↑ 飲食済み ホッピー黒 ↓

 

 

沖縄の伝統的な食文化には、地理的に近い薩摩料理と福建系の中華料理(台湾料理を含む)の影響が強いが、歴史的経緯により、食材の流通ルートや交易範囲が変化したことも大きく影響している。

黒砂糖の代価として運ばれた昆布や鰹節は北海道、薩摩などが産地であるが、沖縄料理に欠かせないものとなった。



 

また、気候・流通的な理由により、保存性に優れた乾麺や麩、海藻といった乾物、塩漬けの豚肉などを用いた独自の料理が発達した。


 

↑ トントロ焼売 ↓

 

さらに、石灰岩質で稲作にはあまり適さない土地柄のため、戦前は上流階級以外は甘藷を主食とし、第二次世界大戦後しばらくは米軍の配給食に依存した食生活であったことも本土とは異なる点である。

 



日本に組み入れられた明治以降は、本土の一般的な食文化にも影響を受け、沖縄そばなど明治以降に誕生した料理も現在では広く沖縄料理として認識されている。


 

1895年に台湾が日本統治下に入ると出稼ぎ労働者として沖縄県民が台湾に渡り、台湾人も沖縄に渡航して料理店を開いたり、パイナップルを栽培するなどの交流が深まり、沖縄の食文化も台湾料理の影響を受けた。


 

↑ グルクンの天婦羅 ↓

 

また移民が奨励され、多くの県民がブラジルやハワイ、フィリピンなどへと渡航したことで、これら地域の料理が紹介され定着している例もみられる。


 

第二次世界大戦後は米軍の軍政下に置かれ、アメリカから配給や輸入された保存食のポーク・ランチョンミート(スパムなど)や各種の缶詰料理も定番化した(アメリカ併合後のハワイやフィリピン、朝鮮戦争後の韓国と類似する)。


 

アメリカのハンバーガーチェーンの進出は本土より早いなど、食文化の欧米化も本土より早く進み、県民はアメリカナイズされた食生活になじんでいった。

また、アメリカ本国から小麦が、日本本土から米が大量に輸入されるようになったため、戦前のイモ類(サツマイモ、タイモなど)を主食にする食習慣に代わって米や小麦の粉食を主食とする食生活に変わっていき、タコライスなどの沖縄独特の米料理もよく食べられるようになっていった。

 

↑ モズクの天婦羅 ↓

 

本土復帰後は本土の食品産業・外食産業の進出によって、他府県の食文化との差が少なくなる傾向にあるが、現在も県民の食生活には本土の和食とは異なる沖縄料理の伝統が健在で、米軍統治下のアメリカ文化の影響も色濃く残っている。


 

なお、本土では一般的に「東の豚肉、西の牛肉、九州の鶏肉」と1人あたり消費量をもとに肉食の嗜好が言われるが、沖縄県では豚肉の消費量が多く、全国2位で、ベーコンや「その他の豚加工肉」(ランチョンミートなど)の消費量では全国1位である。


 

また、内臓、耳(みみがー)、顔(ちらがー)などの部位も食用にし、骨もスープを取るのに利用される。

なお、アメリカの軍政下に置かれていたにもかかわらず、パン・牛乳・チーズ・アイスクリームなどの消費量は少ない。



 

また、鰹節の消費量は日本一であり、2002年の総務省による統計では、1世帯当たりの消費量が全国平均で390グラムであるところ、沖縄では2778グラムにも達する。


 

また2010年(平成22年度)~2012年(平成24年度)の政令指定都市における2人世帯の購入金額平均を金額ベースで見ても、全国平均で932円のところ那覇市は3332円と3倍以上、次点の静岡市の1571円と比較しても2倍以上である。

鰹節自体も日本本土で一般的に使用されているものとは異なり、黴付けを行わない荒節である。



 

鰹節自体のサイズも関東向けのもので200グラム程度であるのに対して、沖縄向けは500グラムと大型のものが用いられる。

水分含有量自体も、通常17%~ 20%であるところに対し、沖縄向けのものは20%~ 22%と、若干高く、手触りも柔らかい。


 

↑ 長芋サラダ ↓

 

 

ものによっては25%~28%にも達すると言うが、それは相当に魚臭いものである。なお、沖縄でも宮古島などで鰹節は作られているが、需要量の問題からか、市場に出回るものは沖縄向けに加工された鹿児島産のものが多い。


 

↑ 紅芋コロッケ ゴーヤチャンプルー ↓

 

 

主な料理/豚肉料理
らふてー/中身汁
沖縄で最も日常的に消費される畜肉は豚肉である。

沖縄本島では18世紀ごろから家庭でも飼われるようになったが、戦前までは、肉は滅多に口にできない貴重な蛋白源であり、豚は気温の低い冬、特に正月に向けて屠殺し、肉は塩漬け(スーチキ)にしたり何度も火を通しながら少しずつ大切に食べた。



 

また沖縄の食文化は中華料理(とりわけ福建料理・台湾料理)の影響を受け発展したため、中国と同様「ひづめと鳴き声以外は全部食べる」と言われるほど、1頭の豚を文字通り頭から足先まで料理に使用する。

調理方法は中華料理に似るが、料理酒として泡盛を用い、八角や五香粉などの香辛料は用いられない。

有名なのは、ばら肉の角煮であるラフテーやあばら骨の部分を煮込んだソーキであるが、耳たぶの部分を食べるミミガー(耳皮)や、同様に頭部の皮を利用したチラガー(顔皮)なども有名である。


 

↑ 島辣韭の葉の天婦羅 ↓

 

 

基本的に、豚肉を料理する際にはよく煮込んで、また料理によってはゆでこぼし、灰汁と一緒に浮き出た脂肪を取り除いてから用いる。

このため、余分な脂肪が抜け出て健康的な料理になると言われている。例えば、豚足の部分を、毛を処理してからじっくりと煮込んだ足ティビチ(テビチ)は、脂分が抜け出てコラーゲンが豊富に残留しているため、肌の美容に良いとされている。



 

また、内臓は中身と呼ばれ、イリチー(炒り付け)と呼ばれる炒め煮にされるほか、蒟蒻や昆布とともに澄まし汁に仕立てた中身汁と呼ばれる吸い物などに利用されている。


 

ばら肉のかたまりを塩漬けにしたスーチカー、甘い味噌と脂身を合わせて作るあんだんすー(油味噌)、脂身を炒って乾燥させたあんだかしー(油かす)などの保存性のある加工品にしたり、本来は廃棄物である骨のだし殻を再利用した骨汁や、血液もチーイリチーとして食べるなど、豚肉料理のバリエーションは非常に多彩である。


 

↑ イカ墨焼きそ ↓

 

 

しかしその一方で、他の地方で一般的なロースやヒレなどの精肉部位は冷蔵技術がなくては保存しにくいため、ミヌダルなどの宮廷料理を除いては沖縄料理の素材として使われることはほとんどない。


 

近年は、絶滅寸前だった小型の在来豚であるアグーの飼育が進められ、沖縄の高級ブランド豚肉となっており、外食店を中心に広まっている。


 

山羊、その他の肉料理
ヤギの刺身
肉料理にあっては、ヒージャー(ヤギ)も特筆すべき家畜である。


 

ヤギ肉料理の専門店が存在するほか、かつては祝い事の際などに振る舞われることが多く、現在でも農家では「自家用」にヤギを飼っている例も珍しくない。

乳は飲まず、主な料理法は刺身と山羊汁であるが、いずれも独特のくさみが非常に強く、好き嫌いが分かれる食材であり、ショウガやフーチバー(ニシヨモギ)で臭みを消して食べる。


 

↑ 海鮮丼 ↓

 

山羊料理は滋養強壮に良いともされており、ヒージャーグスイ(グスイは薬の意)という言葉も存在する。沖縄本島では塩味の山羊汁が主流であるが、奄美大島、宮古島などでは、味噌を入れることもある。


 

牛肉は、戦前には廃用とされた農耕牛の肉が出回る程度で、食用としてはほとんど流通していなかった。


 

また品質も劣悪であったため、豚肉や鶏肉より安く取り引きされていたという。こうした肉を用いた沖縄料理として唯一存在するのが、山羊汁と同じように内臓を含めた可食部位をごった煮にした「牛汁」である。


 

ステーキは米軍統治時代に広く普及し、輸入肉を使用した廉価なステーキ屋は現在も非常に多い。本土復帰後は石垣牛を筆頭とする和牛の生産も盛んであるが、基本的に換金家畜であるため県民の食卓に上ることは稀である。


 

「観音アヒル」と呼ばれるバリケン種のアヒル(あひらー)は家禽として古くから飼育されていた。喘息に効くと信じられており、現在もアヒル料理を出す店がある。

馬肉も食用とされたが一般的なものではなく、山羊、牛、アヒルなどと同様に「馬汁」としてのみ食べられる。近年では本土産の馬刺しを提供する店もあるが、沖縄の食文化ではない。


 

↑ サーターアンダギー ↓

 

南米に由来する外来料理ではあるが、ニンニクを詰めた鶏の丸焼きは人気が高く、沖縄本島各地に多数のローストチキン専門店が存在する。

西表島や石垣島ではイノシシ(リュウキュウイノシシ)猟が行われ、刺身や炒めもの、汁などで食べられる。


 

北部の名護市周辺地域ではヒートゥー(イルカ)が食べられる。漁獲制限のため流通量は少ないが、八重山地方を中心にウミガメ料理を出す店もある。禁漁となる以前はジュゴンも食用とされていた。


 

近年ではほとんどみられなくなったが、かつてはヤギ汁の代用として犬がしばしば用いられ、猫もマヤーのウシルなどにして食べた。農村部や離島の一部ではこのような風習が残されている例もある。