これは私がたまたま海外出張した時にふと思ったことを書いています。
乗り合いタクシーとは、同じ方面へ向かう不特定多数の乗客が相乗りで利用するタクシーのこと、今回の場合は海外に向かう人々の物語となります。
「乗り合いタクシー」
深夜、空港へ向かう道中での出来事だった。乗り合いタクシーには俺を含め数人の客が乗っていた。それぞれが目的地に思いを馳せている中、タクシー運転手が突如としてブレーキを踏んだ。車は急停止し、乗客全員が前の座席に体を乗り出す形になった。
運転手は深く一息つき、「お客様、大変失礼いたしました。どうぞお入りください」と、まるで誰かを迎え入れるかのように車のドアを開けた。しかし、外には誰も見えない。車内の乗客たちは、互いに顔を見合わせて疑問符を浮かべた。一体、誰が入ってきたのか。その瞬間から、車内には言い知れぬ恐怖が漂い始めた。
運転手は再び車を走らせると、しばらくしてから乗り合い客の名簿をチェックし始めた。「あれ、お客様、お名前何でしたっけ?」と、まるで目に見えない誰かと会話をしているかのように話し始めた。「ああ、そうでしたよね。すいません」と、運転手は一人で頷き、やり取りを続けた。
車内の空気は一層重くなり、乗客たちは互いに話すこともなく、ただその異常な状況を受け入れるしかなかった。空港に近づくにつれて、運転手の様子もおかしくなっていった。彼は時折、空席に話しかけたり、笑ったりするのだ。
最終的にタクシーは空港に到着した。乗客たちは一刻も早くその場を離れたい一心で、荷物を手に車を降りた。しかし、運転手は「またのご利用をお待ちしております」と、にこやかに言った後、何もない空席に向かって深々とお辞儀をした。
その夜、誰もが体験した恐怖は言葉にできないものだった。空港へ向かう道中で出会った目に見えない「乗客」の存在は、今もなお彼らの心に深く刻まれている。それはただの幻だったのか、それとも...。