- 前作「イノベーションのジレンマ」 は大企業側から見て主にケーススタディの成果をまとめたものだったが、本作は理論が全面に出てくる。
イノベーションへの解 収益ある成長に向けて (Harvard business school press)/クレイトン・クリステンセン
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■理論とは?
P20『十分調査した研究に基づく理論体系があれば、どんな分野にも予測可能性をもたらすことができる。』
P22『悪い経営理論が生まれるのは、研究者が一つか二つのサクセスストーリーを性急に観察し、見るべきものを十分に見たと思い込む時だ。』
■インテグラル⇔モジュラー、差別化⇔コモデティ化のサイクル
日本の製造業の転機をインテグラル(擦り合わせ)型からモジュール型への転換と重ね合わせる論調が多い。本書で衝撃的だったのはモジュールからインテグラルへの再移行もあるという著者の理論だ。
これをSIビジネスに当てはめてみる。60年代から80年代はSIサービスはメインフレームの付属品みたいなものだった。業務ロジックをCOBOLで書くがハードやOSはセット。80年代からダウンサイジング・オープン化という名前のモジュール化が進み、SIサービスは花形の扱いになった。そして、今再びソフト・ハードのインテグラル化が進んでいる。
なぜ、SI事業では差別化が難しいか?マーケティング特論1の最終課題で考えたが、ほんとどん詰まりだなという結論を持ったのは、これで説明できると思った。SIサービスはモジュール化しているから。複雑になりすぎた高度なインテグレーションよりも低コスト・短納期が要求されているからだ。そしてコモデティとなっている。ならば個人レベルではともかく事業としては差別化できなくても当たり前だ。問題はソフトメーカーの再統合化である。著者の理論では投資を集中するべきだが・・・・。
■いかに未来を読むか?
P155『過去の事実を将来への指針へと用いれば、まったく誤った方向に導かれることがある。将来が何をもたらすかを正確に知る唯一の方法は、理論を用いることだ。』
■組織の作り方・戦略プロセス策定の進め方
どちらも今求められている事業がどんな「状況」かによる。自分の経験で考えるとほんとすっきり来る話だ。例えばユーザ対応している営業マンと新規開拓の営業マンが一緒のグループになると上手くいかない。大規模向け製品と中小向け製品を一緒にやろうとしても大規模製品をみんな選択する。どちらも稼ぐ金額や達成度が違うからだ。新規開拓や低額製品をやるならば、別組織で小さな成功でも喜べるグループを作らなければならない。そして、戦略はあらかじめディテールを決めてから実行するのではなく、やりながら必勝プロセスを見つけ出していく方法でなければならない。
一章の学問的理論の説明の箇所で早くもノックアウトされて満足してしまいしばらく放っておいた。その間KITの期末課題をはさんだことで、かえって自分の中の探究心や問題意識が醸成され本篇を読んだので理解が深まった感じだ。これ、、傑作だな・・・。
★★★★★ (2009年7月~8月第1週)