二日目の西海岸観光バスツアーを終えて、その夜は友人夫人の実家M家の夕食に招待された。“手づくりの旅”ならではのことである。観光会社の定形ツアーではこれが出来ない。そして、その地に行って最も「その地らしさ」を味わえるのは、家庭の生活を味あわせていただくことである。
M家に着いたのは8時に近かったが、ご両親と夫人のご兄弟も集まってくれて、私の到着を待っていてくれた。しかもご両親が心をこめて作ってくれた料理の数々と、泡盛『瑞泉』27年もの古酒(クース)を並べてのことである。
まずお父さんに言われたことは、「本土ではまず酒を飲んで食事に進むが、沖縄では最初に少量のものを食べてそれから泡盛に進む。今日は沖縄流でどうぞ」ということであった。なるほど、度数の強い泡盛を、当然ストレートで飲むには先ず食べてからと言うのは合理的なのであろう。既にお茶碗には少量の御飯が盛られていた。
私は先ず、沈金の綺麗なお椀の汁物から頂いたがこれが美味しい! 私としてはめったにないことだが、後でお代わりをしたくらいだ。

そのほかお父様が作ったといわれる「落花生豆腐」はじめ、海ぶどうやソーキ肉など沖縄料理の粋をいただきながら泡盛古酒を飲んだ。27年ものともなれば30度という度数を全く感じさせない。実にまろやかでスイスイとノドを越す。
見れば部屋の隅に古酒の壷が置かれてある。お父さんは酒器に移して飲んだ量だけ、別の壷から注ぎ足す。「仕次ぎ法」とよばれる泡盛独特の熟成法で、こうしてクースの味を保ちながら量を保持していくのである。一般には、良く出来た古酒を年代順に5種ぐらいそろえておき、飲んだ量を古いものから順次注ぎ足し、一番新しいものに新酒を足していくといわれている。酒は、良い酒と悪い酒を足せばよい酒になる性質があると聞いているが、それらの性質を利用しながらの量と質の保存法であろう。ここにもまた沖縄の知恵を見た。

これらの話をお父さんに聞きながら、酒と食、旅、戦争、基地など話は弾んだ。何よりも心に残ったのは、戦争と基地にかかわるお2人の言葉であったが、それは次回に譲る。