所轄署から警視庁本部への転属が決まった西澤は、意気軒昂として桜田門に向かう。だが、所属は期待していた捜査一課ではなく経済事犯を扱う横領や詐欺事件を捜査する捜査二課。
この部署は、同僚をライバル視するエグい捜査員の集団だった。
事件の全体像を示さず捜査情報も出さない二課にあって、新米から経験を積み重ねて一人前になっていくのだが、狡猾で悪事に長けた知能犯を西澤は追いつめていく過程を、事件に関る人間の裏表を、かつてない緊迫感で描いた「保持」
「十二桜」「あたり」「へそ」の4つの連作短編警察小説。
何せ相手は知能犯である。先ずひたすら数字との格闘から捜査が始まる。わずかな情報から通帳やその他の経理資料の分析を行う。気づかれれば証拠を隠滅されて終わりだから極秘で捜査は進行。
しかし証拠を集めるためには人に接触することも必要である。
人間の裏表が暴かれていく中で挫折を繰り返し、人を見る目が鍛えられていく過程がリアル。
人は手取り足取りされての過保護では本当の成長は望めないのだ。
自己の知能を絞り尽くしてもがいている内にいつの間にかレベルアップするのだ。
西澤の出逢う知能犯たちと、西澤の失敗と、それを冷たく見つめているだけのようでいて、実は彼の成長をともに喜ぶ同僚上司たちの姿が上手く描かれて好感。
ただ話がすごくシンプルで比較的あっさりで容易に推理が出来てしまう、展開が平坦でサクサクしすぎているのが不満。
2012年6月双葉社刊