2023年11月某日未明、自宅を出発して一路ウズベキスタン共和国の首都タシュケントへと向かった。いよいよ待ちに待ったウズベキスタンへの旅の始まりである。


事の発端は遡る事5年程、我々が結婚する事になる前に、新婚旅行で行くとしたらどの国が良いか?という妄想話になり、大学生の頃から暇さえ有れば海外旅行の有益情報を調べ尽くしていた私は、世界各国のいつか行ってみたいバケットリストについてプレゼンを行った。

当然そのリストの中には、華の都パリ等のベタな観光地も含まれてはいたが、少々日本人には馴染みの薄いであろう場所も含まれていて、そのうちの1つがウズベキスタンであった。


当時の恋人(現妻)は「〜スタン」と聞くや否や「は?ウズベキスタン?パキスタンやらアフガニスタン等と一緒で治安が悪そうで嫌」とかなりの難色を示したが、どうやらウズベキスタンについてはそうではないらしいという事、中央アジア屈指の大観光地がある事等、積極的な各種ポジティブキャンペーンを行った結果、それならいつか行ってみたいと思わせる事に成功した。そして、遂にその日がやってきた訳である。


朝7時に成田空港第5駐車場に到着し、意気揚々とチェックインカウンターへと向かう。今回往路で利用するのはソウル経由のアシアナ航空。予算の都合上今回はエコノミークラス利用で、片道運賃は約¥65,000/人だった。


幸いにも一瞬でチェックインと出国審査を済ませ、搭乗口近くのベンチで朝ごはんを食べながら「ビジネスかワンワールド系列の航空会社ならラウンジで一服出来たのにな〜でも飛んでないから仕方ないけどやっぱり暇ね」等と、呑気な事を言いながら朝食を済ませた後に妻氏から一言。


「私の首枕は?」


この旅行へと出発する前に、この旅はそれなりの長距離便でエコノミー、しかも深夜便もあるという事で、妻氏はしっくりくる首枕(¥3,500程度)を調達していたのだ。それを私の鞄に引っ掛けておいて、その一言を言われた私は思わず、ん?と確認すると、車を降りた時に付いていたはずの首枕が無いではないか。


その時点で妻氏の戦闘力3万Up、一方の私は急激に縮こまる。しかしここは日本であって日本でない場所。搭乗口から出国審査場までの間を探したが落ちている訳もなく、どうする事も出来ないので、近くにあったインフォメーションのお姉さんに落し物について聞いてみた。しかしやはり届いていないとのこと。この私にはその報告義務があるので、それを正直に伝えると、最早テストで0点を取った時ののび太とのび太のママ状態が完全に再現されてしまった。旅の初っ端からやってしまった。


ちなみに私は海外旅行に行くと、自らの不注意で割と何かと物をよく失くす。過去にはウィーンからブダペストへ向かう電車の中で置き引きに遭ったり、ヘルシンキの空港でパスポートを失くしかけたり、広州の空港で中国南方航空のチェックインカウンターに財布を忘れて係のお姉さんに追いかけられたり、香港の街中で香港版Suicaを落としたりという具合である。しかも大体そういう時に限って、その前に妻氏は私に忠告していたりする。今回も例によって、そんなとこに引っ掛けて落ちたりしてと家で言われていた。が、しっかり引っ掛ける金具が付いてるから大丈夫等と呑気に宣っていたのである。


やはり今回も予言を的中させ、戦闘力が低く見積もっても10万には達した妻氏を連れて急遽近くにあった店で首枕を購入し、私は更に縮こまると同時に我が財布から¥3,000少々が飛んで行ってしまった。


何故こんなにも予言は的中するのかねと思いながら搭乗時刻となり、成田9時発・ソウル仁川国際空港行きのアシアナ航空OZ107便へと乗り込んだ。