※この記事は新井英樹氏の漫画「なぎさにて」単行本1巻の感想文です。作品のネタバレや色々と下世話な内容が含まれていますのでご注意ください。あとやたらと長いです。
※本記事は「上海」とか「駐妻」とか全く関係ありません。すみません。完全に筆者の趣味の世界です。
本当は「空也上人がいた」を2ヶ月以上前に読み終わっており、そちらの感想文を先にアップするつもりでしたが、その書きにくさと言ったら。
なので本作の感想を先に書いてしまいたいと思います。
リアルで語れる友達がいないもんで苦笑
作品のタイトルはネヴィル・シュート氏のSF小説「渚にて」から取られていると思われます。
しかし、こちらは未読の為現時点では語れません。
自分の浅学を恥じるばかりです。
以下本編の感想です。
2015年 東京 のページの運河と橋の風景を見たらすごく既視感というか、懐かしさを感じました。
と思ったらガチで前住所の近所が舞台でした。
そして主人公・なぎさちゃんがいきなり誰かに告白しています。
このシーンだけで私の腹筋は崩壊しました。
だって・・・
新井先生、細い女の子描けるんだ!!!!??? 普通に可愛いし!!!
男の子も、変に釣り目だったり、鼻翼が広がってたり鼻の穴が大きかったりしない、痘痕とかもない!!!!! あと、清潔感がある!笑
新井先生、イケメン描けるんだ!!!!???(しかもなんか色素薄い系の)
この時点で大爆笑してしまいましたよ!(失礼すぎる)
元々自分の画が癖があって万人受けしないことはご存知だったようですが・・・
私は好きですけどね。というかこの方の画力は漫画界最高レベルだと思ってますけどね。
こうして「普通に」描かれると純粋にびっくり。なんか衝撃です。
しかしながら、なぎさちゃんの挙動が不審すぎてそこはやはり新井作品だな~と思いました。
あと、浮浪者のおじさんが良い味出してる。あの近辺には確かにたくさんいらっしゃるのでリアルです。
そして彼女の家族ですが・・・
・お母さん・・・いつもニコニコしていて、娘と姑の仲もうまく取り持って、良いお母さん。巨乳が強調されているのはなんか意味あるのか?顔も可愛いし、パート先でリーマンの客に噂されるくらいなので、男好きするタイプなのか。家族の目の届かないパート先での休憩中に一本だけ煙草を吸う、というのも可愛いね。
・おばあちゃん・・・こういうおばあちゃん実際いるよねたぶん。私の周りにはいないが。あとご飯の食べ方がリアルだ。老い先短いこの人が意外と豆の木に関心を持っているというのも何かのフラグなんだろうか。
・弟・・・ちっさい久保にしか見えないんだが笑 普通に可愛いと思います。
・お父さん・・・個人的にこの人が一番興味深い。日本でよく見られる亭主関白な夫とは少し違うタイプ。クールビズ姿で夜遅く帰宅し、残り物のざるそばを洋書のペーパーバックを読みながら食し(そもそも食事にそこまで興味がないタイプか?)、その後も読書。最初の印象は「学者さんかな?」だったのですが本屋の店長さんのようです。あと、勤務先のモデルは錦糸町と思われる(清澄から自転車で通勤可能、LOVIN →LIVIN 、しんてんち→らくてんち?)。読書の幅はとても広く(Tinker Tailor Soldier Spy、河合隼雄、ミヒャエル・エンデ、もちろんケープタウンに関する本も読んでいる)、書斎にも本がびっしり置いてあり、活字中毒者のようだ。「磯田くんが店の売り上げを思ってくれるのは嬉しいけど」という台詞に人柄が表れていると思う。こういうことがさらりと言える上司って良いですね。この人が家族の大黒柱として、社会的責任を負った一人の人間として、世界の終末をどのように見つめ受け止めていくのか。彼が「今の世界の現状と折り合う答え」を見つけた時、家族にどのような影響を与えるのか。注目していきたい。
その他美少年・宙哉のお姉さん・本屋のバイトくん(磯田くん)・山城龍といった登場人物も、皆良いキャラしてます。
正直、初読時は「この愛らしい少女がいきなりレイ○されたらどうしよう・・・」とか「この仲睦まじい(?)家族がいきなり通り魔に襲われたり殺し合いを始めたりしたらどうしよう・・・」とかビクビクしながら読んだのですが笑、杞憂だったようです。ある意味訓練された読者であるとも言えるのでは(いばるな)。
ただし世界滅亡人類全滅ENDになる可能性はありますが・・・
新井先生のおかげで鬱展開とグロ描写には耐性つきました~
6-7話の家族の会話、8-9話のお父さん(宙哉)のモノローグ、なんというかぐっと来ます。
豆の木の出現を間近に目撃した時の描写もとにかくドラマティックです。また、親というのは自分を庇護し教え導いてくれる存在で子どもたちにとっては絶対的な存在だったはずですが、「今までどんな質問にも答えてくれた」お父さんが初めて「わからない」と言った時に子どもたちが受けたショックも計り知れなかったと思います。実際には、自分の親が決して完璧・万能ではないことに気が付くことは成長の一歩だと思いますが、何しろタイミングがあまりにも残酷でしたな。
なぎさちゃんの「100%」をお父さんが肯定できないのは、刹那的な生き方は良くないという考えの他、彼女の生き方を是としてしまうと、「自分たちは間もなく死ぬ」ということを肯定することになってしまうからだと思います。
なぎざちゃんは最初JKかと思ったけどJCか~ 若いなあ。
彼女のキャラクターは望月峯太郎氏「万祝」や山田詠美氏「晩年の子供」の主人公の少女に通ずるものがあると思うのですが、前者よりは切羽詰まっているし後者ほど悲愴な感じではないんだよなあ。
これまでの新井作品ですと山城龍が主人公になっていたと思いますが、なぎさちゃんを主役にすることで今までの新井作品とは違った爽やかさ・ひたむきさが出ていると思います。
この2人の邂逅シーンも良かったです。
そして、友達との関係もやるせないほどリアルに描かれています。あと、太るのを気にしてあまり食べないとか。自分の少女時代を思い出しましたよ。さすがお嬢さんがいらっしゃるだけあるなあ~と感心しました。
新井先生の作品は、もうちょっと映画に詳しければもっと深く分析できるんだろうけどなあ~
あと、語彙力が乏しいせいで表現するのが難しいのですが、豆の木の出現は思いっきり不条理小説っぽいのに、何故か不条理系に感じさせない手腕も本当にすごいと思います。
とにかくこの作品は新井漫画の新境地だと思います。次巻も楽しみです。
※本記事は「上海」とか「駐妻」とか全く関係ありません。すみません。完全に筆者の趣味の世界です。
本当は「空也上人がいた」を2ヶ月以上前に読み終わっており、そちらの感想文を先にアップするつもりでしたが、その書きにくさと言ったら。
なので本作の感想を先に書いてしまいたいと思います。
リアルで語れる友達がいないもんで苦笑
作品のタイトルはネヴィル・シュート氏のSF小説「渚にて」から取られていると思われます。
しかし、こちらは未読の為現時点では語れません。
自分の浅学を恥じるばかりです。
以下本編の感想です。
2015年 東京 のページの運河と橋の風景を見たらすごく既視感というか、懐かしさを感じました。
と思ったらガチで前住所の近所が舞台でした。
そして主人公・なぎさちゃんがいきなり誰かに告白しています。
このシーンだけで私の腹筋は崩壊しました。
だって・・・
新井先生、細い女の子描けるんだ!!!!??? 普通に可愛いし!!!
男の子も、変に釣り目だったり、鼻翼が広がってたり鼻の穴が大きかったりしない、痘痕とかもない!!!!! あと、清潔感がある!笑
新井先生、イケメン描けるんだ!!!!???(しかもなんか色素薄い系の)
この時点で大爆笑してしまいましたよ!(失礼すぎる)
元々自分の画が癖があって万人受けしないことはご存知だったようですが・・・
私は好きですけどね。というかこの方の画力は漫画界最高レベルだと思ってますけどね。
こうして「普通に」描かれると純粋にびっくり。なんか衝撃です。
しかしながら、なぎさちゃんの挙動が不審すぎてそこはやはり新井作品だな~と思いました。
あと、浮浪者のおじさんが良い味出してる。あの近辺には確かにたくさんいらっしゃるのでリアルです。
そして彼女の家族ですが・・・
・お母さん・・・いつもニコニコしていて、娘と姑の仲もうまく取り持って、良いお母さん。巨乳が強調されているのはなんか意味あるのか?顔も可愛いし、パート先でリーマンの客に噂されるくらいなので、男好きするタイプなのか。家族の目の届かないパート先での休憩中に一本だけ煙草を吸う、というのも可愛いね。
・おばあちゃん・・・こういうおばあちゃん実際いるよねたぶん。私の周りにはいないが。あとご飯の食べ方がリアルだ。老い先短いこの人が意外と豆の木に関心を持っているというのも何かのフラグなんだろうか。
・弟・・・ちっさい久保にしか見えないんだが笑 普通に可愛いと思います。
・お父さん・・・個人的にこの人が一番興味深い。日本でよく見られる亭主関白な夫とは少し違うタイプ。クールビズ姿で夜遅く帰宅し、残り物のざるそばを洋書のペーパーバックを読みながら食し(そもそも食事にそこまで興味がないタイプか?)、その後も読書。最初の印象は「学者さんかな?」だったのですが本屋の店長さんのようです。あと、勤務先のモデルは錦糸町と思われる(清澄から自転車で通勤可能、LOVIN →LIVIN 、しんてんち→らくてんち?)。読書の幅はとても広く(Tinker Tailor Soldier Spy、河合隼雄、ミヒャエル・エンデ、もちろんケープタウンに関する本も読んでいる)、書斎にも本がびっしり置いてあり、活字中毒者のようだ。「磯田くんが店の売り上げを思ってくれるのは嬉しいけど」という台詞に人柄が表れていると思う。こういうことがさらりと言える上司って良いですね。この人が家族の大黒柱として、社会的責任を負った一人の人間として、世界の終末をどのように見つめ受け止めていくのか。彼が「今の世界の現状と折り合う答え」を見つけた時、家族にどのような影響を与えるのか。注目していきたい。
その他美少年・宙哉のお姉さん・本屋のバイトくん(磯田くん)・山城龍といった登場人物も、皆良いキャラしてます。
正直、初読時は「この愛らしい少女がいきなりレイ○されたらどうしよう・・・」とか「この仲睦まじい(?)家族がいきなり通り魔に襲われたり殺し合いを始めたりしたらどうしよう・・・」とかビクビクしながら読んだのですが笑、杞憂だったようです。ある意味訓練された読者であるとも言えるのでは(いばるな)。
ただし世界滅亡人類全滅ENDになる可能性はありますが・・・
新井先生のおかげで鬱展開とグロ描写には耐性つきました~
6-7話の家族の会話、8-9話のお父さん(宙哉)のモノローグ、なんというかぐっと来ます。
豆の木の出現を間近に目撃した時の描写もとにかくドラマティックです。また、親というのは自分を庇護し教え導いてくれる存在で子どもたちにとっては絶対的な存在だったはずですが、「今までどんな質問にも答えてくれた」お父さんが初めて「わからない」と言った時に子どもたちが受けたショックも計り知れなかったと思います。実際には、自分の親が決して完璧・万能ではないことに気が付くことは成長の一歩だと思いますが、何しろタイミングがあまりにも残酷でしたな。
なぎさちゃんの「100%」をお父さんが肯定できないのは、刹那的な生き方は良くないという考えの他、彼女の生き方を是としてしまうと、「自分たちは間もなく死ぬ」ということを肯定することになってしまうからだと思います。
なぎざちゃんは最初JKかと思ったけどJCか~ 若いなあ。
彼女のキャラクターは望月峯太郎氏「万祝」や山田詠美氏「晩年の子供」の主人公の少女に通ずるものがあると思うのですが、前者よりは切羽詰まっているし後者ほど悲愴な感じではないんだよなあ。
これまでの新井作品ですと山城龍が主人公になっていたと思いますが、なぎさちゃんを主役にすることで今までの新井作品とは違った爽やかさ・ひたむきさが出ていると思います。
この2人の邂逅シーンも良かったです。
そして、友達との関係もやるせないほどリアルに描かれています。あと、太るのを気にしてあまり食べないとか。自分の少女時代を思い出しましたよ。さすがお嬢さんがいらっしゃるだけあるなあ~と感心しました。
新井先生の作品は、もうちょっと映画に詳しければもっと深く分析できるんだろうけどなあ~
あと、語彙力が乏しいせいで表現するのが難しいのですが、豆の木の出現は思いっきり不条理小説っぽいのに、何故か不条理系に感じさせない手腕も本当にすごいと思います。
とにかくこの作品は新井漫画の新境地だと思います。次巻も楽しみです。
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