モーツアルト『すみれ』 シュヴァルツコップ | 世界の歌謡曲

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その日の気分で 心に残る歌

シュヴァルツコップ&ギーゼキング

 

 

 

エリーザベト・シュヴァルツコップ & ヴァルター・ギーゼキング

Elisabeth Schwarzkopf; "Das Veilchen"; KV476; Wolfgang Amadeus Mozart

 

 

Ein Veilchen auf der Wiese stand
 gebückt in sich und unbekannt;
 es war ein herzig's Veilchen.
 
牧草地に咲く一本のすみれ
 ひっそりと誰にも知られず
可愛いすみれ
 
Da kam ein'junge Schäferin
 mit leichtem Schritt und munterm Sinn
 daher, daher,
 die Wiese her, und sang.
 
そこへ若い羊飼いの少女が
軽やかな足どりで元気よく
歌いながら近づいてくる
 
Ach denkt das Veilchen, wär'ich nur
 die schönste Blume der Natur,
 ach, nur ein kleines Weilchen,
 bis mich das Liebchen abgepflückt
 und an dem Busen matt gedrückt!
 ach nue, ach nur,
 ein Viertelstündchen lang!
 
ああ すみれは思った
 もしも自分がこの世で一番美しい花だったら
 ああ ほんのわずかな間だけでも
 あの少女に摘み取られ 抱きしめてもらえる
 ああ ほんの15分だけでも
 
Ach, aber ach! das Mädchen kam
 und nicht in Acht das Veilchen nahm,
 ertrat das arme Veilchen.
 Es sank und starb und freut' sich noch;
 und sterb'ich denn, so sterb'ich doch
 durch sie, durch sie,
 zu ihren Füßen doch!
 
ああ それなのに ああ!
やってきた少女は
 すみれに気が付かず
哀れなスミレを踏みつぶしてしまった
すみれは力尽きたが 
 本望だった
 あの人に踏まれて死ねるのだから!
 
Das arme Veilchen!
 Es war ein herzig's Veilchen.
 
哀れすみれ 可愛いすみれ
 
 
『すみれ』(ドイツ語: Das Veilchen)K.476は、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが作曲した歌曲。モーツァルトの歌曲の中で有名なものの1つである。なお表記については、『菫』と漢字で表記されることもあるが、平仮名の表記が一般的に多い。

1785年6月8日にウィーンで作曲された作品。作曲の詳しい経緯については不明だが、モーツァルトはこの作品を単なる有節歌曲として作曲せず、各連ごとに曲想・調性を変え、小型ながら素晴らしい芸術品に仕上げており、物語としての展開を持つ原詩に即応して音楽を変え、それぞれの詩句に適した描写を行っていく通作形式で書かれている。ここでは詩の内容に密着したリリシズムとドラマティックなものが、見事な調和が見られる。このあたり(1785年)から、モーツァルトの歌曲というジャンルに対する考え方に変化が見られると考えられる。
歌詞はヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの詩によっており、モーツァルトが唯一作曲したゲーテ作品となった。内容は、スミレの花が付近を歩く少女の姿を見つけて彼女に摘まれたいと望むが、その少女に踏み付けられる。しかし、スミレは幸せだった、というもの。ゲーテはこの詩をバラードに分類している。なお、モーツァルトはラストの部分に2行付け加えている。
(ウィキペディア)