自分にとっていろんな意味をもつ本日「4月5日」に紹介するこの本もまた、後々違う意味が生まれるのではないかと感じる。ブログタイトルにヱヴァ新劇場版のワードを流用してみたが、今回を「:序」と位置付けたのも自分なりに意味性があってのことだ。

 「聖地巡礼」という言葉を聞いたことがあっても、その歴史は古く(日本でもゆうに千年以上遡る)、昨今ではアニメやエンタメ分野にも広がる中で、まずはそれが一体どういうものなのか正しく認識する必要がある。

 私自身も「聖地巡礼」に関する様々な本を手にしてきたが、過去と現在を知り未来を予測できる一冊があるとすれば、推薦したいのが本作である。

 

 

 『聖地巡礼 世界遺産からアニメの舞台まで

 

 (著:岡本亮輔、発行:中央公論新社)

 

 巡礼に代表される宗教社会に関する専門書や人文書は読みづらいという話しは、前回述べたばかりであるが、世代間ギャップというのも一因になってはいないだろうか。

 本書は「世俗化と私事化」が進展した現代社会における宗教や聖地巡礼を複眼的に考察しており、著者の岡本亮輔先生が1979年生まれということもあって、いわゆるアニメやパワースポットといった若者に支持されている新たな聖地についてもふれられており、これからマーケティング活動を行う上で1丁目1番地となる指南書であることは間違いない。

 

 第2章から第3章にかけては、サンティアゴ・デ・コンポステーラ、モン・サン・ミッシェル、富士山、熊野古道、四国遍路、斎場御嶽、長崎の教会群といった事例をもとに、「世界文化遺産登録」という非宗教的な権威や制度がもたらす影響や変容について分かりやすく、その背景や経緯とともに解説がされている。これには今まで感じてきたユネスコの認定に伴う弊害やリスク、それに伴って起こる意見の相違や向き合い方など、以前と比べると少しだけ理解が進んだように思える。なかなか地元が思う通りに認めてくれないものである。

 さらに読み進めていくと、第4章では「作られる聖地 なぜ偽物が本物を生み出すのか」という一見タブー視されそうな青森県新郷村の「キリストの墓とキリスト祭」について真正面から鋭い分析と考察がなされており、さらには第5章で「東北お遍路プロジェクト」なる東日本大震災の記憶を後世に伝えていくという宗教でなく社会活動の手法として用いられる巡礼についても深く考えさせられた次第である。特に第5章には著者の強い思い入れに感銘を受け、知人達に紹介したくなったし、私も機会をつくって新郷村のキリスト祭に行こうと考えている。

 何はともあれ、これから聖地巡礼を手掛けていこうと考える同士には読んでいただきたいなと感じた一冊なのだった。

 

 

 

 

 でわ!