〜4/13

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ジャンクは主要メンバーが揃っているブリッジで、自分とロブを始めとする4人、そしてあの機体・セノーテとの関係を語り始めた。

それはクレール人との確執の始まりの出来事でもあった。






あれは今から5年前の事だ。

俺はこの世界からのはみ出し者達が集まる砂海にある小島のひとつにいた。
俺はこの島で育った。
ロブやジュベルら4人も同じだった。

親の顔など知らないし、知りたくもない。

俺はこの4人と、自分達が今いるこの島をいつも走り回っていた。

それは、島の長老達からは禁じられていた行為だったのだが、そんな事はお構いなしだった。


怒られ、また走り回り、そしてまた怒られる日々だった。



そんな日々の中、突然奴らはやってきた。

クレール人は空を飛ぶ船で俺らの島の上空にやってきて、クレール人の乗るコバシードで、どんどん島に降りてきた。
そして、片っ端から攻撃し始めたのだ。

逃げ惑う人々・・・

攻撃されているのは、主に若い男達であった。

クレール人からすれば、自分達に立ち向かう可能性のある若者を先に始末してしまおうとでも考えたのだろう。

もちろん島の大人達は抵抗を試みた。

しかし、クレール人が乗るコバシードに敵うはずもなかった。

俺達もクレール人が操る無人機械に追われるがままに逃げ惑い、徐々に島の下の方へ降りて行った。

そして、島の最下層部にある〘祠〙まで降りてきてしまった。

この祠の中には、長年最長老達の間で語り継がれてきた「この世を滅ぼす邪神」が祀られているとされ、長老達はもちろん、島のどの人々も立ち入る事は許されていない場所であった。


『行き止まりだぞ。ジャンク』
切羽詰まったロブの声が響く。

俺等は祠の扉を背にして、クレール人達がここまで降りてこない事だけを祈り続けた。

しかし、ついにクレール人の無人機械はすぐそこまでやってきてしまった。

逃げ場はない。

しかし、俺は思い切って祠の扉を押し開き、中に仲間達と飛び込んだ。



祠の中は、どこからか薄明かりが漏れる程度の薄暗い空間だった。


カビ臭い、ただの洞窟に思えた。

扉を閉め、祠の中を真っ直ぐに進む俺達。


道は徐々に下り始め、気温も下がってきた。身震いがする。
恐怖からではない。
明らかに体感温度は下がってきていた。

長い下り道をどのくらい歩いたのだろうか。
〘祠〙の扉の先に、こんなにも長い道があるなんて聞いた事もなかった。

そしてついに、その道は行き止まりに辿り着いた。

壁を触り『い、行き止まりだ。ジャンク』と、落胆の声を出すジュベル。

ジャンクがみんなを見渡すと、みんな肩を落として下を向いている。

ロブは震えながら、『もう終わりだ』と呟いていた。

『まだだ、みんな。顔を上げろ』とことさら大きな声を出してみんなを鼓舞するジャンク。

そして行き止まりの壁を調べ始めた。

ルブランが近付いてきて『何をやっているんだ?ジャンク』と肩に手をかけながら聞いてきた。

壁を見つめ、壁に手を当てながら『おかしいだろう?〘祠〙からのこの長い道は。なんでこんなに長く続いていたんだ?』と言うと、ルブランは『そうか。何かを隠すため。いや、抜け道か?』と呟くと、ジャンクはルブランの方を向いて『その可能性はあるだろうな』と言った。

そのジャンクの言葉を聞いたロブやショウは2人に近付いてきて、『そうか。確かに不自然な通路だったな』と口々に言い、『ジャンク』とみな一斉にジャンクを見る。

頷くジャンクは『みんなで探そう。何かしらの手掛かりがあるはずだ』と話し、『おう』と5人は拳を突き合わせて、行き止まりの壁を探り出す。


それから少しして、ショウが声を上げる。
『みんな、これを見てくれ』と。

ジャンクを始め5人が集まると、ショウが壁と壁が合わさった様な、不自然な段差を指差した。

自然に出来たものとは少し違う、明らかに人の手が入ったものだった。


ジャンクがその段差のアチコチを触ったり押したりしていると、いきなりその段差が動き出した。

驚く5人。
ロブなどは、一気に3メートルは後ろに飛び退いた。

しかし動いたのは、人が1人、身を屈めてやっと通れる程度の隙間であった。

そしてその中は真っ暗で、何も見えない。

しかし、微かな空気の流れを感じたジャンクは入ってみることにした。

『ルブラン。何か灯りになる物はないか?』と後ろを振り返ってルブランに聞く。

ルブランは、もの作りが好きな奴だ。よく分からない物も作るが、それらは結構役に立つのだ。

ルブランは『ちょっと待ってろ』と言って、腰に下げている頭陀袋を探る。


まったく、逃げる時でも持ってくるんだなぁと苦笑いをしていると、『これでどうだ。ジャンク』と言ってルブランが取り出したのは、丸い物体である。

球体で、片側の真ん中に取っ手があり、中には淡く光る何かが入っていた。

『これは?』とジャンクが聞いた瞬間、『ヒカリゴケかぁ。懐かしいなぁ』と、横からショウが口を挟む。

ショウの方を見てルブランは『そうだよ、ショウ。あそこで見つけたヒカリゴケを中に詰め込んだんだ』と嬉しそうに話す。

ジャンクやロブはキョトンとしていたのだが、ショウとルブランだけが楽しそうな顔をしていた。

まぁ、ふたりの秘密の場所なんだろうと微笑みながらも、『ルブラン。それを貸してくれないか』と手を伸ばし、ルブランからその球体を受け取るジャンク。

そして、身を屈めて隙間に入っていく。

ルブランはもう一つあった球体を手にしてジャンクの後に続く。

5人が入ると、扉は自動的に閉まってしまう。

慌てるロブに、何の根拠もなかったのだが、『大丈夫だ』と一言伝えて前に進む。

するとまた前は壁だった。

しかし、そこには明らかな〘ドア〙がついていた。


ホッとする5人。

『さっさとここから出ようぜ』とジュベルが扉に手をかけるが、扉はビクともしない。

『な、なんだぁ、コイツ、、はっ』と、渾身を力を込めるが微動だにしない。

荒い息を弾ませているジュベルに代わりショウが扉の取っ手を掴み、渾身の力をこめるも、やはり動かなかった。

5人一緒に取っ手に手をかけた瞬間、いきなり取っ手の周りが一瞬光った。

ロブを始め、ジュベルまでもが悲鳴を上げて後ろに飛び退く。

しかし光は直ぐに消え、そして何も起こらなかった。

『なんだぁ?何が光ったんだ?』『ヒカリゴケか?』『いや、違うようだぜ』
話し合うジュベル達は、右手を顎に当てながら佇むジャンクを見つける。


『そういえば、ジャンクはまだ一人で扉に触れてなかったな、、、』と、ここまでショウが言うと、『そうなんだ』とジャンクが呟きみんなの方を見る。

『だから、俺ひとりで触ってみようかと思うんだ』と言うと、振り返りざまに扉の取っ手に手をかけると、なんと扉全体が光ったではないか。

それにはジャンクも驚き、すぐさま手を離す。


しかし扉が光ったのは、明らかにジャンクが触ったからだという事は、誰の目から見ても明らかな事であった。

我々5人は、幼くして砂海に浮かぶこの小島にやってきた。

いや、小島で産まれたのかもしれないが、幼い頃小島で出会ったのだ。そしてそれから何をするにも一緒だった。
だから、誰が誰の子供でどんな産まれなのかは考えた事すらなかった。

しかし今、ジャンク以外の4人は、明らかにジャンクを異質の目で見ていた。

そう見られている事もジャンクは感じていた。

しかしそんな事は関係なかった。

ジャンクは「みんなを助けたい。島もみんなもだ」と強く思っていたので、4人の感情は無視して、『俺はこの中に入ってみる』とだけ言い残してまた扉の取っ手を掴み押し開く。

意外と軽く扉は動く。音もしない。

ジャンクが扉の中に入ると、音もなく閉まっていく。

『ジャンク』とロブが叫ぶ。
続いてジュベルも『待っているからな。ジャンク』と叫んだ時に扉は完全に閉まってしまった。


『さて、この先には何があるんだ?』と呟きながら、今度は登り坂を進んでいく。

ジャンクと別れてしまった4人は、顔を見合わせて黙っていたのだが、それまで下を向いていたロブが顔を上げるのと同時に、『取り敢えず俺達はここにいよう』と提案してきた。

元の道に戻ってクレールの無人機械と出くわすのはマズいからの発言である。

『そうだな。ここでジャンクを信じて待つかぁ』とジュベルもそう言い出し、扉の前にドカッと座り込んだ。




その頃ジャンクは、少し広い広場の様な場所に出た。

そこには祭壇の様な物がいくつもあった。

『なんだぁ?ここは』と呟きながら、用心深く祭壇の周りをうろつく。

すると『何者だ。何処から入ってきた』と、リンとした鋭い声がしてきた。

女?
そう思いながらも、『誰だっ』と答える。

すると、ひとつ先の祭壇の陰から人が1人出てきた。

暗くてよく見えないが、ジャンク達に比べると、かなり小柄である。

やはり女か?と思いながらも、『誰だ?』ともう一度質問する。


すると謎の声の主が近付いてきて呟いた。

『この場所に入ってこれたという事は、〔資格者〕か』と。

『資格者とは何だ』とまた問い詰めると、その人物は少し驚いた様な声で、『へぇ。ボクの呟いた声が聞こえたんだね』と言い『サルかよ』とも小声で呟く。

『サルで悪かったな』と笑いながら返してきたので、さらに驚く声の主。

そして、『どうやってここに入ってきたんだい』と、もう一度聞かれたので、ジャンクは今までの顛末を全て話して聞かせた。


すると声の主は、『ふぅ〜ん。無理矢理入ってきたのではないみたいだね。なら君。コッチへ』と手招きをしてきたので、ジャンクは素直に従ってみる事にした。

声の主に近付いてみると、その人物はやはり女であった。

顔は半分隠してはいるが、身体つきや声からして、まず間違いないと確信する。

するとその声の主はひと際大きな祭壇の前で止まり、振り向いて両手を大きく広げて、『ようこそ。選ばれし資格者よ』と言う。

『選ばれし資格者とは何だ』とジャンクがさらに聞くと、『君はこの星を滅ぼした邪神を知っているかい?ここはその邪神と、邪神を守る氏神を祀る神聖なる場所なのさ』と告げられる。



と、ここまでジャンクが話すと、ロブやジュベル達が驚いて口を開いている事に気付く。

「しまった」と思いながら『この辺はロブ達に話して無かったかな』と言って頭を掻いていると、『き・い・て・ませんよ。ジャンク』と、明らかに不機嫌そうなロブの声に『悪い悪い』と謝るも、「危ない危ない。ここから先は・・・」と自制するジャンク。

しかし、ロブたちはジャンクに都合の良い解釈をしてくれた。

『そうかぁ。その祭壇でジャンクはあの邪神・セノーテを得たんだな。そうなんだろぅ』とジュベルが口を挟み、『ああ、そうさ』と口裏を合わせる。

『そこに居た奴が、祭壇の灯りの部分に手を触れろって言ってきたので、端から触ってみたんだ。すると壁際に並んでいるうちのひと際大きい祭壇の灯りが灯ったんだ。驚いたよ』と話し、『その祭壇が〔セノーテ〕の祭壇だったんだ』とも話す。




その時声の主は驚いた様に、『君が邪神のマスターかい。これは驚いたね』と苦笑いしている様に見えた。


ジャンクは『俺が邪神のマスター?どういう事だ?』と声を荒げるも、『そのままの意味よ』と言われ、さらに『あなたは今、力が欲しいんでしょ』とジャンクの目の前にまでやってきて、顔を覗き込む様に話す。

ジャンクは心を見透かされたのかとも思いながら『そうだ。俺は今、俺達の島で暴れているクレールどもからみんなを守りたいんだ』と言って、その声の主を睨み返す。

そんなジャンクを見て「ふふふ」と笑い、そして『気に入ったわ。そんな貴方に力の使い方を教えるわ』と言い、『私の名前はファルよ。祭壇守のファル』と微笑みながらジャンクを誘う。

『祭壇守のファルか・・・』

不思議もこの少女に嫌悪感は感じず、素直にファルの後に付いていく。


そこで、この世を滅ぼしたという邪神・セノーテと対面したのだ。
そしてこの邪神の名前が〔セノーテ〕といい、さらにセノーテの動かし方をざっくりと教わったんだ。

セノーテの腹の部分が開き中を覗いていると、『行ってらっしゃい』というファルの声が聞こえたかと思うと、背中を押された俺はセノーテの中に落とされた。

一瞬、邪神に喰われたとも思ったが、ファルの声がしていたので、ここはセノーテの中だと思い直した。


そこは真っ暗だった。

手探りで辺りを触ってみると、椅子らしき物があるのが分かった。

取り敢えずそこに座る。


すると、いきなり島で起こっているクレール人の無人機械に襲われている人々の悲鳴が聞こえてきた。

そしてロブ達の叫び声も。

『やめろっ。やめてくれ』と叫びながらセノーテの壁を叩く。

しかしいくら叩いてもそこは開かない。

深呼吸をしてからもう一度、今度は両手を大きくゆっくりと動かして、どうにかしてこの邪神セノーテを動かすヒントがないか探ってみる。


そして徐々に暗闇に目が慣れてくると、自分が今いるセノーテの中はコクピットみたいだと気付き、周りをキョロキョロと見回していると、頭の上の方に帽子?みたいな物が付いているのに気付く。

その帽子の様な物に手を伸ばし手に取り、ぐっと引き寄せて被ってみた。

なぜだか、そうしなければならないと感じたのだ。


すると、頭の中に声が響いた。
聞こえたのではなく「響いた」のだ。


〔ナンジ ワレヲシタガエシモノカ〕と。

〔従えし者〕 これが資格者という事かと思った矢先に、ロブ達の声が聞こえてきた。

『ジャンクはまだか』
『うわぁ。扉の向こう側にクレールの無人機械がぁ』
『もう、駄目だぁ』

といった悲鳴だった。

ジャンクの血相が変わる。
そして、『ロブ。みんな。無理するな。今、今行くぞ』と叫び、『おいお前。ここから出せ。みんながっ』と叫び、足で前の壁を蹴っていると、またあの声が響いてきた。

〔ワレヲシタガエヨ ノゾメバカナワン〕と。

俺は必死だった。

『資格者だろうが、従える者だろうが、契約でも何でもしてやるから、早く動きやがれ』と叫んだ瞬間、ジャンクが座っていた空間は、端から暗闇が切り取られていくように明るくなっていき、外の様子が見える様になっていく。

そこには本来いるはずのないロブ達の姿が見えた。

ロブ達と扉1枚を挟んだ向こう側には、クレールの無人機械がいるのだ。

『ロブ。ジュベル』と叫び、ファルがセノーテと呼んだ邪神に対して、『おい、お前。早く動いてくれ。ロブ達が死んじまう。早くっ』と、叫ぶと同時に強く願った次の瞬間、ガクンと動いたかと思うと、視界が変わり、ファルと出会った祭壇の間の映像になった。

『っ』

俺は声にならない叫び声を上げたのだが、今まで見えたいたのは、セノーテが見せていた外の映像だと気付く。

セノーテが見せていた映像だとしても、島や祭壇の間の前には仲間がクレールどもに襲われているのは事実である。

『早く。早く動いてくれ』と叫びながら強く心に念じる。

すると再びその邪神セノーテは動き出す。

今度はさっきとは違い、スムーズな動きである。

「セノーテ。早くここから出て、島のみんなを助けてくれ。そしてロブ達を・・・」と、ここまで念じると、セノーテは背中の羽根を広げて上昇を始める。

祭壇の間に居た時は気付かなかったのだが、どうやら外に繋がる通路が上にあったみたいなのだ。

その通路をセノーテは上昇していく。


そしてついに外に出たのだった。

眩しい光に目を細めたジャンクは、一瞬そこが何処だか分からなかった。

確か、島の中心にある祠に通じる道に入ったはずである。

しかしジャンクがセノーテに乗って出てきたのは、対岸にある陸地の近くにある岩窟であった。

すぐさま場所を把握し、またセノーテに念じる。


『早くみんなの所へ。クレールどもからみんなを助けるんだ』と。

するとセノーテは空中で向きを変えて、ジャンク達の小島へ向かって動き出す。


そして、島の上空にやってくると、クレールの無人機械やコバシードよりも早くセノーテは動き回り、クレールの無人機械を地面に倒したり、腕を引きちぎったり、砂海に放り込んだりしてクレール人を島から追い払ったのだった。

最長老から伝え聞かされてきた邪神と似た風貌の機械が、自分達を襲ってくるクレール達を追い払った事に驚きを隠せないでいると、その邪神は祠の通路に入っていく。

中にはまだ無人機械が何体か残っていたのだが、あっさりとセノーテに倒されてしまう。

祭壇の間との境にいたロブ達を助けたジャンクは、邪神・セノーテの中に居るのがジャンクだと何とか告げて、ロブ達と一緒に祠から出て行った。



『あの時は驚いたよなぁ。クレールの無人機械と邪神が俺達を襲いにきたのかと思って、さすがにもう駄目だと思ったもんなぁ』とジュベルが言うと、『それよりも、あの邪神にジャンクが乗っていると分かった時は、もっと驚きましたよ』と、苦笑いをしながらショウも話す。


『そ、それでどうなったんですか?』と、ブリッジのメンバーのライに聞かれると、5人は顔を見合わせて、『そのあとが1番大変だったんだよなぁ』と、5人共で苦笑いをする。




クレール人が引き上げたあとの片付けをしている最中、ジャンク達は最長老に呼び出される。


『ジャンク。そなたが冒した罪を自覚しておるのか?』と問われる。

      【罪】

それは恐らく、祠に封印されていた邪神を動かした事なのだろう。

そう考えたジャンクは、『ああ。分かっているさ。祠に封印されていた邪神を動かした事だろう?しかし、アイツを動かしてなければ、俺はもちろん、ロブ達や島のみんなもクレールどもに殺られていたんだ』と語意を強めて語る。

そんなジャンクを見たロブ達も、口々に囃し立てる。

しかし最長老が話し始めた事は、ジャンク達の想像していた内容・言葉とは違っていた。

【この機械は正真正銘の〘邪神〙】なのだと。

これは、遙か昔に栄えていたこの星の文明を滅ぼした邪神なのだと。

あの邪神は、この星の文明が最盛期を迎えていた時、いきなり空から降りてきて、一気に文明を滅ぼしたのだと。

にわかには信じられない話しではあるが、その時伝え聞いていた邪神の風貌と酷似しており、何よりその出来事から何百年も経っているのにも関わらず、先程の様にスムーズに動いて見せた事も、神秘性に拍車をかけるものであった。

そして最長老は『ジャンクよ。この邪神の存在がクレール人に知られてしまった。奴らは躍起になって邪神を探す事になるだろう。だが、この島から邪神が出現しなかった事は幸いだが、奴らは諦めないだろう』と言うと、ジャンクは、『分かりましたよ。最長老。俺はこの島を出ていきます。島のみんなに迷惑はかけられませんからね』と言うと、ロブやジュベル達も『ジャンクが出ていくなら俺達も出て行くぜ』と声を上げる。

それを聞いた最長老は『そうしてもらえるとありがたい。しかし、何も出来ない貴様を放り出すのも忍びない。だから4年だ。4年の猶予を与えるから、それまで一人前のゲドン獲りになって、この島から出て行くのだ』と告げられる。

少し考えたのち、『分かりました。俺が一人前になるまではここに残って、みんなを守りますよ』と啖呵を切るジャンク。

その啖呵を聞いた最長老は頷きながら、『分かっているとは思うが、その間あの邪神には乗るなよ』と釘を刺しながら、『さぁ、話は終わりだ。明日から精進しなさい』と言うと、ジャンク達は最長老の屋敷から出て行った。

『ジャンクがゲドン獲りになるなら、俺達も砂海に出るしかないよな』と、また5人で拳を合わせて、『4年後、またここで落ち合おう』と約束をして、5人は別々のランチに乗り込んでそれぞれの腕を磨いたのだ。


『とまぁ、こんなところだよ。ライ』と言うジャンク。

ロブ達も『まぁ、そんなたころだ』と相づちを打つ。

『だからあのセノーテには、余程の事がない限り乗らないし、人の目には晒せないんだよ』とライ達に言い、さらに『だからさ。ライ達も他言無用で頼むぜ』とウインクしながら笑った。


ライ達ブリッジのメンバーも、『分かりました。そういう事なら。任せてください』と言って、右手で胸をドンと叩いて笑い合う。



しかし、ジャンクにはもうひとつのエピソードがあった。

「ロブやライ達には一生言えないなぁ。あのファルという祭壇守の少女と、邪神を守る氏神達の存在はなぁ」と、心の中で呟くジャンクであった。