茅葺屋根のゴンジロウとそうめん流しの一日 | 建築家 田口知子の日常をつづったブログ

茅葺屋根のゴンジロウとそうめん流しの一日

昨日の海の日に、千葉の館山市塩見にある民家、「かやぶきの家ゴンジロウ」にお邪魔してきました。


この民家は千葉大の建築学科岡部明子研究室の学生さんが中心になって行っている地域再生プロジェクトの一環。ゴンジロウというのはこの家の昔からの呼び名。村で共同で茅葺きをしていたころ、それぞれの家には固有名詞がついていたそうです。茅葺きの習慣がなくなり、廃屋になっていたゴンジロウは、岡部先生に発掘され、生き返ったのでした。傷んだ部材を補修しながら、茅を刈ってきて、屋根を葺き直すところから指導を受けて本格的に行っているそうです。新たに生まれた屋根は、独特のダンダン刈りになっていますが、そのほうが茅の量もすくなくできるかた、とのこと。みんなで力をあわせて一つの家の屋根を作るという作業は、本当に壮大な作業であったろうと想像します。岡部研のブログにきれいに写真と一緒にアップされています。

昨日の海の日は、「ゴンジロウそうめん流し」が行われていました。


近所で生えいていた竹を二つに裂いて節を取り高いところから順々にそうめんが流れてくる台をつくっています。水の流れや角度もきれいにデザインされ、竹のそうめん流しの出来上がり。


たれも既製品ではなく、鰹節できちんと出しをとって、薬味も多種用意され、とてもおいしいそうめんをたくさんいただきました。住まいにも食べ物にも、岡部研の気概がひしひしと伝わってきます。岡部先生もアジを30匹おろして、「サンガ焼き」を作ってくださいました。本物の味を堪能し、この環境で食べるとおいしさもひとしおです。



ご近所のおばあちゃんが、花笠踊りを披露してくださいました。

地域活性化やまちづくり、というと、観光地化するとか、地域資源がないと、とか、とてもスペシャルなものでないとダメだと考えていましたが、こんなふうに、ただそこにあるものを再生し、丁寧に交流する場所と時間を作るだけで、地域のつながりを再生することができる。それが実は本当の「まちづくり」かもしれない、というお話しを聞き、本当にそうだなと共感しました。そして、イベントだけでなく、具体的な場所、空間を作ることで、地域の核になるものをつくること、そのためには建築の役割は大切だとおっしゃっていました。


昨日は梅雨明けの真夏日でしたが、茅葺の屋根の下はひんやりとした涼しい風が流れ込み、みずみずしい緑の匂いと海風を感じながら、そこにただいるだけで幸せになれる、本当に贅沢な一日でした。みなさん、ありがとうございました。