疾走する悲しみ 母への想い
唯一 短調のソナタ
モーツアルト ピアノソナタ イ短調 K. 310 ダニエル・バレンボイム
Mozart Piano Sonata No 8 A minor K 310 Barenboim
「さびしいと いま」
さびしいと いま
いったろう ひげだらけの
その土塀にぴったり
おしつけたその背の
その すぐうしろで
さびしいと いま
いったろう
たしかに さびしいと
いったやつがいて
たしかに それを
聞いたやつがいるのだ
いった口と
聞いた耳とのあいだで
おもいもかけぬ
蓋がもちあがり
冗談のように あつい湯が
ふきこぼれる
石原吉郎 詩集<サンチョ・パンサの帰郷>