言江南(虹梅路店)という高級浙江料理レストランを予約していた。折角上海にいるので、その周辺地域の料理の高級店に行ってみたかったからだ。

どの店にするか一撃必殺で選ばねばならないので、毎日中国版食べログを欠かさずチェックし、ここぞと思われるお店をリストアップして、そのお店を予約していた。


言江南は中国版食べログで4.9という超高評価のお店で、口コミやら写真を見る限りでは、どれを食べても美味しいと書いてあるし、実際とても美味しそうに見える。どれを食べるか迷いながらお店に行くと、1人2万円弱でフルコースがあって、前菜5品、スープ1皿、メイン3品、お口直しの1品、〆の炒飯が出てきて最後にデザートという、合計12品のフルコースだったので、迷わずそれにした。実際は前菜の前に開胃小菜と書いてあったお通し的な小皿が3つ、お菓子、フルーツが出てきたので、12品よりも多い。



いよいよ運ばれてきた前菜から完全に美味しさ全開で、ニヤニヤが止まらない。次に出てきた雲南省産キノコを使ったスープもとても上品なお味がする。個人的には福建省の福州で飲んだ佛跳牆(余りに美味しそうな香りにお坊さんですら修行をサボって、塀を超えて飲みに来るという言い伝えがある福建料理の代表的な高級スープ)と同じぐらい美味しいと感じた。出てくる物全てが本当に猛烈に美味しい。美味しいという言葉で表すのに無理があるぐらい本当に美味しい。

中でも人生最高級に美味しかったのが、戻したナマコ入りのナマコスープと〆の鮑乗せ炒飯だった。そもそもナマコ自体食べた記憶が無いが、こんなにも美味しい物なのかと衝撃的だった。そして、私は帆立がアレルギーで全く食べられない。出汁に入っていても反応してしまうぐらい重症のアレルギーなので、鮑もその可能性があって、今まで人生で一度も食べた事が無かった。が、鮑乗せ炒飯が出てくるまでの過程で、余りにも美味し過ぎるので、最早鮑でアレルギーが出ても後悔は無いと思い、躊躇無く人生初の鮑を食べた。鮑乗せ炒飯の美味しさに、今までの人生で食べてこなかった事を完全に後悔した。思わず出た「鮑って美味しいなぁ」の一言が心の底からの素過ぎたのか、妻氏は吹き出していた。

デザートも中国の本式では温かい物が出されるらしく、流石は医食同源の国である。


本当にこれ以上無いぐらい絶妙なバランスで調理された品々が提供されるので、中国の食に関しての奥深さと多様性に加えて、世界三大料理と呼ばれる理由を感じる。中国人が美味いと言えば美味い。これは疑いようの無い真理である。

お店の人曰く、Emperor beefという料理もあって、中国の皇帝が食べていたかもしれないお味も味わえた。


お店が教えてくれた情報によると、お店のコンセプトは伝統的な浙江省の料理を基本としつつも、現代風にアレンジしてあるようで、確かにそんな感じがした。



中国の中でも物価が高い上海で1人2万円でこんな超絶クオリティの食事が楽しめるのなら、私は喜んで上海へ行く。張家界杭州間のフライト後に2度と中国の飛行機には乗らんと言っていた妻氏も、余りの美味しさに上海乗り継ぎはアリかもしれないと言っていた。散々中国で飲み食いした中でも、ぶっちぎり美味しさ1位で間違いない。本当に大満足で宿へ戻った。


ちなみに、このレストランは余裕で英語が通じるし、トイレも日本の高級レストランクオリティで、しかも便座にはウォシュレットがあった。やはりお高いお店は色々と違う。


雨が降っていたのと、戻る頃には22時になっていたので、昨日撮りそびれた外灘の夜景はパスし、そのまま良い気分で宿へ戻って就寝した。