舞台上部に掲げられた、にらみ鯛と、「辰(たつ)」の文字の大凧。文楽初春公演には日本の正月らしい風情が横溢、ハッピーエンドやケレン味のある作品が並び、舞台も客席も華やかだ。
龍頭の船上で七福神が芸づくしをする「七福神宝の入舩(いりふね)」は、鶴澤清介を芯とする躍動感あふれる三味線に豊竹英大夫らの語り。人形陣がキャラクターに合った芸を披露し楽しませる。
続いて、「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」から、三つ子のひとり、桜丸の悲劇を描いたドラマを上演。三つ子の父親、白太夫のもとに3人の息子とその嫁が70歳の祝いに訪れる。しかし菅丞相(かんしょうじょう)に仕える梅王丸と、敵対する時平に仕える松王丸は喧嘩になり、桜丸は丞相失脚の責任をとって切腹する。
87歳の人間国宝、竹本住大夫が「桜丸切腹」を、野澤錦糸の情感にじむ三味線で一段丸ごと勤め、気概を示した。息子を思う老父の心情を慈愛を込めて語り、若い命を散らす桜丸の運命を浮き彫りにする。人形では吉田簑助の桜丸に二枚目の色気と哀愁があった。白太夫は吉田和生。
「卅三間堂棟由来(さんじゅうさんげんどうむなぎのゆらい)」は、平太郎に助けられた柳の精(お柳)が人間となって平太郎の妻になり、子までもうけるが…という話。子と別れる母の思いを竹本津駒大夫・鶴澤寛治が切々と描き、「木遣り音頭」にのせてわが子に引かれてゆく柳の木に母の思いがこもる。
今月は、三大通し狂言から、「菅原-」と、「義経千本桜」が上演されているのもうれしく、桐竹勘十郎が、鼓の皮になった親狐を慕う源九郎狐(げんくろうぎつね)を、宙吊り、見台抜け、灯籠抜けなどケレンの演出満載で遣い、客席をわかせている。
桜満開の吉野山を舞台に、静御前と義経の家来に化けた源九郎狐を描く「道行初音旅(みちゆきはつねのたび)」は、鶴澤清治のリードで華やかで切れのある太棹三味線の音色が堪能できる。呂勢(ろせ)大夫、文字久大夫らも奮闘。「河連法眼館(かわつらほうげんやかた)」は、豊竹咲大夫・鶴澤燕三が親子の情、獣性の悲しさを表現。豊松清十郎の静御前に気品。
竹本源大夫・鶴澤藤蔵から、豊竹嶋大夫・豊澤富助につなぐ「壺坂観音霊験記(つぼさかかんのんれいげんき)」は夫婦の愛の奇跡を描いた後味のいい作品で、桐竹紋壽のお里、吉田玉女の沢市に情が感じられた。24日まで。(亀岡典子)
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