ある夏の夜、地方の小さな村に伝わる怪談が、再び現実のものとなった。村の外れにある古びた神社の裏手には、昔から「忘れられた池」と呼ばれる場所がある。この池は、昼夜を問わず常に静寂に包まれ、水面には決して光が反射しない。村の人々は、その場所を避け、池の存在について話すことすら忌避していた。

その年の夏、都会から来た一人の若者が、村の風習に興味を持ち、忘れられた池を訪れることにした。彼は、夕暮れ時に池の周囲を歩き始め、不思議な静けさと漆黒の水面に魅了された。しかし、彼が池の一周を終えようとした瞬間、水面が突如として波打ち始め、深い霧が立ち込めてきた。彼は恐怖を感じながらも、その場から動けずにいた。

霧が晴れると、水面には美しい女性の姿が映し出されていた。彼女は水面から彼を見上げ、悲しげな声で話し始めた。「私はこの池に囚われた霊。長い間、誰かが私をここから解放してくれるのを待っていたの。あなたがその人かもしれない。」若者は霊の哀れな物語に心を動かされ、彼女を救い出す方法を尋ねた。霊は「真夜中に再びこの場所に来て、池に身を投げれば、私の鎖から解き放たれるだろう」と告げた。

若者はその夜、約束通り池に戻り、霊の言葉に従って水へと身を投じた。しかし、彼が水面に触れた瞬間、霊の姿は消え、代わりに無数の手が彼を水深く引きずり込んでいった。村人たちは翌日、池の畔で若者の遺体を発見した。彼の表情は、言葉にできない恐怖で歪んでいた。

以来、忘れられた池にはさらに深い恐怖が纏わりつき、誰も近づくことはなくなった。若者が最後に見た霊の真実は、池の深淵に永遠に秘められたままである。