<自分を客観的にチェックする自分を別に作る?>
たびと 他人の目で相互にチェック効果もあります。でも,もっと重要なことは,各メンバの自分の心の中にチェックマンを養成するということなのです。
保品 たびとさんの得意な心理学的対応とでもいうやつですか?
たびと 各メンバが自分で一生懸命作成した障害報告書,修正仕様書,修正設計書,修正プログラムなどが書けたら「できた!」とすぐ思うのではなく,別の人格である自身に内在するチェックマンが「では,本当にできたかチェックを始めるぞ」と自分の成果物をついて客観的に確認するようにしてもらうのです。
保品 別人格? 「二重人格とでもなれ」ということですか?
たびと いえいえ。客観的に自分の成果物を確認する場合,「自分が」やるという認識が強いと,どうしても「自分は正しい」「低レベルな間違いはしないはず」というフィルターを掛けて見てしまうのです。そのフィルターを自分で取り払うことができるような状況を別人格と表現しただけです。
保品 そのあたりまで,じっくりと先を見越した人を扱う自信というか,やり方の信念という点で,私はたびとさんに比べまだまだですね。私のチームミーテイングがうまく行かない原因はすべて私にあるということがだんだん見えてきました。
たびと そんなに落ち込む必要はありません。私の経験でも状況は常に違いましたし,うまく行かないことも数えきれないほどです。当の私も完全に自分の成果物を自身で客観的にチェックできているわけではありません。ただ,現状を打開するには自分の経験から良いと信じることを,最初は全然100点満点でなくても,地道にやり続けるしかないのです。
保品 でも,一人の力では,いくら信念が強くても,進みが厳しい現状もあるのではないですか?
<やらずに「信念」を語るのはどうかな?>
たびと たぶんその通りかもしれません。ただ,保品さんは「いくら信念が強くても」と言われていますが,その信念は周囲がやり方を変えることへの抵抗感に負けている程度の信念ということですよね。
保品 たびとさんは,痛いところを突きますね。強い信念でやりもせず,今私がいった信念は,最初から不可能な場合のことを考えてしまう程度の信念だと仰りたいのですね。
たびと 結局,自分が一番仕事をするのだということをそれこそ信念をもって相手に伝えられれば,周囲もいずれは付いてくる可能性が高くなると私は強く感じています。
保品 逆に,最初から誰かにやらせることを考えたり,周囲の力に頼ろうとしてしまうと,周囲の抵抗に負けて,うまく行かないとお考えなのですね。
たびと 周囲に頼ろう,周囲に任そうとする「人間の弱さ」から,最後はそのうまく行かないとその原因をどうしても自分以外のせいにしてしまうです。
保品 なるほど,人間の弱さですか..。その「弱さ」という点については,後でもう少し詳しくお聞きしたいと思っているのですが,月曜ミーティングの話の先をお聞きします。Hさんの反応はどうでしたか?
<批判的だったHが少しずつ理解を示す?>
たびと その後H君と少しやり取りした後。彼は「要するにたびとさんが言いたいことは,僕が風邪で休んだときでも,誰かが対応できるようにしたいということですね?」と理解を示し始めてくれたのです。
保品 一番批判的なHさんが理解を示したことは大きかったのでは?
たびと 私は最後の一押しの言葉を彼に付け加えました。「まったく,そういうことなんですよ。Hさんの休んでいる間,『私が』Hさんに代わって対応できるようにするためですよ。どっちが対応能力が高いか勝負だね(笑)」とね。ここで,12時前になったので,「来週までに,みなさん毎日必ず1時間を使って,担当している案件を問合せ管理システムに順次登録してください。登録するために要した1時間分案件対応が遅れても構いません。」と言って終了しました。
保品 1回目は終った後,その週のメンバの仕事ぶりはどうでしたか?
たびと メンバは自分の担当している残件について,ゴソゴソと確認を始めました。たとえば,メンバ間で「この案件って,そっちにボールが行っているよね」「あっ,そうだった。ゴメン放置していた」「じゃ,問合せ管理の状況をそちらにボールがある状態にしてくれる」「了解」などとコミュニケーションが密に始まりましたね。
保品 自分以外に見えない状態にしておくことを「楽」と感じるか,相互にはっきり見える状態のほうが「楽」と感じるか。後者のほうが「楽」だと感じるように少し変わったのですね。
たびと そんなにすぐに変わりません。ただ,ここからが勝負です。うまく行き始めたから,手を抜いてよいと考えるとすぐ元に戻ってしまいますから。
保品 では,たびとさんは追加でどんな手を尽くしたのですか?
(14話につづく)