ホテルは、
何を循環させる?

ホテルでは、毎日たくさんの電気や水が使われます。

食材が運び込まれ、料理となり、使い終えた水や、食べられなかったものが外へ出ていきます。

タオル交換を減らす。
使い捨てのアメニティを置かない。

それも大切な選択です。

けれど、今回見たいのは、宿泊者からは見えにくい場所で、ホテルを動かす仕組みそのものがどう変わっているか。

電気をつくる。
水をもう一度使う。
食べたあとのものを、畑へ戻す。


オフグリッドだけに限らず、異なる規模と方法で環境負荷を減らす6つの宿を訪ねます。

BEYOND “ECO-FRIENDLY”

「環境にやさしい」で終わらせず、
宿を動かす仕組みに泊まる。

環境への配慮は、旅行者に見えるものだけではありません。

建物が必要とするエネルギーを減らす。地域の水や自然エネルギーを使う。厨房の生ごみを堆肥へ変える。

何を外から受け取り、何を減らし、何を生み出し、使ったあとにどこへ戻すのか。

その流れを見ると、ホテルの裏側にある環境への考え方が見えてきます。

4つの視点

INPUT|外部から何を受け取るか

REDUCE|何を使わないようにしたか

CREATE|ホテルの中で何を生み出すか

CIRCULATE|使ったあと、何をどこへ戻すか

画像は記事のテーマをもとに作成したイメージビジュアルです。実際の建物、設備、発電装置、客室、料理、農園、周辺景観とは異なる場合があります。

EDITOR’S NOTE

環境配慮は、
設備の多さだけで測れるのか。

太陽光パネルや発電設備は、ホテルの取り組みを分かりやすく見せてくれます。

一方で、最新設備がなくても、食材を無駄なく使い、清掃の回数を見直し、捨てるものを減らすことはできます。

小さな宿と大型ホテルでは、使う資源も、実現できる方法も異なります。

今回は「どのホテルが最も環境にいいか」ではなく、それぞれが自分たちの規模や土地に合わせ、どこから仕組みを変えているかを見ていきます。

01 / ZERO ENERGY

ITOMACHI HOTEL 0

電気をつくる前に、
必要なエネルギーを減らす。

愛媛県西条市にあるITOMACHI HOTEL 0は、日本初のゼロエネルギーホテルとしてつくられました。

ゼロエネルギーとは、電気をまったく使わないことではありません。

建物の断熱性や設備効率を高め、自然の光や風も利用しながら、まず必要なエネルギーを減らす。そのうえで再生可能エネルギーを生み出し、年間のエネルギー収支を実質ゼロへ近づけます。

環境配慮を後から加えた設備ではなく、建物の設計段階からホテルの使い方を組み直している点が特徴です。

旅行者は発電量を意識し続けなくても、客室で過ごすこと自体が、エネルギー使用を抑えた建物を支える選択になります。

REDUCE|建物が必要とするエネルギーを抑える

CREATE|再生可能エネルギーを生み出す

QUESTION|環境性能を、快適さを我慢させずに伝えられるか

 

02 / ISLAND ENERGY

八丈ビューホテル

発電した電気を、
島を巡る移動へつなぐ。

八丈ビューホテルの屋上には、太陽光発電と蓄電設備があります。

そこで生まれた電気は、館内で使われるだけでなく、宿泊者が利用できるEVカーシェアへも供給されています。

さらに、館内で供給する水の約95%には八丈富士の地下水を利用。太陽熱を使った温水設備や、地元食材を育てる温室にも取り組んでいます。

島のホテルでは、宿泊施設だけを省エネにしても、観光地を巡る移動には別のエネルギーが必要です。

ホテルでつくった電気を車へつなぎ、水や熱も島の環境から受け取ることで、滞在と移動を一つの仕組みとして考えています。

INPUT|八丈富士の地下水と太陽の光

CREATE|電気と温水を生み出す

CIRCULATE|発電した電気をEVでの島内移動へ

 

03 / FOREST & ENERGY

軽井沢プリンスホテル イースト

森を眺めるだけでなく、
地域の資源として使う。

軽井沢プリンスホテル イーストを含むプリンスグランドリゾート軽井沢では、水力発電所を稼働させています。

また、製材時に生まれる木くずなどを圧縮したペレットを燃料にするストーブや、電気自動車、電気カートなども導入しています。

敷地内の倒木や伐採木、建物の解体で出た廃材は、テラス、館内のアート、ウッドチップ、体験プログラムの材料として再利用されています。

森林リゾートにとって、木々は宿泊者へ見せる景観である一方、手入れを続けなければ維持できない環境でもあります。

森から得るものを燃料や素材へ変えながら、リゾートの中へ戻す。景色と資源の間にある関係を考えさせる取り組みです。

INPUT|水、木材、森林から生まれる資源

CREATE|水力による電気

CIRCULATE|倒木や廃材を建築・アート・体験へ戻す

 

04 / URBAN CIRCULATION

ホテルニューオータニ(東京)

大量に使うホテルだからこそ、
大きな循環をつくれる。

数多くのレストランや宴会場を持つホテルニューオータニでは、厨房から毎日大量の食品残渣が出ます。

館内のコンポストプラントでは、それらを有機堆肥の原料へ変え、契約農家へ送り出しています。

農家で育てられた野菜や穀物の一部は、再びホテルの食材として使われ、庭園の肥料にも利用されます。

厨房排水を再生し、トイレや植物への散水に利用する中水設備もあります。

自然の中にある小さな宿だけでなく、都市の大型ホテルにも循環はつくれる。むしろ扱う食事と水の量が多いからこそ、仕組みを変えたときの影響も大きくなります。

REDUCE|食品残渣を廃棄物のまま終わらせない

CIRCULATE|堆肥、農作物、ホテルの食卓へ

CIRCULATE|厨房排水を散水やトイレ用水へ

 

 

05 / COMFORTABLE CHOICE

GOOD NATURE HOTEL KYOTO

捨てないことを、
我慢のように見せない。

GOOD NATURE HOTEL KYOTOでは、客室に使い捨ての歯ブラシ、ヘアブラシ、シェーバーを常備していません。

各フロアにウォーターサーバーを設置し、客室のタンブラーを使うことで、ペットボトルの使用も減らしています。

館内から出た食品残渣は堆肥化され、農家と連携した循環型農業へ。菓子づくりで出るカカオの皮は、お茶として客室へ戻ります。

建物はWELL認証とLEED認証を取得し、環境性能だけでなく、空気、光、睡眠、緑など、人が心地よく過ごせる環境も重視しています。

環境のためにサービスを減らすのではなく、捨てない選択そのものを、デザインと快適な滞在へ変えているホテルです。

REDUCE|使い捨て用品とペットボトルを減らす

CIRCULATE|食品残渣を農地へ戻す

CIRCULATE|カカオの皮を客室のお茶へ

 

06 / SMALL DAILY CHOICES

草津温泉 ホテルクアビオ

大きな設備がなくても、
食べ方から変えられる。

草津温泉のホテルクアビオでは、植物性の食材を中心としたフレンチマクロビ料理を提供しています。

マクロビオティックの考え方にある「一物全体」は、食材の一部だけでなく、皮や根なども含めて全体を生かそうとするものです。

野菜の端材をスープのだしに使い、残ったものをコンポストへ。食材をできるだけ皿の上で使い切り、使い終えたあとも土へ戻します。

連泊時には清掃を簡略化する選択肢もあり、水、洗剤、リネン交換に必要なエネルギーを抑えます。

発電設備の規模ではなく、毎日の調理と清掃を細かく見直す。宿の大きさにかかわらず始められる、生活に近い循環です。

REDUCE|食材をできるだけ使い切る

CIRCULATE|料理からコンポスト、土へ

REDUCE|連泊時の清掃やリネン交換を見直す

 

 

SIX DIFFERENT CYCLES

6つの宿、6つの変え方

ITOMACHI HOTEL 0
建物が使うエネルギーを減らし、年間収支をゼロへ近づける。

八丈ビューホテル
島の太陽と地下水を、宿泊と移動へつなぐ。

軽井沢プリンスホテル イースト
森と水を、電気、燃料、素材として生かす。

ホテルニューオータニ
大量の食と水を扱う都市ホテルの中に循環をつくる。

GOOD NATURE HOTEL KYOTO
捨てない選択を、心地よい滞在として見せる。

ホテルクアビオ
毎日の料理と清掃から、使うものを減らす。

WHAT HAPPENS BEHIND THE STAY

ホテルは、
何を循環させる?

電気をつくるホテル。
水をもう一度使うホテル。
食べたあとのものを畑へ戻すホテル。

方法も規模も、それぞれ違います。

大切なのは「環境にやさしい」という言葉ではなく、
使う前から、使ったあとまでの流れが変わっているか。

旅行者には見えにくいその仕組みも、
宿を選ぶ理由の一つになっていくのだと思います。

REFERENCE

記事作成にあたり、各ホテルの公式サイト、環境・サステナビリティ情報、および楽天トラベルの施設・予約情報を確認しています。

※掲載内容は2026年7月時点の公開情報をもとに構成しています。発電・蓄電設備、水利用、食材、清掃、アメニティ、認証、サービス、客室、宿泊プランなどは変更される場合があります。最新情報は各施設の公式サイト・予約ページでご確認ください。