
見る文化から、
やってみる文化へ。
旅先で、
郷土芸能を見る。
伝統工芸が置かれた、
美しい客室に泊まる。
土地のお茶や日本酒を、
館内で味わう。
それだけでも、
地域文化に触れる旅にはなります。
けれど、星野リゾート「界」がつくろうとしているのは、
文化を眺めて終わる温泉旅館ではありません。
音を聴く。手を動かす。火を囲む。
土地の人から、技や言葉を受け取る。
温泉宿を、
地域文化へ入るための小さな入口にしています。
LOCAL CULTURE, TRANSLATED FOR TRAVELERS
文化を薄めるのではなく、
最初の一歩をつくる。
界では、各地域の伝統工芸、芸能、食などを体験できる「ご当地楽」が用意されています。
客室には土地の素材や技法を取り入れた「ご当地部屋」があり、さらに職人、作家、生産者など、文化を受け継ぐ人と出会う「手業のひととき」も展開されています。
ただし、地域文化を、そのまま旅館へ持ち込めばよいわけではありません。
長い歴史や複雑な背景を持つ文化を、限られた滞在時間の中で、初めて訪れる人にも伝わる形へ変える必要があります。
何を残し、何を短くし、
どこから旅行者に参加してもらうのか。
「界」を読み解く面白さは、紹介される文化だけでなく、
文化を旅人へ渡すための編集方法にもあります。
画像はテーマをもとに作成したイメージビジュアルです。実際の建物、客室、温泉、演目、衣装、工芸品、食事、人物、施設とは異なる場合があります。
EDITOR’S NOTE
ホテル向けに短くした文化は、
「本物」ではないのか。
郷土芸能を十数分の演目にする。伝統工芸を、初心者でもできる小さな体験へ変える。
そう聞くと、本来の文化を分かりやすく薄めた「観光ショー」のように感じるかもしれません。
けれど、文化の入口がなければ、多くの旅行者は、存在を知らないまま町を通り過ぎます。
大切なのは、館内の体験だけで文化を理解したことにするのではなく、そこから先へ興味が続くかどうか。
宿で聴いた音が、町の景色と結びつく。
使った器から、職人の仕事を知りたくなる。
神話を見たあと、土地の歴史を読みたくなる。
体験が結論ではなく、次の問いを生む入口なら、
ホテルによる編集にも役割があります。
HOW CULTURE REACHES A TRAVELER
文化が「体験」になるまでの、4つの段階
| 01 |
見る
音、踊り、器、模様、火、建築。まずは説明を読む前に、身体が反応する場面をつくります。 |
| 02 |
知る
なぜその土地で生まれたのか。誰が受け継いできたのか。短い解説によって、目の前のものへ背景を加えます。 |
| 03 |
試す
楽器に触れる。茶を淹れる。模様を刺す。歌う。火を囲む。見る側から、少しだけ文化の内側へ入ります。 |
| 04 |
町へ出る
宿で得た小さな知識を持って、工房、温泉街、茶畑、博物館、神社、山里へ。体験の続きを地域で見つけます。 |
THREE QUESTIONS
「ご当地楽」を読み解く、3つの問い
ORIGIN どこから来た? 土地の歴史や
暮らしと
どう結びつくか |
PARTICIPATION 何をする? 見るだけでなく
身体や手を
どこまで使うか |
AFTERWARD そのあと何が残る? 体験のあとに
町や文化の
見え方が変わるか |
SIX CULTURAL ENTRANCES
文化への入口が異なる、6つの界
01 界 津軽
02 界 加賀
03 界 遠州
04 界 ポロト
05 界 玉造
06 界 アルプス
青森・大鰐温泉 津軽三味線 こぎん刺し
音を鑑賞する前に、
身体へ響かせる。
界 津軽で毎晩行われるのは、津軽三味線の生演奏です。
演奏の背景には、日本画家・加山又造による大壁画「春秋波濤」。華やかな舞台ではありますが、最初に届くのは視覚よりも音かもしれません。
津軽三味線の特徴の一つは、弦を繊細に爪弾くだけではなく、撥で皮を強く叩くように奏でること。
低く太い音、高く鋭い音、速い撥さばきが、広間の空気と身体を震わせます。
さらに、限定体験では奏者から歴史や奏法を聞き、実際に三味線へ触れることもできます。
名曲を一曲覚えることが目的ではありません。音を出す難しさを知ることで、夜に聴いた演奏の凄さが、少し違って感じられるようになります。
BEFORE|宿へ来る前
津軽三味線は、観光地の華やかな民謡ショーとしてだけでなく、津軽の風土と人の移動、演奏者の生き方の中で育ってきた音です。
EXPERIENCE|界で何をする?
夜の生演奏を聴く。こぎん刺しの模様に触れる。さらに深く知りたい人は、奏者から直接、歴史や奏法を学び、音を出してみる。
AFTER|体験のあと
弘前や津軽を歩くとき、三味線の看板を見つけるだけで、昨夜の音がよみがえる。土地の風景へ、自分の耳で受け取った記憶が加わります。
02 / PERFORMANCE & CRAFT
界 加賀
石川・山代温泉 加賀獅子舞 九谷焼・山中塗
工芸を飾るのではなく、
演じ、使い、味わう。
界 加賀では、客室、温泉、食事、夜の演目まで、異なる加賀文化が滞在の中に重ねられています。
大浴場には九谷焼のアートパネルや金沢箔。客室には加賀友禅、水引、九谷焼の茶器。
夕食では、料理と九谷焼の器との組み合わせを味わい、夜には加賀獅子舞が披露されます。
加賀獅子は、武家文化を象徴する勇壮な芸能です。界 加賀では、その特徴を生かしながら、宿泊者が見やすい独自の演目へ編集されています。
さらに季節限定の「手業のひととき」では、山中塗の木地師がろくろで無垢の木から酒器を削り出す技を間近で見られます。
完成した器だけを見るのではなく、木の塊が少しずつ薄く、滑らかな形へ変わっていく過程に触れる。翌日の酒器や町の工芸店が、単なる土産物ではなくなります。
BEFORE|宿へ来る前
加賀には、九谷焼、山中漆器、加賀友禅、水引など、素材も工程も異なる工芸が共存しています。
EXPERIENCE|界で何をする?
獅子舞を見る。九谷焼の器で食べる。加賀友禅や水引に囲まれて休む。木地師の手元を見て、器が生まれる速度を知る。
AFTER|体験のあと
山代温泉や金沢で工芸品を見たとき、色や形だけでなく、材料、工程、使う場面まで想像できるようになります。
03 / TEA & ATTENTION
界 遠州
静岡・浜名湖 静岡茶 遠州綿紬
お茶を飲む宿ではなく、
違いに気づく宿。
旅館で出されるお茶は、多くの場合、到着したときの飲み物として自然に消費されます。
界 遠州では、そのお茶を滞在の主役へ押し出しています。
全客室には「茶処カウンター」があり、到着後、就寝前、朝など、過ごす時間に合わせた茶葉、茶器、菓子が用意されています。
茶香炉から漂う香り、湯の温度、蒸らす時間、器を持ったときの感触。
季節の「ご当地楽」では、新茶や地域にちなんだ茶を飲み比べます。
高価な茶葉の名前を覚えることよりも、同じ「緑茶」にも香りや渋み、甘み、飲む時間の違いがあることへ気づく。翌日から、いつもの一杯にも少し意識が向く体験です。
BEFORE|宿へ来る前
静岡茶は、単一の味ではありません。土地、品種、季節、摘み方、淹れ方によって、香りも口当たりも変わります。
EXPERIENCE|界で何をする?
客室で自分で茶を淹れる。時間帯によって茶葉を変える。季節の利き茶で、香りや味の違いを比べる。
AFTER|体験のあと
茶畑や茶店の前を通ったとき、以前よりも茶葉の産地や淹れ方が気になる。静岡の風景と、口の中に残った味がつながります。
THREE WAYS TO RECEIVE CULTURE
文化は、同じ方法では届かない。
音、動き、味。
入口が変われば、記憶の残り方も変わります。
耳から入る|界 津軽
音の迫力を身体で受けたあとに、歴史や奏法を知る。
動きから入る|界 加賀
獅子舞と職人の手元を見て、静かな工芸品の中にある動きを知る。
味から入る|界 遠州
飲み比べ、自分で淹れることで、一杯のお茶の違いへ気づく。
04 / VOICE & NATURE
界 ポロト
北海道・白老 アイヌ文化 ポロト湖・モール温泉
展示を見るのではなく、
声を受け取り、声で返す。
界 ポロトでは、建築、温泉、客室、料理、体験の各所に、アイヌ文化から得た考え方や形が取り入れられています。
湖へせり出す「△湯」は、アイヌ民族の建築の特徴から着想を得た湯小屋。客室にはアイヌ文様をイメージしたアートがあり、全室からポロト湖を望みます。
無料の「ご当地楽」では、植物のイケマとハーブを使った魔除けをつくり、自然と共に暮らしてきた考え方に触れます。
さらに「手業のひととき」では、アイヌ文化の伝承者から伝統歌「ウポポ」を耳で聞き、短い一節から真似して歌います。
楽譜を見て正確に再現するのではなく、声を聞き、覚え、自分の声で返す。
言葉や旋律が、人から人へ渡ってきた方法そのものを体験することで、文化を「昔の資料」ではなく、いまも誰かが受け渡しているものとして感じられます。
BEFORE|宿へ来る前
アイヌ文化は、模様や工芸品だけではなく、言葉、歌、自然観、口承によって人から人へ伝えられてきました。
EXPERIENCE|界で何をする?
植物を使って魔除けをつくる。火を囲む。伝承者の歌を耳で受け取り、参加者同士で声を重ねる。
AFTER|体験のあと
隣接するウポポイや白老の自然を歩くとき、展示物だけでなく、言葉、植物、湖、火、人の声の関係に目が向きます。
島根・玉造温泉 石見神楽 日本酒・勾玉
神話を読むのではなく、
夜の宿で目撃する。
界 玉造の「ご当地楽」では、ヤマタノオロチ伝説を題材にした石見神楽が披露されます。
鮮やかな衣装、大蛇の動き、太鼓や笛のお囃子。文字で読む神話とは違い、善と悪、恐れと勝利が、音と動きによって目の前へ現れます。
客室には、玉造温泉の特産品である勾玉や、温泉街を流れる玉湯川をイメージした設えがあります。
館内では日本酒や茶の湯に触れられ、限定の「手業のひととき」では、酒蔵を訪ねて酒造りや温度による味の違いを学ぶ体験もあります。
神話、温泉、酒、工芸は、別々の観光素材ではありません。
出雲の土地で、人が祈り、湯に入り、酒をつくり、物語を語ってきた時間が、一晩の中で少しずつ重なります。
BEFORE|宿へ来る前
出雲の神話は、古い物語として本に残るだけでなく、神楽や祭りを通して、現在も演じられています。
EXPERIENCE|界で何をする?
石見神楽を見る。玉造温泉へ入る。勾玉の形に触れる。日本酒を味わい、さらに深く知りたい人は酒蔵や鍛冶職人を訪ねる。
AFTER|体験のあと
神社、川、温泉街、酒蔵を歩くとき、昨夜の神楽と物語が風景へ重なる。神話の舞台が、地図上の名所ではなくなります。
06 / FIRE & RURAL LIFE
界 アルプス
長野・大町温泉郷 囲炉裏 おやき・燗酒・民話
昔の暮らしを再現するのではなく、
火のそばに座ってみる。
界 アルプスの中心には、土間と囲炉裏があります。
午後には信州名物のおやき、夜には燗酒などが用意され、宿泊者は火を囲みながら過ごします。
囲炉裏は、昔の農家を演出するための飾りではありません。
暖を取る。料理をする。家族や旅人が集まる。炎を眺めながら話す。
複数の役割を持っていた場所へ実際に座り、温かいものを食べることで、山里の暮らしを身体の距離から想像できます。
さらに、紙芝居を通して大町温泉郷の歴史や民話を知り、そのあと温泉へ入る「温泉文化いろは」も用意されています。
物語を聞く、湯につかる、火を囲む。異なる体験を続けることで、北アルプスが美しい観光地であるだけでなく、人が暮らしてきた土地として見えてきます。
BEFORE|宿へ来る前
信州の山里では、火、保存食、温泉、民話などが、厳しい季節を過ごす暮らしの中で受け継がれてきました。
EXPERIENCE|界で何をする?
囲炉裏のそばに座り、おやきや燗酒を味わう。紙芝居で土地の民話を聞き、アルプスを望む温泉へ入る。
AFTER|体験のあと
大町や白馬を歩くとき、雪景色や山の美しさだけでなく、そこで冬を越してきた人の暮らしに目が向きます。
SIX CULTURES, SIX DOORS
どの文化の入口から入る?
泊まりたい客室ではなく、
どんな感覚を使いたいかで選んでみます。
音を身体で受ける|界 津軽
津軽三味線の迫力から、土地の音と演奏者の技へ入る。
工芸を動きとして見る|界 加賀
獅子舞、器、木地師の技から、加賀文化の層を知る。
味の違いに気づく|界 遠州
茶を自分で淹れ、飲み比べることで、静岡茶を細かく見る。
声を受け継ぐ|界 ポロト
伝承者の歌を耳で覚え、自分の声で返す。
物語を目撃する|界 玉造
石見神楽を通して、神話、温泉、酒の土地へ入る。
火のそばへ座る|界 アルプス
囲炉裏、食、民話から、北アルプスの暮らしを想像する。
CHOOSE YOUR CULTURAL ENTRANCE
どんな方法で、土地を知りたい?
工芸を、飾りではなく使う文化として知りたい
界 加賀
神話、神楽、日本酒が重なる島根を知りたい
界 玉造
囲炉裏を囲み、山里の暮らしを感じたい
界 アルプス
CHECK 予約前に確認したいこと
● ご当地楽の開催時間、開催日、予約の要否
● 手業のひとときの料金、定員、対象年齢、除外日
● 演目や体験内容が季節によって変更される可能性
● ご当地部屋の名称、設え、客室風呂、眺望の違い
● 夕食、朝食、特別会席、日本酒などプランの内容
● 宿から工房、温泉街、博物館など周辺文化施設への移動方法
CULTURE DOES NOT END AT THE HOTEL
見る文化から、
やってみる文化へ。
津軽では、
三味線の音を身体で受ける。
加賀では、
工芸の中にある動きと技を見る。
遠州では、
一杯のお茶の違いに気づく。
白老では、
人の声から歌を受け取る。
玉造では、
神話が演じられる夜を目撃する。
大町では、
火を囲み、山里の暮らしを想像する。
宿の中で体験できることは、
地域文化のほんの一部です。
けれど、最初の音を聴き、
初めて手を動かし、
短い物語を知ることで、
町へ出たあとの視線は変わります。
温泉旅館の中で、
文化をすべて理解する必要はありません。
もっと知りたいと思うこと。
文化を受け継ぐ人の存在に気づくこと。
次は町の中で続きを探してみること。
「界」のご当地楽は、
文化の完成形ではなく、
旅人が最初の一歩を踏み出すための入口なのだと思います。
REFERENCE
記事作成にあたり、星野リゾート「界」、界 津軽、界 加賀、界 遠州、界 ポロト、界 玉造、界 アルプス、および各施設のご当地楽・手業のひととき・ご当地部屋の公式情報を確認しています。
※掲載内容は2026年7月時点の公開情報をもとに構成しています。施設の営業状況、演目、開催時間、体験内容、料金、客室、食事、温泉、設備、サービスなどは変更される場合があります。最新情報は各施設の公式サイト・予約ページでご確認ください。