寝たきりになり言葉も発せず

眠りから覚めると視線だけを投げかけてくる。

年々、表情の変化を読み取るのも難しくなっている。



僕を抱き、僕を叱り、弁当を作り、裁縫をした手。そして雪積もる枯れ枝のようになった手。

たぶんその手に触れたくなり、感謝したくなり、包み込みたくなり、温もりを記憶したくなり、

バックパックに入れていたクリームでハンドマッサージをした。


たっぷりとハンドクリームを出して少し温め

ゆっくり包み込み、マッサージをする。

時が刻んだシワの一つ一つにしみ込むように、

乾きが痛みが癒えるように。





シトラスの爽やかな香りが枕元に広がり、

深海の底のような表情が微かに綻ぶ。

淡い光を遠くから優しく発しながら。


その手に手を重ねながら、僕は読み取ろうとした。潮が引いた僅かな間に綺麗な貝殻を拾い集めようとするように。


拾い集めた貝殻はほんの少しだ。

でもそれはきっとかけがえのないものになるだろう。