『会談』



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J達は、ナテン率いる『シームー星系の友好団』に案内されながら、友好パーティーの行われる会場に向かっていた。


専用機から見える景色は今まで見た事もない光景で、洗練された都市はまさに「未来都市」と言える様な、無駄のない綺麗なものであった。


サキやラガンは撮影に没頭し、J達はただただ唖然としながら眺めていた。



そして30分くらい経っただろうか。


専用機はある巨大な建物の中腹にある『発着場』に着いた。


するとナテンが、『さあ皆さん。着きましたよ』と両手を広げてJ達を集め、専用機のハッチが開くのと同時に『ようこそ。シームーン星へ』と言い、パーティー会場へと誘った。




J達は、ただただ唖然としながら付いて行く。


そしてとてつもなく大きい扉の前まで来ると、ナテンが指をパチンと鳴らしドアの開閉を指示すると、大きな扉は音をたてずに左右に開いていった。




扉の奥には、数えきれない程のテーブルが並んでいた。


そのテーブルは、中華のターンテーブルが2段重ねになった様な形をしていて、その上には見た事もない様な料理が並んでいた。


『おお〜すげぇ』と驚きの声を上げたのはサキだったのだが、直後すぐに口を押さえて左右を見て下を向く。


そんなサキを見て、一同は微笑みながらパーティー会場へと進んでいく。


『ここにある料理は、我がシームーン星系の星々の中で伝統的な料理を集めたものです。どうぞ、ごゆるりとお過ごし下さい』とナテンが言う。


サキとラガンはJをチラチラ見ている。



そんなふたりを気遣う様に、『サキとラガンは先に頂いていていいぞ。俺達は少し彼らと話しがある』と言い、さらに『どの料理が美味いか、あとで教えてくれよな』とウインクして手を振る。


そんなJの言葉を受けてサキは、『おい、行こうぜ。ラガン』と言って、ラガンと一緒にテーブル群に向かって速歩きで歩いていった。




Jはそんなふたりを見送ったあと、『さてナテンさん。我々に話しがあるのでしょう?』とナテンの方を向き直って話し始める。


するとナテンも真顔になり、『そうですね。ここではなんですから、場所を変えましょうか』と言ってパーティー会場の入口脇にある小さな部屋の扉を自ら開けて、中に入って行く。


そんなナテンに付いていくJ達。


1番後ろを歩いていたオルドが部屋の中に入ると扉は自動的に閉まり、パァと灯りがついて、眩しいくらいの明るさになった。



そこには長方形のテーブルがひとつと、護衛だろうか。

ふたりの男女が立っていた。



ナテンがテーブルの近くまでやってきてからJ達の方を向き、『さて、私は政府の意向を聞いてここに来ています。立会人は第3防空隊隊長のバイアン君です』と言ってから、『我々は貴殿方のリーダーであるJさんと話しがしたいのです』と言い、『Jさんと、この場合はZさんが適任なのかな』とも言い、『どうぞお座り下さい』と自分達が立っている場所の反対側に座る様に誘導しながら、自らも共に行動していたバイアンと共に交渉のテーブルについた。



テーブルにはナテンとバイアン、そしてJとZが座り、残りのメンバーは少し離れた場所に立ちこの場を見守る。




一瞬の静寂のあと、最初に口を開いたのはナテンだった。

『さて・・・我々は貴殿方の先の〔プラント〕との戦いにおいて、今のシームーン星系の武器では退かせる事が困難な〔プラント〕を、貴殿方の兵器がアッサリと撃ち破って見せた事に驚きを隠せないでいます。まずはあの兵器が何なのかを知りたい』と、いきなり核心を突いてきた。


JはZを見て、『この件は、Zの方がいいだろう』と言ってZに話しを振る。


Zは静かに話し始める。


『あのビームは〔メーザー砲〕といって、宇宙に漂っている塵の様な物質の中にある〔グランニゥム〕という物質をエネルギーに変換させたものだ。私が長年かけて開発した兵器で、共振出来る物に当たると、ほぼ例外なくその物質内にある〔物質エネルギー〕に作用して、その物質を破壊する事が出来るものなのだ』と語る。



ナテンは『なるほどな』と呟き、バイアンも頷いている。


が、オルドやキールなどのJ側の他のメンバーは、訳が分からずに首を捻るばかりである。



『で、あなた方は、この〔メーザー砲〕をどうしたいのかな?』と相変わらず静な口調で言うZに対しナテンは『是非ともその技術力が欲しいのだ』と、身を乗り出して語意を強めて話す。




その言葉を聞いたZは「ふう〜」と息を吐き、『やはりな』と呟きながらJと顔を見合わせる。


そして今度はJが話し始める。


『ナテンさん。我々が貴殿方に技術力を提供する事は構いません。構いませんが、条件があります』と話し、『何でしょう』と言うナテンに対して『まず、メーザー砲を侵略の道具にしない事。そして我々の要求にも応えてもらう事です』と言う。



バイアンと頷きあったナテンは、『我々の文明は〔侵略〕という行為は遥か昔に捨てております。今は迫り来る〔プラント〕を排除出来ればそれでいいのです』と言い、『信用してくれるかは貴殿方次第なのですが』と真顔で言ってきた。


そしてそのあと、『貴殿方の要求とはなんでしょうか?』と聞いてきた。


Jは、『我々は時空震の中を必死に耐え抜いてここまでやってきました。しかし、今後この様な時空震の中を通っての移動となると、今の様な〔複数艦でのフォーメーション〕を組んでの移動は危険を伴います。よって、今の艦隊数を貴殿方の、シームーンの技術力で3艦くらいに減らして、各艦単独でワープの様な高速移動が出来る様に出来ないものでしょうか』とナテンに聞いてみる。



ナテンは腕を組んで考え込み、少ししてから『貴殿方の船を改造するのではなく、イチから作り直すというなら可能でしょうし、協力も出来ましょう』と話し、さらに『もっとも、その方法だとだいぶ時間がかかってしまいますけど、よろしいのでしょうか』と、心配そうに聞いてきた。


その質問に対したJの答えはこうだった。



『構いません。時間が必要ならそれでも構いません。それで我々が移動する際の危険性を軽減出来るのなら問題はないです』と言い、『それに〔メーザー砲〕の技術供与も簡単でないですからね』と答える。



それを聞いたナテンは、『そうですか。それでは、これでお互いの希望や要求はクリアされた・・・と解釈してよろしいですか?』と、少しホッとした様な声で聞いてきた。


『構いませんよ』と言うJを見ながら頷くZ。




ここで一気に緊張の糸が切れて、一同〔ふうぅ〜〕と大きな息をついた。




一息ついたところでナテンが、『ところで、あそこで我々を護衛している者達の紹介してもよろしいでしょうか?』と言ってきたので、元々気になっていたJは『是非に』と答える。


その返事を聞いたナテンは、バイアンに『部屋の外で警備している3人も紹介しよう』と言い出し、バイアンは苦笑いをしながら扉の方に歩いていき、外からまだ若い3人の女性を連れて戻ってきた。


5人をJ達から見やすい位置に連れてきて、自分に1番近い、部屋の中で警備をしていた男女の紹介を始めた。


『このふたりは、最近〔ステイタスフィールド〕から出てきたばかりなのですが、相当腕がたつので護衛に抜擢したのです。こちらの長身の男は名を《火馬》といって《剣士》をさております。 そして、その隣にいる女性は《イヴ》といって《戦士》を生業としています』と言う。


紹介された〔火馬とイヴ〕は、軽く会釈をする。



「うんうん」と頷きながらナテンは、さらにその隣にいる若き女性3人の紹介も始めた。



『左から《リコ・鞭使い》と《リカ・剣士》と《ルカ・魔銃使い》といいます』と言い、『3人も同じく〔ステイタスフィールド〕から最近出て来たばかりのルーキーなんですが、やはりかなりの腕前なんですよ』と嬉しそうに話す。



そんな笑顔満開で護衛役の若い戦士達を紹介しているナテンを目の当たりにしたJ達は、今までのナテンのイメージが覆り、なにやらホンワかとした気分になっていった。


『若いですが、彼らは本当にもの凄く強いんですぞ』と最後に念を押すように付け加えていた。




そんなこんなで〔会談〕は滞りなく終わり、ナテンとJ達一行はパーティー会場へと戻って行った。




J達を見付けたサキが駆け寄ってきて、『ようJ。話し合いは上手くいったか?』と耳打ちをしたあと、J達の満足そうな顔を見て話し合いの結果を予測し、『上手くいったんだな。良かった』とホッとする。


そんなサキの顔を見て、『ああ。上手くいったよ』と微笑みながら言葉を返すJ。



そしてサキは、『おい、みんな。あそこにある料理がめちゃ美味いんだ。とってあるから行こうぜ』とJとタリムの手を取ってテーブルに進んでいった。