《3/23/2016》《 321日目》～《3/28/2016》《 326日目》
ブエノスアイレスに来てからすこぶる調子が悪い。
空をつんざく高層ビル、
まっすぐに整備された道
道路を彩る街路樹
広い道
どこまでも続くお店
ブロンドや青い瞳の人たち
ここはもうアフリカでないのだなぁと思う。
南アフリカもそれはそれは大都会で、もうここはヨーロッパなのか、アフリカじゃないと思った。
だけど、ブエノスアイレスはもっともっと、南米のパリの名に恥じず、
寸分の疑いようもなくヨーロッパだと思った。
高いビルを見上げると頭がくらくらした。
5階、6階の高さじゃない。
10階も20階もありそうな高い建物。
街を歩くと、タイムスリップでもしてきたみたいに、生まれ育った田舎から上京してみたいに、大都会の様相に動揺した。
私は昭和の終わりに生まれた東京の人間のはずなんだけどな。
ゴミ箱からあふれるゴミを見ると、なぜだか少しほっとした。
そこにアフリカらしさ、を感じ取ったから。
私がいるのは大西洋を挟んだアメリカ大陸で、
もちろんアフリカではないわけで、
今度は南米の雰囲気を楽しめばよいのだろうけど、
なんだかどうしても、しっくりこない。
そういえば、トルコを終えて、ヨーロッパ圏に入ったときも、なんだかどうしても、しっくりこなかった。
ヨーロッパのような素敵な雰囲気へのチューニングが、どうも苦手みたいだ。
ここには、黒人はいない。
スラム街にちょこっといたけど、ほとんどいない。
ほんとにアフリカの人ときたら、
すぐお菓子やらお金やら結婚やらねだってきて、
誰でも挨拶してきて
テキトーで
その辺で歌ったり踊ったり
いい大人がそろいもそろって無邪気で
笑顔が素敵で
悪いやつもいて
悪いやつなのが顔に出まくりなのも、なんだからしくて、
親切で
怒りんぼで
でもすぐまた笑って
掃除が苦手で
言い訳ばっかりして
何かとクオリティの低いことばかりしていて、
何かと未完成で
貧乏で
ボろうとしてきたり
うざかったり
めんどくさかったり
臭かったり
汚かったり
あぁ、ぎゅうぎゅう詰めのバスは臭かった。
だいたいの人間は貧乏で、豊かでないけれど、楽しそうにやっていた。
そりゃあもうアフリカだった。
ツアーなのに野宿させられたり
その上雨まで降ってきちゃったり
バスなのに勝手に行き先変更してたり、
ドライバーが疲れたからって終点の手前で降ろされたりもしたな。
そりゃあもう、アフリカだった。
空は広くて
雲は流れてて
乾燥しすぎだったり水浸しだったり、ちょうどよくない土地が多くて
食のバリエーションが少なくて、
大しておいしくないのに食べて行くうちにくせになっていったり
便利や快適からは、ずいぶんと遠いところにいた。
そういえば緑の便がでたり
原因不明の蕁麻疹に見舞われたりもしたし、
盗難にもめでたく2回も遭遇した。
そんな日々が、どうしたことか、今なんだか、
無性に懐しい。
あの適当で楽しそうな黒人たちが、今なんだか、
無性に恋しい。
南京虫がいないか確認してから宿を決めたり、
いい人なのか悪い奴なのか、疑いながら話をしたり、
そんなことが無性にしたい。
アフリカだったら、こうだったのに、
アフリカだったら、ああだったのに、
と、最愛の人でも失ったみたいに、何かにつけてはアフリカを思い出す。
アフリカに、帰りたい。
出国してから、前の国々がこんなにも心に残り続けるのははじめてだ。
大好きだったジョージア、アルメニア、キルギスだって、ここまで後ろ髪をひきはしなかった。
強烈なエピソードの数々は、私の体に深く深く刻まれた。
アフリカに帰りたい。
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