年内で閉店すると聞いていた
地元老舗の焼肉屋。
ダメ元で、一人で行った。
扉を開けると、煙モウモウ。
白髪まじりの美人な奥様が
「どうぞ」と笑顔でカウンターに
迎えて下さった。
座敷は常連さんで満席、
小さい子供達はところ狭しと走り回りにぎやか。
家族団らんのうねりの中、
左右背後のアウェイ感に圧倒される
わたし。
塩タン、バラ、白飯で
生ビールを飲みながら、
ただカウンターに座って、
煙の向こうを見ていた。
20:30過ぎに常連さんが帰りはじめて、
私は生中とバラをおかわりした。
忙しさも落ち着き
普段無口な店主が、
カウンターの中から
満面の笑みで私に笑って言った…。
「端のご家族は4代に渡ってきてくれたんですよ」
「これからは土日、GOLF行けるわ(笑)」
気づいたら、私、静かに泣いていた。
理由を探すでもなく、
声を出すでもなく。
わしはわかった。
ここに来たのは、
焼肉を食べるためやなく、
締め際を見て、泣くためやったんやと。
一人で成立した夜。
カウンターで、
ちゃんと終われた夜。
この煙は
焼肉の煙であり、
55年分の時間の煙…。
ありがとうございました。
店主、奥様。
ごちそうさまでした。
