新年度に入っても中々仕事にきりがつかず、このままではゴールデンウィークに突入してしまうかもしれないと思いきって旅立った。すでに夕刻で日も沈みかかっていたが、佐賀関港へ時刻表も確認せずに向かった。国道九四フェリーは1時間に1便あるのでよっぽどの事がない限り乗れないということはない。しかしそれ以上に、今回の熊野古道はどうしても連休前に行っておきたかったのだ。

 その日は三崎港から東みよし町まで国道を走り、仮眠がてら車中泊。翌朝、徳島港から再びフェリーで和歌山へ上陸して、田辺市まで紀伊半島をひたすら南下した。

 

今回が3度目の乗船となる南海フェリー。デッキにはソーラーパネルが搭載されていた

 

 JR紀伊田辺駅に着いたのは19日の夕方だったので、ほぼ1日かかった計算になる。熊野古道の玄関は思った以上に遠かったが、それでも初めて見る風景や空気は心地良く、来て良かったと心の底から安堵した。

 

紀伊田辺駅1階の観光案内所で資料を集める。多言語対応も充実

 

顔出しパネルは一応写真に(使うことあるかな?)

 

 駅前のビジネスホテルでファミ弁をかきこみながら、これからの旅程を考える。時間はあるがGWが始まる前には大分へ戻りたい。距離をはかりながら幾つかのルートを引いてみる。

 本来ならココを起点にして中辺路をじっくりと歩きたいところだが、それだと熊野本宮大社まで80㎞も歩かねばならず、何日かかるか分からないのでギュッと短縮することに決めた。

 今回の目的は「歩くこと」でなく「スタンプラリー」なのだった。

 実は数年前から、熊野古道のスタンプ手帳やルートマップを持っていたのに、これまでちゃんと目を通したことがなかった。

 そこで資料をちゃんと読んでみると、「巡礼達成条件」には4種類あり、➀徒歩で滝尻王子から熊野本宮大社(38㎞)まで巡礼する、➁徒歩で那智大社から熊野本宮大社間(30㎞)を巡礼する、➂徒歩で発心門王子から熊野本宮大社(7㎞)まで巡礼するとともに、熊野速玉大社と熊野那智大社に参詣する、➃徒歩で高野山から熊野本宮大社(65㎞)まで巡礼する、と書いてある。最も手っ取り早くまわれるのは➂なので、とりあえず遠い熊野速玉大社(新宮市)へ車で先に行ってから1日(7㎞)だけ歩くことに。流石にこの日は襲ってきた睡魔に勝てず、早く眠りについた。

 

 翌日は素晴らしい天候に恵まれた。気を良くしてGoogleMapに熊野速玉大社を入力すると、2時間30分かかることが分かり、朝から頭がクラクラした。紀伊半島だけ見ると距離感がおかしくなってしまうが、確かに日本地図で見比べれば大分から延岡位の距離であって、100㎞を超えているのだった。薬王寺から室戸岬でも70㎞ちょっとだぞ。30回以上も参詣している後白河上皇って、頭おかしかったのではないか。

 

早朝6時30分にホテルを出て熊野速玉大社へ

 

立派な鳥居と扁額、ここで一礼。

 

境内に八咫烏神社

 

自分の足で歩いてきた訳ではないが…何が彼をそこまでかきたてていたのだろう

 

 ふと、見覚えのある絵に足が止まった…参詣曼荼羅である。

 

 しかし、良く見ると事前に調べていた「那智参詣曼荼羅」とは図柄が違っている。近づいて案内板を読んでみると、「熊野速玉大社参詣曼荼羅」と銘打ってあって、熊野古道が世界遺産に認定された記念に新宮市が製作したようだ。絵もピッカピカで少々違和感あるものの、タッチや色彩は中世の作品に近い。また、有名な神事である「お灯祭」や「御船祭」がこれみよがしに描かれているのも、いかにも観光振興事業っぽくて親近感が湧いた。

 

絵解きガイドは大人500円・子ども無料で約30分間の解説が受けられるそう

 

全国3千社以上ある熊野神社の総本宮らしい。本殿は集合住宅のようだった

 

門前の店で頂いた柿の葉寿司

 

 熊野速玉大社は熊野三山のひとつで、国宝や重要文化財も数多く擁する立派な神社であった。本来の巡礼路であれば、一番最後にお参りすることになっていたはずだが、最初に訪れたのがここになってしまった。まぁ、伊勢路だとここが最初になるので、その辺りは深く考えないことにする。そんなことよりも意外だったのは、参詣曼荼羅がここにもあって(どうやら他にもあるようだ)、それは観光行政的に新作され、他所と同様に絵解きガイドも行っていて、そういうやり方でも問題なさそうだったことだ。本来なら宗教関係者や学術関係者から異論とか出そうなものだが。「世界遺産」という錦の御旗によるご加護なのだろうか?

 正直大した期待はしていなかったものの、初日から良いことを学べた。名物の「柿の葉寿司」を頂いたら、いよいよ問題の神社に行かねば…午後からも楽しみは尽きない。

 

 

 

 

 でわ!