寝たきりになり言葉も発せず
眠りから覚めると視線だけを投げかけてくる。
年々、表情の変化を読み取るのも難しくなっている。
母
僕を抱き、僕を叱り、弁当を作り、裁縫をした手。そして雪積もる枯れ枝のようになった手。
たぶんその手に触れたくなり、感謝したくなり、包み込みたくなり、温もりを記憶したくなり、
バックパックに入れていたクリームでハンドマッサージをした。
たっぷりとハンドクリームを出して少し温め
ゆっくり包み込み、マッサージをする。
時が刻んだシワの一つ一つにしみ込むように、
乾きが痛みが癒えるように。
シトラスの爽やかな香りが枕元に広がり、
深海の底のような表情が微かに綻ぶ。
淡い光を遠くから優しく発しながら。
その手に手を重ねながら、僕は読み取ろうとした。潮が引いた僅かな間に綺麗な貝殻を拾い集めようとするように。
拾い集めた貝殻はほんの少しだ。
でもそれはきっとかけがえのないものになるだろう。

