
帰国生は敬語が使えない?!
英検2級以上ホルダーの小学生と「敬語」について考えてみる・その1
こんにちは。
帰国子女受験コンサルタントのタバタです。
前回のブログでは「空気を読む」高文脈文化についてのディスカッションを紹介しました。
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英検2級以上ホルダーの小学生は空気が読めない?「高文脈文化」について考えてみるその2 | 帰国子女の保護者を静かに応援する元塾講師タバタのブログ (ameblo.jp)
今日のタバタクラスは、敬語についてのディスカッションです。
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タバタ「先週の模試の敬語の問題、ミスった人が多かったね。
これ、去年習ったことになっているから模試の解説授業では説明しなかったけど、
不安な人いる?」
英検1級X君「帰国生の入試にも出るんですか?」
「うーん、出ると言えば出る、出ないと言えば出ない。」
X君「どっちだよ!」
一同(笑)
「まあ、そうあわてるな。
こないだの模試みたいに、
「拝見する」は尊敬語ですか、それとも謙譲語ですか、みたいなのは出ないけど、
読解力や思考力を見るうえでは必要な勉強だと思うね。
たとえばさ、日本語の面接試験で質問されて、
「うん、そうだよ」とか答えちゃまずいでしょ。」
一同(笑)
「ちゃんと「はい、そうです」って答えたほうがいいでしょ。どう?
できたほうがいい?できないほうがいい?」
一同「できたほうがいい!」
「ってことはだ、敬語を使ったほうがいい、という価値観を持っているならば、
きちんと習って、覚えるものは覚えたほうがいいよね。
覚えたほうがいい?覚えないほうがいい?どっち?」
一同「覚えたほうがいい!」
「どうだ、X?」
X君「覚えたほうがいいっす」
「敬語で!」
X君「覚えたほうがいいでーす。」
「(笑) ただ、これは、勉強ができるかどうかもそうだけど、
その人の人格の善悪じゃないんだよ。
あくまでも、できたほうがカッコいいっていうかクールだって価値観から
スタートしてほしいね。
じゃあ、まずさ、模試の問題、「拝見する」は尊敬語なの?謙譲語なの?
分かる人。」
英検2級Z君「はい。謙譲語です。」
「Z、その通り。謙譲語って何だっけ。」
Z君「えっと、よく分かりません。」
「あれ?
分かりませんという前に謙譲の1文字ずつ分解やってみた?」
Z君「あ、そうだった。
えーと謙、謙、分からないです。
譲は「ゆずる」だ!」
「オーケイ!少なくとも「ゆずる」の意味は入ってるっぽいよね。
譲るは英語ではYieldとかGive upとかかな。
なんかイメージわいてくるでしょ。
じゃ、謙の漢字の分析できる人いる?」
X君「先生、その字に訓読みはあるんですか?」
「X、いいところに気づいた!
訓読みはない!
訓読みがないときはどうするんだっけ。」
英検準1級Yさん「はい。その漢字を使った熟語でイメージする!」
「そう、その通り。
音読みしかない漢字は、
中国語を熟語のまま輸入したと考えられるんだよね。
じゃあ、謙を使った熟語を思いつこう。」
Yさん「はい。謙虚!」
Z君「はい。謙遜もそうかな?」
「パーフェクト!謙虚、謙遜、そのとおり!
板書しておくよ。
謙譲とだいたい同じ意味と考えていいかな。
で、どういう意味になりそう?」
Z君「えーと、なんか目立たないようにする、とか」
「おー、いい感じ!」
Yさん「予習シリーズには確か「へりくだる」って書いてありましたけど。」
X君「オレも見た記憶がある!
自分が下がるって意味なのか!」
「そうそう、そういうこと。
へりくだる、自分が下がる、
誰かパラフレーズ(言い換え)できない?」
Yさん「自分が下がる、だから、相手を上げる!」
「いいね。他には?」
Z君「遠慮する?」
「それも、うん、つながる、いいね。
自分が下がる、相手を上げる、遠慮する、
それから譲の「ゆずる」もあったね。
じゃ、今度は英語に表すか。
さっきのYield、Give up以外で、どうかな。」
X君「遠慮する、だからRefrain?」
「うーん、それだと、「遠慮」の「ひかえる」とか
「しないでください」の意味が強くなっちゃうかな」
X君「「遠慮する」ってそれ以外にも意味あるんですか。」
「そうだね、日本語の「遠慮します」は英語では説明しづらいね。
Zが言ったところの「遠慮」は、自分が引き下がるときの、
まさに敬語の用法なんだよ。」
X君「なんだかな。」
「謙譲の英単語は、ここではHumbleとかModestなんだね。
どう、イメージわく?」
Yさん「Modestは分かるけど、Humbleは見たことないです。」
Z君「どちらも初めてです。」
X君「うん、どっちも意味は分かります。
なんか、でしゃばらないっていうか。」
「そうそう、そんな感じ。
せっかくだから例文をググっとこうか。
Andy gave a great performance, but he was very humble.
アンディはいい仕事をしたが、とても謙虚だった。
“I am not a hero,” he said in his characteristically modest way.
私はヒーローではない、と彼らしく謙虚な感じで言った。
どう?謙虚の意味が分かったかな。」
一同「はーい。」
「さて、ここでようやく「拝見する」が謙譲語だ、
というところに戻ってきたよ。
拝見する、は「見る」の謙譲語だけれど、何が謙虚なんだろう。
どこがへりくだっているんだろう。
ここで、尊敬語と謙譲語の違いをズバッとまとめるよ。
尊敬語・・・主語が偉い。
会話文であれば「あなた」が主語。
謙譲語・・・動作の相手が偉い。
会話文であれば「私」が主語。
はい、ノートに写した?
これね、予習シリーズとは違う説明だけど、
この板書の言葉で覚えなおして!」
X君「写したけれどもいまいち分かりません。」
一同(笑)
「このイラストを見てみよう。
G君とS君が会話をしている設定。
ここで、身分の差を作ってみよう。
G君を王様にし、S君を家来にしよう。
はい、G君とS君、どっちが偉い?」
全員「Gくーん(ジャイアーン)」
「ですね。
分かりやすくするために、こういう人間関係が存在していると思ってください。
さて、主語が偉いわけですから、G君が主語の場合、
尊敬語と謙譲語のどっちを使う?」
全員「Gくーん(ジャイアーン)」
「そうです!ですので、G君が主語の文章を書くときには、尊敬語を使います。
シンプルにまとめると以下の3つだったね。
1.「れる・られる」を使う
2.「お~になる」を使う
3.特殊な尊敬語を使う
例えば、「食べる」だと、「食べられる」「お食べになる」になる。
特殊な尊敬語だと?誰かわかる人!」
Z君「召し上がる!」
「すばらしい!はい、みんな拍手!」
一同拍手
「じゃあ、「見る」の特殊な尊敬語は?」
Yさん「ご覧になる!」
「そのとおり!はい、みんな拍手!」
一同拍手
「というわけで、この図で言うと、G君が主語だと「召し上がる」、
とか「ご覧になる」を使う。
さらに、会話で言うとね、
S君がG君と会話しているときに、
「あなたは」が主語ならば、
当然尊敬語の「召し上がる」と「ご覧になる」を使うんだね。」
X君「なるほど。よくできてるんですね。」
「さあ、いよいよ謙譲語だ。
謙譲語のルールは、
「動作の相手が偉い。会話文であれば「私」が主語」だったね。
謙譲語では、大体会話文で使われるから、
B君がA君に対して
「私が」というセリフを言っているのをイメージすればいい。
ようやく、模試の問題「拝見する」が出てきたよ。
変な文章だけど、
2人の関係がはっきりするのでこういう文章を作ってみるよ。
S君のセリフで、
「私があなたを拝見する」
ということだ。この「あなた」の部分は「あなたの持ち物」でももちろん使える。
Yさん「あ!飛行機に乗るときに「搭乗券を拝見します」って言ってる!」
「そう、その通り。今のYの例文はとても良い例で、
実は、「私が」とか「あなたの」を使ってないでしょ。
つまり、正しい敬語を使えば、
いろいろ省略できるのが日本語の特徴でもあるんだね。」
X君「でも先生、ANAとかJALのスタッフよりも
乗客のほうが偉いってこと?」
「そうそう。それはとても日本的文化だよね。」
Z君「お客様は神様ですっていいますよね。」
「うん、50年くらい前に、大人気だった三波春夫っていう歌手が
コンサートに来てくれた観客に言った言葉で有名になったらしいよ。」
X君「アメリカでは航空会社のスタッフとかお店の店員の方が偉そうにしてるし!」
一同爆笑
「そうだねぇ。そう感じることはあるよね。
でもその分、すぐに仲良くなれるというか、対等な友達みたいな関係も作れるよね。」
Yさん「そう!スーパーの店員さんが、私の帽子を指さして
あら素敵な帽子かぶってるわねって話しかけたりする!」
「日本のように、上下関係ってわけではないけど、
ちゃんと立場をわきまえている、というのも良いし、
外国のように、対等の関係ですぐに仲良くなれる雰囲気もいいよね。」
X君「オレは敬語とか覚えるの面倒くさいから、
アメリカ式のほうが気楽だな~」
一同(笑)
TO BE CONTINUED…
2024年10月13日
タバタヤスシ



