苦戦の公営ギャンブル、神奈川や千葉市が競輪撤退赤字、穴埋め負担膨らむ
2015/3/7 3:30
共有 保存
首都圏の自治体で公営ギャンブルから撤退する例が相次いでいる。ファンの高齢化による収益悪化が理由だ。高度経済成長期には収益が道路や学校建設に貢献したが、最近は売り上げの低迷で赤字に陥る例も少なくない。継続する自治体も新たなファン層獲得や費用削減を進めるが、環境の厳しさは変わらない。
千葉市は競輪事業を2017年度末で廃止する方針を表明した(6日、千葉競輪場)
神奈川県は3月末で横浜市、横須賀市と共同で続けてきた競輪を廃止する。川崎市と小田原市で開催してきたが、愛好者の高齢化やレジャーの多様化で車券の売り上げが減り収益が悪化した。国の支援措置もなくなることから「今後は赤字が膨らむ一方になる」(県財政部)と判断した。
3自治体は競輪事業の収益悪化が続く中、1998年に競輪事業を一本化し、経営改善に取り組んできた。
2010年度からは国が競輪を振興する財団法人への支払い(車券売り上げの約2%)を猶予したり、多額の収入が見込めるG3レースの特別開催などを認めたりして、売り上げ減に一定の歯止めがかかっていた。しかし特例措置は14年度末まで。15年度は売り上げが3分の1以下に落ち込む予想だった。
これまでの繰り出し実績は3県市合計で1348億円。ただ今では繰り出し金はゼロになり、14年度末時点の累積赤字は48億円に上る。廃止に当たっては県が27億円、横浜市が13億5000万円、横須賀市が7億5000万円を拠出。納税者の負担で撤退することになる。
神奈川県内では藤沢市も売り上げの低迷を理由に、平塚市で開催している競輪から今年度いっぱいで撤退する。
千葉市も競輪事業を2017年度末で廃止する。競輪事業は1949年に始め、これまで600億円を一般会計に繰り出して活用してきた。13年度から市営競輪場の運営を民間に委託し、費用削減と集客増に期待をかけたが、18年度以降は単年度収支が赤字になると試算。市民の負担を避けるため、撤退を決めた。
運営を受託する日本写真判定(東京・千代田)はファン層の拡大につなげようと、さまざまなイベントを展開。人気アニメ「弱虫ペダル」とコラボし、自転車レースやコスプレーヤーの写真撮影会を開催。初心者向けの体験ツアーも毎月開いているが、売り上げ減少には追いつかなかった。
競輪場の跡地活用も課題として残る。敷地は3分の2が国有地で残りを市が所有する。市は今後、財務省などと跡地の利活用について協議を進める。
埼玉県や東京・多摩地区では今のところ公営ギャンブルから撤退する事例は見られないが、売り上げ低迷など厳しい経営環境に変わりはない。
埼玉県では川口市が主催するオートレースの売上高が、2013年度は5年前に比べ4割減った。同年度から入場料を無料にしたが、依然として経営状況は厳しい。経営改善を狙い、12年に観客へ払戻金として配分する返還率を75%から70%に引き下げた結果、「払戻額が少なくなり、かえって客離れにつながった」(市の担当者)。
立川市は24億円かけて競輪場を改修する。一部の客席スタンドを取り壊し、家族連れなどが無料で競輪を眺められる芝生広場に変える。16年秋に完成する。市は「これまで競輪に無縁だった人に見てもらい関心を持ってほしい」としている。
江戸川区で競艇を催す武蔵野市や八王子市、町田市などの9市は経費削減のため、14年度から舟券販売や警備など一切の事務を民間に委託した。しかし、民間委託を取り入れながら撤退に追い込まれた千葉市の例もあるように、舟券売り上げが伸びない限り抜本的な経営改善にはならない。
競馬では東京都の23区で構成する組合が大井競馬場(品川区)で東京シティ競馬を主催する。経営は安定しており、廃止の予定はない。ファンの裾野の広さが苦境の続く競輪とは違うようだ。
▼公営ギャンブル 地方自治体などが主催する競馬や競輪など4競技。戦後の人口急増期に財政への貢献を見込み、多くの自治体が参入。高度経済成長にのって利益を自治体の収入とする「繰り出し金」も増え、道路や学校建設に充てた。ただバブル崩壊後は売り上げ減で運営に苦しむ例が増えた。東京都もかつては競輪や競艇などを主催していたが、1967年に就任した美濃部亮吉都知事により全廃された。
日本経済新聞より
ではまた



