この道を通るのは、何年ぶりだろうか。
ここを通るたびに、父のことを思い出す。
幼くして、産みの親と生き別れた僕の父は、
その後、親戚の家を転々とした。
一つが旧大東町で、
この坂を上がったところに父が
一時期お世話になった親戚の家があった。
僕が子供の頃は、
この道は舗装されていない砂利道で、
クルマはガタガタと揺れた。
クルマ酔いが激しかった僕には辛い道だった。
大東には
本当のおじいちゃんではないおじいちゃんがいて、
本当のおばあちゃんではないおばあちゃんがいた。
そして、遊びに行くたびに、
本当の孫ではない僕を
両手を広げて迎えてくれた。
父とは山の中に分け入り、遊んだことを思い出す。
この道はいつか来た道。