最近、ブログを続ける根性がないなあ、と思いつつ、でもやっぱり、せっかくこうやって、読んだ本を記録しとこうと始めたんだから・・・と思い直して今パソコンに向かっています。記録しないと、忘れます、実際。


本は、とりあえず日々読んでいます。ギリシャものだったり、ギリシャものでなかったり・・・。


この間、阿刀田高 著、「ホメロスを楽しく読むために」


taberna mii

を読みました。あまり、ギリシャの超古典文学には興味を示してこなかったのですが、その日図書館を訪れた時、とくに借りたいと思うものも無かったのでふらりと借りて読んでみたら、これが面白かった。
難解な古典も、これでなら、「へぇ~!」と、理解してゆけます。

あの「イリアス」が、「オデュッセイア」が、思いっきり世俗的な見地から快訳されており、今まであちらこちらで聞きかじっていた神話や歴史物語のあれやこれやが、ああ、こういう風につながっていたのか!と楽しく再確認できること間違いなし。

実際、現代ギリシャに見られる気質や風土的なものが、この紀元前から脈々と語り継がれて来た物語の中に垣間見えたりするので凄い。

破天荒な神々、神話の時代のヒーローたち、ですが意外にも、今のギリシャ人、いやギリシャ人だけでなく現代人全般も、こんな風じゃなかったっけ?的な感想をそこかしこで抱きました。

阿刀田さんの私見も交えての解読やギリシャ経験なども交えられていて、そこが、現代ギリシャに興味のある私にはとても楽しい部分でもありました。


ずっと以前に図書館で働いていた頃、阿刀田高はじめ、色々な日本大御所作家の名前を日々目にしていたというのに、現代西洋文学や自然科学分野、そして児童書ばかり読んでいた当時は手に取ることもなかった・・・。

名前だけは知っていた作家さんが、こういう仕事をされていたんだ、と気づくきっかけを得られるあたり、私が最近取り組んでいる、「とりあえずギリシャねたであらゆる書物を読んでみよう」計画による副産物が転がり込むのが楽しい読書の日々です。


そしてこの本と平行して、これも図書館で見つけた面白い本!

「古代ギリシアがんちく図鑑」 芝崎みゆき 画・文 バジリコ株式会社


taberna mii
漫画形式で(と言ってもページの2/3、もしくは3/4は文字で埋め尽くされているので非常に読み応えあり)、ありとあらゆる古代ギリシャねたが網羅されています。

そして面白いのが、ありとあらゆる著作を読み、ギリシャを旅して周り、そこで得た知識を自分という一フィルターを通して、気持ちのよいぐらい私見として語ってしまう勢いのよさ。モチロン資料に忠実に述べる部分はしっかりと書かれていますが、その端々に付け加えられる作者の愚痴やらえこひいきやらけなしやら賛美やら・・・。ギリシャを知らない人にもなかなかインスパイアされる内容ですが、知っている人が読むと、またさらに面白い本です。

今まで私が読んできた著作の中でも、比較的新しい出版物だ、という点も特筆に価します。こないだのギリシャ・アテネオリンピックの後2006年の出版ですよ!

もしかしたら、自分でも購入しておこうかな、と今思っています。一漫画家・イラストレーターとして、こんな本を出された作者に尊敬の念を抱きます。


そしてこの2冊を立て続けに読んで思ったのは、ホメロスなどの古典の解説モノを読むときは、ぜひとも何人かの作者、研究者によって書かれたものを”数冊”読むべきだなあ、と。

作家(訳者)のさじ加減で、たとえばアキレウスはかっこいいヒーロー然たるヒーローにもなりうるし、自分中心の現代っ子にもなりうる。

書物というのは、作者の本意に関わらず完成された形として、でん、と今私たちの目の前に存在しているわけで、そこに書いてあることを頭から鵜呑みにしてしまいかねない可能性は常に高いわけです。一冊だけを読んで、視野を広く持て、というのは難しい話。読み比べ、結構大切です。

今回、阿刀田高さん著作のものを読んだ後に、芝崎みゆきさん著のこの本を読んでよかったな、と思ったのでした。


ちゃんと、解説版ではなくダイレクトに訳された岩波や筑摩などの書籍を読み、自分なりに解釈するのが一番よいのでしょうが・・・何千年もかけて語られてきた内容に、真っ向勝負するそのパワーは無し。といった私の同胞の方々には、とてもお勧めな2冊なのでした。