皆様、こんばんは、お元気でしょうか?

クリニックでは、インフルエンザA型陽性の2人目の方が出て、流行が始まったことを実感しております。

今日は、インフルエンザのお話をご紹介します!


ウイルス」は生物の細胞よりもはるかに小さいカプセルのような粒子の中に、自分の情報を記録した遺伝子である「DNA」あるいは「RNA」を持っています。しかし、自分自身では増殖することができず、生物の細胞に感染して、その機能を巧みに利用して増殖します。

インフルエンザウイルスは、遺伝子として「RNA」を持っていて、これをカプセルに詰めたような形をしています。

そして、ヘマグルチニン(HA)ノイラミニダーゼ(NA)という蛋白が、スパイクのようにたくさんカプセルから突き出していて、これで動物の細胞に感染します。

インフルエンザウイルスの模式図を二つご紹介します。


上の図だと、オレンジ色のスパイクみたいなのがHAで、紫色のスパイクみたいなのがNAです。
上の図だと、青色のスパイクみたいなのがHAで、赤色のスパイクみたいなのがNAです。

インフルエンザウイルスのカプセルのような粒子の中に、自分の遺伝情報である「RNA」がしっかり詰まっているのも、上の模式図でお分かり頂けたと思います。


ところで、インフルエンザウイルスには、本当はA型B型C型があります。
C型は遺伝子変異を極めて起こしにくく、症状も普通の風邪と同じようで、一度感染すると免疫ができてその後ずっとかからないのでほとんど問題になりません。
B型はそれに次いで遺伝子変異を起こしにくく、免疫が有効に働きます。
一番恐いのがA型で、非常に遺伝子変異を起こしやすく、どんどん新しいウイルスが出現するので、大流行を起こしますA型インフルエンザウイルスのHAにはH1~H16の16種類、NAにはN1~N9の9種類もあって、これが組み合わさって多様なウイルスができます。

出典:喜田宏「細胞工学」19巻 27-32頁

色々な動物に感染するA型インフルエンザウイルスは上の図のようにそれぞれ決まっていて、元々人間に病原性を持つA型インフルエンザウイルスは、H1N1H2N2H3N23種類に限られているのですが、頻繁に遺伝子変異を起こすため人間の免疫も対応しきれず、たびたび大流行を起こしてきました。
20世紀では、1918年のH1N1のスペインインフルエンザ、1957年のH2N2のアジアインフルエンザ、1968年のH3N2の香港インフルエンザ、1977年のH1N1のソ連インフルエンザが世界的に大流行して(「パンデミック」といいます)、甚大な被害をもたらしました。

出典:岩附(堀本)研子ら「からだの科学 」 259巻 101頁 


今年のインフルエンザワクチンには、A型インフルエンザウイルスとして、2015年のH1N1のシンガポール、2014年のH3N2の香港のものが使われていて、その他にB型インフルエンザウイルスとして2種類が使われています。

以上のことからも分かるように、インフルエンザワクチンの最大の目標は、遺伝子変異がどんどん起こるA型インフルエンザウイルスで最近流行したものに対する免疫を体にあらかじめ獲得させて、重症化を防ぐことにあるのです。


Part2に続く…