「新成人の皆さん、成人おめでとうございます。」と申し上げると、誰を対象にお祝いしているのか分からなくなりました。
令和5年4月1日に民法が改正され、18歳が成人となりました。この改正により、「成人式は誰を対象に開催するのか?」ということが議論になったのを記憶しています。当時の報道を思い返すと、ほとんどの自治体で20歳を対象に「二十歳の集い」等の名称で開催することになったようでした。
成人の日の定義を確認してみましょう。内閣府のホームページを確認すると、以下のとおり記載されています。
成人の日
1月の第2月曜日
おとなになったことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます。
成人の日は、昭和23年の「国民の祝日に関する法律」の制定当初に定められた計9日の「国民の祝日」の一つであり、「おとなになったことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます」日とされています。
「国民の祝日」を選定するに当たって、成人の日やこどもの日が取り上げられたのは、戦後間もない厳しい状況の下で、当時の立法関係者が、国の将来を担う子供や若者に大きな期待をかけていたことの現れといえます。当時の報告書1では、「国の建て直しをするには、人物を養うことが根本の要件である」との考えが示されるとともに、古くから「元服」や「裳着」などの習わしがあったことに触れ、成人の日は、「それらの精神を生かして、青年男女が国家、社会のため、進んでは世界人類のためにつくそうとする自覚を持たせるところにねらいがある」と説明されています。
各「国民の祝日」について - 内閣府 (cao.go.jp) より
この趣旨に鑑みるに、成人となった18歳を迎える新成人を対象とするのが正しいようにも思えます。
ではなぜ、多くの自治体が20歳を対象としているのでしょうか。筆者が調べた範囲では、以下のような理由が述べられていました。
・18歳の1月は多くの新成人が受験を控えている時期であり、式典に出席する時間的余裕がない。
・新生活を迎えるにあたり、保護者の出費が増える時期であり、式典に出席するための金銭的余裕がない家庭もあることが想定される。
・18歳を対象に成人式を開催した場合、19歳と20歳を祝う式典を別途開催する必要があり、同時に開催できるだけの収容人員を持たない自治体では、複数日の開催が必要となり、スケジュール調整が難しい。
多くの自治体がこのような理由で20歳を対象としていたように記憶しています。もちろん、18歳は就職や進学を控えており、こういった配慮は必要かと思います。しかし、20歳を迎える方々が飲食をすることで期待される地域への経済効果を失いたくないとの思いもあるのではないでしょうか。
筆者はそれが悪いとは思っていません。むしろ、地域を経済的に潤わせることは自治体の重要な責務でもあると思います。
一方で、やはり18歳が新成人である以上、18歳を対象とした何らかの式典は必要であると考えます。筆者の個人的な考えですが、小学校を卒業すれば「大人扱い」してもよいと考えています。
法律上の扱いとは考え方が異なりますが、成人とはある日を境に突然なるものではなく、日々の生活の中で徐々に大人扱いされるようになり自覚が育まれてゆくものだと考えます。そして18歳を迎え、名実ともに成人になるのだと考えます。
こう考えると、20歳を祝う式典とは別に、18歳の新成人を祝う何かしらの催しがあってもいいのではないでしょうか。これを自治体が開催すべきだとは申しません。ただでさえ激務の自治体職員にさらなる負担を課すのは疑問があります。
民間事業者か、地域住民か、自然発生的に18歳の新成人を祝う風潮が醸成されないかと筆者は考えます。筆者自身も地域との結びつきを強め、地域の方と共に18歳を祝えるように働きかけてゆきたいと思います。