日本における母の日は
1937年(昭和12年)5月8日、第1回「森永母の日大会」(森永母を讃へる会主催、母の日中央委員会協賛)が豊島園で開催された。


1949年(昭和24年)ごろからアメリカに倣って5月の第2日曜日に行われるようになった。
母の日にはカーネーションなどを贈るのが一般的。


 

↑ カーネーション栽培温室内にて ↓

 


カーネーション
ナデシコ科ナデシコ属の多年草。別名にオランダナデシコ、ジャコウナデシコ、オランダセキチクなど。


原産地と名前の由来
原産は南ヨーロッパおよび西アジアの地中海沿岸といわれている。カーネーションという名前の由来には諸説あり、肉(ラテン語)の色の花という説。


シェイクスピアの時代に冠飾りに使われこれが転訛したもの、あるいは戴冠式を意味する語のコロネーションが訛ってカーネーションとなったとの説もある(ギリシャ語で王冠の意味)
 


歴史
地中海沿岸から西アジアの原産のため古くから、可憐な花容を愛された。イスラム世界ではバラやチューリップと並んで、愛好された植物である。



イスラム教では偶像崇拝が禁止されているためモスクなどの装飾には人物及び動物表現が忌避され、アラベスクという幾何学模様や草花の文様が使用された。このアラベスクの意匠にカーネーションの花はしばしば使用されている。
 


17世紀にはイギリスやオランダで300種以上の品種がみられ、フローリスト(園芸愛好家)達によって栽培され、オーリキュラやチューリップ等と並びフローリスツ・フラワーの一つとして大きく進展を見た。


8世紀を通じて品種が増え、やがて「ショウ・カーネーション」が生まれ、これが19世紀の主流となった。


この花の特徴は花弁の縁の鋸歯がなくなり、花弁の配置を幾何学的な整形に近づけたもので、現代のカーネーションとは異なっている。



この時代にはまだバラの改良もそれほど進んでおらず、カーネーション、オーリキュラ、チューリップは時代の先端を行く園芸植物であった。
 


19世紀中頃になるとフランスでの育種が進み、1840年にダルメイスが「パーペテュアル系」を作出、更に1857年にはやはりフランスで「マルメゾン系」が誕生した。これらが現代の営利用カーネーションに繋がっている。
 


日本での栽培
日本には江戸時代初期以前に輸入され、アンジャベルまたはアンジャと呼ばれた。


享保年間に出版された、『地錦抄録』(1733年)には、徳川家光の時代正保年間にオランダからカーネーションが伝来したと書かれている。


しかし、このときには日本に定着せず、寛文年間に再伝来し、14種品種が紹介された。この時期に書かれた『花壇綱目』にも「あんしやべる」の名で記録されている。


宝暦年間の1755年に著された『絵本野山草』にはカーネーションはナデシコなどとともに紹介されている。
 


その後1909年(明治42年)に米国シアトルに在住していた澤田(名不明)が帰国の際に「ホワイト・エンチャントレス」、「ピンク・エンチャントレス」、「ヴィクトリー」、「ローズ・ピンク・エンチャントレス」等、他にも2,3の品種を持ち帰ったが栽培法に精通しなかった為、生産化には至らなかった。


後に土倉龍治郎が近代的栽培技術や体制を構築し、新しい品種を生み出し日本にカーネーションを定着させた。


この業績により「カーネーションの父」と称されるようになった。土倉は犬塚卓一と共に1936年(昭和11年)、名著「カーネーションの研究:修教社書院」を上梓している。
 


現在、カーネーションはキク、バラと並ぶ生産高を誇る花卉植物であり、ハウス栽培で周年供給している。


しかし、最も需要が伸びるのは母の日の5月前後である。また切り花のイメージが強いが最近では鉢植えの品種も普及している。
 


カーネーションの市町村別生産額日本一は、愛知県西尾市一色町地区である。
 


主な品種
切り花
マルメーゾン種(malmaison)
ボーダー種(boarder) グルナダン種(grenadin)
ファンテジー種(fantaisie)
マーガレット種(marguerite)
シャボー種(chabaud)
 

 


パーペチュアル種
ムーンダスト
カーネーションに青い色はなかったが、サントリーと、オーストラリアのフロリジーン社が遺伝子組換えで青いカーネーションを作出した。

ムーンダスト (Moondust) は、日本のサントリーフラワーズと、オーストラリアの植物工学企業であるCalgene Pacific(現:Florigene)との共同研究開発により、遺伝子組み換え技術を経て誕生した、世界で初めての青紫色のカーネーションである。

花言葉は「永遠の幸福」である。
本来、カーネーションには青色色素が存在せず、青系カーネーションは存在しなかったが、ペチュニアやビオラからデルフィニジン系の色素合成遺伝子を取得し、カーネーションのゲノムへ組み込む事により誕生。

1997年から「ムーンダスト」として発売されているが、当初は都会の一部の有名生花店や、各種のイベント、結婚式や特別な場所で使われる程度で、一般的に目にすることは少なかった。

その後、徐々に種類が追加され、2005年2月に全国に初めて発売され、現在では比較的入手しやすくなっているが、一般的な生花店ではあまり扱われていない。2004年には、青いバラと共にグッドデザイン賞金賞を受賞している。

地方生産地は、コロンビアやエクアドルにて、温室で栽培されている。航空便にて世界各国にも出荷され、切花市場へと流通する。花持ちが良く、種類によっては最長で1ヵ月程度咲き続ける。

 


ガーデンカーネーション
セキチクとの交配種で、セキチクの強健さをカーネーションに取り入れたもので、庭植えが可能である。


 


半耐寒性の秋まき一年草として扱われ、9月にタネをまくと、翌年の5月から6月にかけて開花する。ジャイアント・シャポー、アンファン・ド・ニースなどの品種があり、佛花や切り花用に作られているが、日本の風土ではやや栽培しにくく、あまり普及していない。