『ラオスにいったい何があるというんですか?』というのは村上春樹氏の紀行文集であり、タイトルにあるラオスのほか主に海外を訪問あるいは滞在した折のエピソードなどをまとめたものであるのですが、全11章のうち、最後の2つの章は日本の熊本です。
自分は一般的な村上春樹ファンに多い「長編派」なので、最近でこそ短編集もエッセイも手にするようになったものの、紀行文に関しては訪問したことのある国や地域でないと読んでいてもついていけないところもありそれほど熱心に読んでいませんでした。
たまたま昨年、九州を訪問する機会があり(ちょうど大河ドラマ『いだてん』も放映中だった)熊本に行ったことで妙に親近感が湧き改めて文庫版を手にしたのでした。
単行本が発売されたのが2015年11月で、文庫化は2018年4月。
当初は熊本に関する章は1つだけでした。2015年に作家仲間の吉本由美、都築響一らとともに熊本を訪問し、そこで見聞きしたものに関して書いたまさに紀行文でした。3人は過去にも「東京するめクラブ」と称し紀行文集を発刊されています。
この訪問の折には、熊本市内にある「橙書店」でゲリラ的に朗読会を開催。熊本市内の熊本城、漱石の住んだ家のほか、県内各地、阿蘇、八代、人吉など各地を訪問されていました。『ラオスにいったい何があるというんですか?』の第10章「漱石からくまモンまで」にはその時の「楽しい」旅行記が盛り込まれていたのでした。
その後、2016年に熊本地震があり、3人は「するめ基金」を設置して被災地支援をはじめ、チャリティーイベントのため再訪問。
そのときのことが第11章「熊本再訪のご報告」として、(単行本にはなかった)「ラオス~」の文庫版に追加されていたのでした。
その後村上氏は2020年2月にも熊本を訪問され朗読会を開催されていました。
被災地支援とはいえ、大作家、村上春樹氏が寄り添ってくれるなんて羨ましいと思うのでが、実際、熊本、いいところでした。
7月初旬の大雨で熊本南部の被害が報じられていましたが、被害のあった人吉では、2015年、3人がSL列車に乗って訪問し、うなぎを食べたりしたことが書かれていました。「するめ基金」が人吉の被災地に役立てられると予想、というか期待しています。