夕方になっても吹く風は生ぬるくて、
九月に入ったからと云って暑さは真夏のそれと何も変わらない。
変わったことと云えば日が暮れるのが早くなったということくらいだろうか。
何だか淋しいな…
夏の終わりはいつもこんなふうに切なくなってしまう。
それも年々その思いが強くなっていく。
その理由も何となく理解していた。
あの夏、
まだ僕が僕だけでいられた、
僕だけのために生きていられた遠い昔、
僕は選択を間違えた。
もしも僕が選択を間違えなかったら、と時々思う。
もっと、
よく見て、聴いて、考えて正しく判断していたなら、
僕はもっと普通に生きていられただろう。
そうか?
本当にそうか?
たとえ選択を間違わなかったとしても、
正しく判断していたとしても、
僕自身が変わろうとしなかったならきっと結果は同じだ。
置かれた環境に多少の違いはあるかもしれないけれど、
僕は同じように苦しみの中にいるに違いない。
そんなことも解らないなんて…
いつの間にか速度を増した夕闇が街を呑み込んでいった。
こうして普通にみんなの今日は終わって行くんだろう。
そして、
帳尻合わせで生きている僕も罪悪感を抱いて動きを止める。
こんなことが、いつまでも続くわけがない!