どれだけ眠れない夜を過ごしただろう。どれだけ夜中に目を覚ましただろう。どれだけ夜の闇が恐ろしかったか。どれだけ朝の光までを長く感じたか。
この孤独。この恐怖。この絶望。
誰にも伝わらない。言葉がみつからない。拒絶。無関心。
「なぜ話してくれなかったの?」
あなたには理解できないから。あなたたちにはわからない。感情が感性が私と違うの。水と油。(どっちが正しいとかどっちが悪いとか私は言わない。それはあなたのあなたたちの論理。この宇宙にはさまざまな世界観やさまざまな倫理観が渦巻いていて、私が知らないこともたくさんある。それをぶった斬って知った気になる程、私は偉くも賢くもない。あなたはあなたたちは私のことを傲慢だとか恥知らずと断罪するけれど。私は何も裁くことはできない。私はただ自分に導かれるまま歩くだけだ。)
体は眠りたがっているのに頭だけが爛々と冴えている。浅い眠りを浮き沈みした夜。夜半には覚醒してしまった。それからはもう眠ることもかなわなかった。
ため息をつき起き上がる。
2月の震えるような空気。
私はカーテンを開ける。
真っ暗闇だったはずの空が濃紺に変わってゆく。地平がラベンダー色に染まってゆく。夜から朝のグラデーション。
昼は寝不足に苛まされ、夜は不眠に苛まされる日々。
それでも
闇から救われるこの時間だけは、私にとっての希望だ。
まだ自分に喜びが残っていることを感じられる。
夜明けの瞬間だけは、心が解き放たれる。
だからこそ
私はまだ生きていられる。
そして
夜から朝に変わる静かなこのひとときに
この世界で私を抱きしめるのは私だけなのだと強く思う。
それは
悲しみでもあるのだが、自分を保つための矜持でもあるのだ。