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いい椅子に出会う宿
旅先で、座る場所を覚えていることがある。
椅子の名前まで、少しだけ持って帰りたくなる宿。
※画像は宿の雰囲気をもとに作成したイメージビジュアルです。実際の外観・景観・客室・家具・施設とは異なる場合があります。
宿の記憶って、景色や食事だけでできているわけではないと思います。
窓辺に置かれた一脚。
ラウンジの隅にあった低い椅子。
暖炉の前で、誰かを待っているように見えた革張りの椅子。
いい椅子がある宿では、旅の時間が少し変わります。
観光に出かける前に、もう少しだけ座っていたくなる。
本を開いたまま、景色を見てしまう。
コーヒーを飲み終えても、立ち上がるのが惜しくなる。
今回は、ただ“座り心地がよさそう”というだけではなく、
フィン・ユール、ジョージ・ナカシマ、ポール・ケアホルム、イサム・ノグチ、飛騨産業など、
椅子や家具の背景まで気になってしまう宿を集めました。
旅先で、椅子の名前まで覚えて帰る。
そんな少し変わった宿選びも、かなり楽しいと思います。
今回の“いい椅子に出会う宿”リスト
01|HOUSE OF FINN JUHL HAKUBA
02|山荘 無量塔
03|里山十帖 THE HOUSE IZUMI
04|天橋立離宮 星音
05|オリーブの宿「澳邸」
06|SHIROIYA HOTEL
07|TRUNK(HOTEL) YOYOGI PARK
08|界 奥飛騨
09|奥武雄温泉 風の森
10|仙石原古今
01|HOUSE OF FINN JUHL HAKUBA
長野・白馬|フィン・ユールの家具に囲まれる、小さなデザインホテル
このテーマで最初に入れたいのは、やっぱり HOUSE OF FINN JUHL HAKUBA。 名前の通り、デンマークの家具デザイナー、フィン・ユールの世界観に浸れる宿です。
客室はもちろん、ラウンジやダイニングなど、宿全体がフィン・ユールの家具を中心に構成されています。 Chieftain、Pelican、Poet、Japanなど、椅子や家具の名前がそのまま部屋の名前になっているのも楽しいところ。 ただ泊まるというより、フィン・ユールの椅子を実際に使いながら過ごす小さな滞在型ミュージアムのようです。
朝、白馬の光が入る部屋で、低い椅子に座る。
窓の外には山があって、部屋の中には北欧の家具がある。
その組み合わせだけで、かなり静かな旅になります。
椅子好き、北欧家具好きなら、ここはかなり本命。
“いい椅子に出会う宿”というより、“いい椅子に会いに行く宿”と言ったほうが近いかもしれません。
02|山荘 無量塔
大分・由布院|古民家ラウンジで、名作椅子と音に沈む
由布院の 山荘 無量塔 は、宿そのものの美意識が強い一軒。 その中でも、椅子のある時間を考えるなら、喫茶ラウンジ Tan’s bar がとても気になります。
築年数を重ねた古民家の空間、大きな梁、低い灯り、そして存在感のあるオーディオ。 そこに北欧やモダン家具の椅子が置かれているというだけで、もうかなり贅沢です。 和の古民家とフィン・ユールのような北欧の曲線、ル・コルビュジエのようなモダンな輪郭が同じ場所にある。 その少し不思議な混ざり方が、無量塔らしい気がします。
椅子に座って、音楽を聴いて、湯布院の時間がゆっくり進むのを待つ。
観光の途中で立ち寄るのもいいけれど、できれば泊まって、夜の静けさまで味わいたい場所です。
家具の固有名については時期や配置によって変わる可能性があるので、この記事では“名作椅子に出会えるかもしれないラウンジ”として見ておきたいところ。 それでも、この空間で一脚の椅子に腰をおろす時間は、かなり記憶に残りそうです。
03|里山十帖 THE HOUSE IZUMI
新潟・南魚沼|古民家に、チーフテンチェアと現代アート
里山十帖 THE HOUSE IZUMI は、今回の中でもかなり濃い一軒です。 古民家に名作家具と現代アートを合わせる、という時点でかなり強いのですが、家具のラインナップも本気。
フィン・ユールの チーフテンチェア、ハンス J. ウェグナーの サークルチェア、ル・コルビュジエの LC3 など、美術品のような家具が置かれた空間。 普通なら少し緊張してしまいそうな名作椅子たちが、古民家の梁や畳、土間のような気配の中で、ちゃんと暮らしの椅子として存在しているのがいい。
ここでは、椅子を見る時間と、椅子に座る時間の両方が楽しそうです。 チーフテンチェアの彫刻みたいな存在感を眺める。 サークルチェアの丸い輪郭に身を預ける。 LC3のゆったりしたボリュームに沈みながら、古民家の天井を見上げる。
“いい椅子に出会う宿”を、インテリア好き向けにしっかり成立させるなら、ここは外せません。 ただの宿紹介ではなく、家具を見る旅としても成立しそうです。
04|天橋立離宮 星音
京都・宮津|海を眺める、ポール・ケアホルムの椅子
天橋立離宮 星音 は、海を眺める宿としても魅力がありますが、今回は家具の視点で見たい一軒です。 特別室には、Fritz Hansenの名作家具や、ポール・ケアホルムの PK22 ラウンジチェア などが置かれていると紹介されています。
PK22は、細くて軽やかなフレームと、ゆったりした座面のバランスが美しい椅子。 強く主張するというより、空間の余白をきれいに見せてくれるタイプの椅子です。 海の近くの宿で、この椅子に座るというのはかなりいい。
バルコニーにはDEDONのチェアもあるようなので、室内の名作椅子と、外のリゾートチェアの両方を楽しめるのもポイント。 昼は部屋の椅子で静かに過ごして、夕方は外の椅子で空を見る。 同じ“座る”でも、時間によって気分が変わります。
ここは、家具好きとリゾート好きのちょうど真ん中。 椅子のデザインを楽しみつつ、ちゃんと旅先らしい開放感もある一軒です。
05|オリーブの宿「澳邸」
香川・高松|ジョージ・ナカシマの椅子と、イサム・ノグチの灯り
オリーブの宿「澳邸」 は、かなり好きな変化球。 一日一組限定の宿で、リビングにはジョージ・ナカシマの コノイドチェア、そしてイサム・ノグチの AKARI が配されています。
椅子と灯りが一緒に記憶に残る宿、というのがいい。 コノイドチェアの木の存在感と、AKARIのやわらかい光。 どちらも強い作品なのに、空間の中では派手すぎず、静かにそこにある感じがします。
ここでは、椅子に座るというより、椅子のある家で一晩過ごす感覚に近そうです。 縁側、庭、オリーブの木、光の落ち方。 一脚の椅子が、宿全体の空気を決めているような気がします。
家具や工芸が好きな人にはかなり刺さりそう。 “いい椅子に出会う”だけでなく、“椅子と灯りがつくる暮らしに少し入る”宿として紹介したい一軒です。
06|SHIROIYA HOTEL
群馬・前橋|ジャスパー・モリソンの部屋に泊まる
SHIROIYA HOTEL は、アートホテルとしても知られていますが、今回は“椅子のある部屋”として見たい宿。 特に気になるのは、イギリスのデザイナー、ジャスパー・モリソンが手がけた客室です。
ジャスパー・モリソンのデザインは、目立ちすぎないのに、使うほどに気持ちよさがわかるような印象があります。 華やかな名作椅子を見に行くというより、よく考えられた椅子や家具の中で、すっと過ごす感じ。
さらに、minä perhonenの部屋では、オリジナルファブリックで張られたヴィンテージチェアなども紹介されています。 椅子そのものの形だけでなく、布、色、手触りまで含めて楽しめるのがSHIROIYAらしいところ。
この宿は、家具単体を見せるというより、椅子・アート・建築・街の気配が混ざる感じが魅力。 前橋という場所に、こういうデザインホテルがあること自体も少しうれしいです。
07|TRUNK(HOTEL) YOYOGI PARK
東京・富ヶ谷|都会の部屋に、北欧と日本の静けさを置く
東京の宿からは、TRUNK(HOTEL) YOYOGI PARK を入れたいです。 代々木公園の近く、都市の中にありながら、少し肩の力が抜けるようなホテル。
このホテルは、芦沢啓治建築設計事務所とNorm Architectsの関わる空間で、家具にはカリモク家具やAriakeなどの名前も見られます。 北欧的な静けさと、日本の木工のやわらかさが重なるような雰囲気。
ここで出会う椅子は、名作家具を一点だけ見に行くというより、部屋全体の居心地をつくる椅子。 小ぶりなラウンジチェア、バルコニーの椅子、窓際に置かれた一脚。 大きな家具ではなく、都市の部屋にちょうどよく収まる椅子が似合いそうです。
旅というより、少し良い週末の延長。 ホテルの椅子に座って、外の緑を見て、東京にいるのに少し遠くへ来たような気分になる。 そういう使い方ができそうな一軒です。
08|界 奥飛騨
岐阜・奥飛騨|飛騨の木工に座る温泉旅館
温泉旅館枠として入れたいのが、界 奥飛騨。 ここでは、飛騨産業の家具が導入されていて、SUWARIラウンジチェアやロッキングチェアなどの名前が確認できます。
飛騨の家具は、派手さよりも、手触りや身体へのなじみ方が気になります。 温泉に入ったあと、畳や木の空間に置かれた低めの椅子に座る。 そのとき、椅子が主役になりすぎず、湯上がりの身体を静かに受け止めてくれる感じがいい。
北欧家具やイタリア家具とは違って、ここで出会うのは、日本の木工の椅子。 曲木、木目、背中に触れる角度。 そういう細かなことを感じながら、温泉旅館で過ごすのもかなり良さそうです。
“デザイナー家具の宿”というと洋の空間を思い浮かべがちだけど、木の椅子が似合う旅館もちゃんと入れたい。 この一軒があることで、記事全体に日本の椅子の静けさが入ります。
09|奥武雄温泉 風の森
佐賀・奥武雄|お気に入りの一脚を探したくなるロビー
奥武雄温泉 風の森 は、椅子の固有名で語るというより、“椅子を選ぶ楽しさ”がある宿として入れたい一軒です。 公式にも、北欧と和をテーマにしたインテリア、館内のデザイナーズチェア、オーナー厳選のチェアについて紹介されています。
ロビーに入って、どの椅子に座ろうか少し迷う。 暖炉のそば、雑誌の近く、コーヒーを飲む場所。 旅館のチェックインなのに、家具店でお気に入りの一脚を探すような楽しさがあるのがいい。
ここは全室露天風呂付きの離れの宿なので、部屋にこもる時間も魅力ですが、あえてロビーの椅子を覚えて帰るのもよさそうです。 宿に着いてすぐの、まだ少し外の気分が残っている時間。 その時間を、椅子がやわらかく受け止めてくれる。
北欧と和、デザイナーズチェアと温泉旅館。 その少し意外な組み合わせが、今回のテーマにぴったりです。
10|仙石原古今
神奈川・箱根|EDRAやCappelliniに囲まれる、全5室の小さな宿
最後は、箱根の 仙石原古今。 全5室のスモールラグジュアリーホテルで、客室ごとに異なるインテリアが配されているのが魅力です。
ロビーにはEDRA社のPack Sofa、客室にはCappellini社製のソファや椅子が置かれる部屋もあると紹介されています。 ここでの椅子やソファは、静かに馴染むというより、空間の印象をぐっと決めるタイプ。 箱根の自然と、イタリア家具の少し強い造形が同じ部屋にある感じが面白いです。
大きな窓、温泉、プライベートサウナ、広い客室。 その中で、椅子やソファが“どこで休むか”を決めてくれる。 ベッドに倒れ込む前に、まず椅子に座って景色を見る。 そういう順番で過ごしたくなります。
今回のリストの中では、もっともラグジュアリー寄りの締め。 椅子をきっかけに、部屋の設え全体まで見たくなる宿です。
まとめ
旅先で出会う椅子は、少し不思議です。
観光名所のように写真を撮るわけではないのに、
あとから思い出すと、なぜかその椅子のことを覚えている。
窓のそばにあった椅子。
暖炉の前の椅子。
本を読むための椅子。
湯上がりに座った木の椅子。
いい椅子がある宿では、旅の速度が少し落ちます。 どこかへ行かなくても、そこに座っているだけで、ちゃんと時間が進んでいく。
そして、フィン・ユールやジョージ・ナカシマ、ポール・ケアホルム、イサム・ノグチ、飛騨産業の椅子や家具に出会えるなら、宿泊は少しだけ“家具を見る旅”にもなります。
次の旅は、景色や食事だけではなく、
「どんな椅子に座って過ごしたいか」で選んでみるのもよさそうです。
※掲載内容は変更になる場合があります。最新の営業状況・料金・プラン内容・家具の配置等は、各宿泊予約ページ・公式サイト等でご確認ください。
※家具・椅子の情報は、公式サイト・宿泊予約ページ・公開記事等をもとに記載しています。時期や客室タイプにより、実際に利用できる家具・配置が異なる場合があります。















