人は賢しくなる必要はない | 天路歴程

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詩や、お話や、自分の思いを綴っています。楽しんで頂けると、幸いです。

人は賢しくなる必要はない

けれど

人は賢くなろうとする必要はある


賢いというのは

切れ味が鋭いナイフのことではない


静かに見つめる目と

常に疑いを持つ冷静さだ


正義を信じないこと

己がすべてとは思わないこと


賢しさと優しさは両立しない

けれど

賢さと優しさは両立する


喧伝する頭の良さは嘘だ

頭の良さを虐げるために使うのは罪だ


たくさんの屍の上に立つのは

賢しい蛇だ


蛇同士が

飲み込み合いをしている

完全無欠で不老不死な

ウロボロス


…馬鹿馬鹿しい

所詮は

愚かな蛇同士


賢しいとはいえ

人間


所詮は

人間


無限な宇宙の理には

敵うことはない


その限界を知り

それでも

賢くあろうとすることが


人に唯一できることではないだろうか


内気な哲学者は塔の中

謙虚な賢者は庵の中


絡み合った課題と

答えのない問い


一刀両断にすることはできない

(したとしても解決にはならない)


人は賢しくなる必要はない

けれど

人は賢くなろうとする必要はある