この日の朝はとても早かった。ブリュッセルを7:10に出発するマドリード行きイベリア航空IB3207便に乗らなければならない。

グランプラスの夜景を撮るのに2時前まで起きていて、2時間半仮眠して4時半に起きた。旅行中はアドレナリンが出まくっているにしても眠たい。そそくさと用意して宿指定の場所に鍵を置き、宿を出た。

夜中でも人がたくさんいたグランプラスも流石に日の出前の朝5時となると誰もいない。酔っ払いがホテル出口近くの階段で大いびきをかきながら寝ていただけだ。酔っ払いが外で寝ているあたり、もしかすると治安が良い街なのかもしれない。

昨日の晩は人が多過ぎて諦めたグランプラスの写真もこの時間なら撮り放題だ。空港へ向かう電車の時間もあるが、次いつ来れるか分からないので撮っておいた。



朝5時のグランプラス


幸いブリュッセル国際空港は市内からとても近く、電車で20分ぐらいで到着する。結構混んでいたチェックインカウンターを横目に優先チェックインを行い、ラウンジで朝ごはんを軽く食べて飛行機へと乗り込んだ。こういう時に会員ランクを持っていて良かったと身に染みて感じる。


早朝のブリュッセル国際空港


定刻通りイベリア航空3207便はブリュッセルを出発し、2時間強でマドリードに到着した。マドリードの空港に来るのは何回目だろうか。スペインに来るのが4回目で、その度に通っている気がする。

私は欧州の中でも好きな街がいくつかあって、そのうちの1つがスペイン・バスク自治州のビルバオという街である。スペインに行く目的はサッカーと美食に全振りしていると言い切っても良いぐらいの私は、バスク料理が大好きなので、現地の肥えた如何にも美味い物好きそうなおっちゃんから、ガイド本には決して載っていないような情報を聞き出してはその時に行ったり、次の旅に行くリストにしたりしている。

私は日本では絶賛コミュ障だが、美食に命をかける身としてはどうしてもスペイン語が必要で、それなりに勉強した結果、現地でさして困らない程度にはスペイン語が話せる。そして、スペインに行くと何故か結構饒舌になる。妻氏には日本でもそれぐらい話せば良いのにと言われるが、私個人的には土地の雰囲気がそうさせるのであって、日本では無理だと思っている。

特にビルバオに行く時は必ず、アスレティック・ビルバオという地元の人が熱狂的に応援しているサッカーチームの服を着ている。それを着てバルで飲み食いしていると、良い具合に出来上がった美味い物好きそうで陽気な地元のおっちゃんおばちゃんが、君分かってるね〜的な感じで大体話しかけてきてくれて、そこへスペイン語で返すと、一瞬目を見開いて美味しい物情報を教えてくれるという好循環が生まれる。



私はまたビルバオへ行ける事がとても嬉しかった。マドリードの空港で2時間程乗り継ぎがある。ここでもラウンジが使えて軽食が食べられるが、その後念願のバスク料理が待っているので、ラウンジ飯ごときにお腹の容量を使う訳にはいかない。

まだかまだかとビルバオ行きイベリア航空426便の出発を待ち、いよいよ出発の時刻となった。ニヤニヤが止まらない。この日の昼はビルバオに初めて行った時から毎度通っているセランテスというレストランに行くからだ。

このお店に初めて行った日はとても寒くて、体を温める為に頼んだビスクのような見た目をしたスープが衝撃的な美味しさで、それ以来ずっと通っている。2回目に行った時はこれまた食に命を掛けている友人とビルバオで現地集合し、セランテスでスープを頼むと、この友人も衝撃的な美味しさにスープでメイン料理を挟むという暴挙に出ていた。店のおっちゃんも笑っていた。それ以来この友人もビルバオに何度も通わせる程の威力を持っている。


これがそのスープ。



3回目は結婚する事になる前に妻氏と行った。妻氏は初めてのビルバオで、例によってこのスープやら、他に色々バスク料理のど定番を食べていると、特に妻氏にはチピロネス・エン・スー・ティンタという、イカをイカ墨で煮込んだ料理が特に気に入っていた。ビルバオに行くならスープとチピロネスを食べない選択肢など有り得ないのだ。

最早スープを受け入れる口が完全に出来上がっている。マドリードからビルバオまでは1時間弱で到着し、空港近くのレンタカー屋でレンタカーを借りた。(※セランテスは街中にあるので、本来ならレンタカーは必要ない)

車で店の近くまで行き、いよいよ店に到着した。今回はメニューすら見る事無く、我々が好きな2強と、チャングーロという蟹味噌を使ったグラタンを注文した。


チャングーロ


チピロネス(前回旅の写真より)


注文した品が運ばれて来た。早速食べた。おや?何かが違う。美味しい事は美味しいのだが、明らかに前回より塩辛い。妻氏が心待ちにしていたチピロネスもやはり塩辛い。チャングーロも同様だ。長い間来れなかった間にシェフが変わってしまったのか、期待を大きく下回って何とも残念で仕方がない。落胆して店を出た。もうセランテスへ行く事はないだろう。


食事を済ませて1時間程車を走らせ、サン・ファン・デ・ガステルガチェという景勝地にやってきた。断崖絶壁にある階段を降りて行って、また階段をひたすら登ると、海に浮い崖の上に建った教会に辿り着く。入口近くからその風景は見えるが、時間もあるからという理由で教会まで行ってみた。が、これが絶賛筋トレで、片道35分ぐらいかかる上にひたすら階段を登り降りするので非常にきつい。完全にダイエットであった。我々は旅に出ると、毎回図らずもこんな苦行をしている。



崖の上に建つ教会


車で途中にあった巨大カルフールに寄って日本に持って帰る食料品を調達し、宿へ帰った。この後はアスレティック・ビルバオ対レアル・ベティスの試合を観に行く。

妻氏は全くサッカーに興味が無いが、折角来たからという理由で一緒に来てもらった。前までビルバオに来ても試合が無かったり、アウェーで試合が開催されていたりで、遂に試合を見られる機会を得られご満悦である。私はこの試合の為にバスク語の応援歌を覚えていった。

この試合はスペイン1部の上位対決で、試合前から熱狂的なサポーターが凄まじくスタジアムの外で応援していた。


試合前のスタジアム近くの様子


試合にはカタールW杯のピッチに立っていた選手達が目の前にいる。サッカー好きにとっては堪らない。現地人に混じって現地語で応援する姿に妻氏は、なんか急にスペイン人になってると若干引いていた。私はスペインに来たら急に性格が変わるので、そんな事はお構いなしである。



キックオフ直前



試合は前半早々にベティスのFW ウィリアン・ホセがゴールを決め、ビルバオは何度もゴールを脅かすが、結局0-1で敗れてしまった。ゴールの瞬間の地鳴りのような歓声を味わえ無かったのが悔やまれる。


試合が終わり、近所のバルで少し食事を済ませて宿に戻ると、何やらベティスのサポーターがいっぱいいた。近くに警備員もいたので、もしやベティスの選手が戻ってくるのでは?と待っていると、まさにその通りだった。選手とサポーターとの距離が近い。選手が宿の中に入ると警備が解かれ、サポーターは普通にホテルの中に入って選手と写真を撮っていた。私も幸運な事に、この日ゴールを決めたウィリアン・ホセに写真を撮ってもらった。





ベティスの選手を迎えるサポーター


興奮冷めやらぬままに就寝し、楽しく1日を終えた。