映画では、フレディの苦悩の一部として性的指向のこと、エイズのことにも触れていて、でもそれは彼を描くために必要最低限の範囲でした。

 
そこがまたアーティストでありエンターテイナーに徹したフレディやクイーンを描いた物語らしくて良いところでした。
 
 
それはそれとして、映画を見てエイズのことを考えるキッカケにはなって欲しいと思う。
 
 
エイズがこんなにも広がってしまったのには、わたしの理解では2つ大きな理由があって。
 
1つ目はHIVの感染してからの無症状期間の長さ。10年くらいある。なのでちゃんと対策をしないとその間にどんどん感染が広がってしまう。
 
もう1つは差別感情。もともと性病が厄介なのは人に言いにくい病気だから対策が遅れがちな点だけど、初期のエイズはゲイの病気として認識されていたから、欧米でも政府や製薬会社の対策が遅れがちでした。放置された。
 
日本ではもっとたちが悪くて、最初は血液製剤で血友病の患者に広まった。血液製剤使用者を調査して約半数がHIVに感染しているって分かってから、厚生省や専門家の保身のために真実を伏せてアメリカから帰国したゲイの男性を第1の患者として発表、その間も汚染血液製剤の販売が続けられました。訴訟にもなった薬害エイズ問題です。
 
日本の例は悪質さが一段上の気がするけど、結局は差別意識を利用して事実の隠ぺいに成功してしまったという話。
 
 
その間に、欧米でも日本でも感染者が増えたんだよね。
 
 
その後の日本独特の問題は、セクシャルマイノリティーの無視が欧米よりもひどい事が関係してると個人的には思うけど、感染が増えてしまっていること(同性間では避妊が要らないのでコンドーム使わない人が多くてハイリスク層です)。欧米は新規感染者ゼロを目標にしている時代に、日本は毎年4,500人ずつ新しい感染者を出し続けています。
 
今は、HIVの増殖を抑える薬が開発されていて、発症前に治療を始めればエイズは死ぬ病気じゃないどころか、性行為をしても移らない病気になっているけど、そういう情報って知らない人が多いですよね。
 
だから、日本では発症・重症化してから初めて感染に気付く人が多いそうです。ある意味で、フレディーがHIVに感染した当時、無視によって感染が広がっていた欧米にやっと追いついたのかもしれないですね。
 
やっぱり、差別は人を殺すんだって、思った。