この国のかたち
コーポレートガバナンス・コードを、三方良しに改訂する
2023.3.19-2024.2.8追記修正

【2024.2.8追記分】
(1)関西経済連合会が(北海道・北陸・中部・中国・四国・九州の各経済連合会と連名で)企業統治指針(CGコード)の見直し案を公表した(2023.9.11)
※「「コーポレートガバナンスに関する提言」 を公表~マルチステークホルダー経営に支えられた新しい資本主義の実現に向けて~」
https://www.kankeiren.or.jp/keizaijin/202310now.
~新自由主義的な考え方の行き過ぎた部分を是正し、(株主だけでない)多様なステークホルダー(利害関係者:顧客・従業員・取引先・地域社会・株主等)を意識した経営(マルチステークホルダー資本主義)に移行する
「三方よし」(公平でバランスの取れた価値の分配)「企業は社会の公器」(公益性)という経営哲学に基づく中長期的な企業価値の向上を目指す
具体的な章立てを作り、コーポレートガバナンス・コードの追記・修正等見直し案を示した
~例えば「政策保有株式は、事業提携・戦略的提携という意義が有り、企業の中長期的成長に資するから、一律に縮減が良いとはしない」「独立社外取締役は、形式的な遵守ではなく、企業を取り巻く経営環境や、求められる独立社外取締役人材等を踏まえて、柔軟に判断できる目安に変える」「企業の事務負担に留意して四半期開示の義務付けを廃止する」「株式を長期に保有する安定株主に低税率等の優遇措置を導入する」「機関投資家等が利用する、議決権行使助言会社は米国本社の2社で寡占状態にあるから、推奨内容の事後開示等、助言内容の根拠を検証できるように規制を作る」「中長期的な設備投資や研究開発等を妨げないように、ROEやPBR(株価純資産倍率)等の指標を過度に重視することによる自社株買い等にガイドライン・説明責任等を導入する」「政府審議会(企業関連諸制度)の委員構成を見直す」「日本経済の持続的な発展に資すること」
※関西経済連合会「意見書『コーポレートガバナンスに関する提言』『マルチステークホルダー資本主義に基づくコーポレートガバナンス・コードの提案』の取りまとめについて」(提言本文)
https://www.kankeiren.or.jp/material/230911release.pdf
(2)報道・記事
(ア)「関経連がCGコードに改訂案企業統治に公益性重視・自律的な経営を」(newswitch 2023.9.13)
https://newswitch.jp/p/38468
~現行CGコード適用により、日本企業の経営が短期志向になった(企業は成長せず、投資・研究開発は促進されず、賃金は増えず)
~関経連が公表したCGコード改訂案は、日本企業が長年培ってきた「企業は社会の公器」という哲学を再確認させ、企業のあるべき姿を示す
(イ)「関経連、企業統治指針の改定提言 社外取選任を柔軟に」(日経 2023.9.11)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF116GR0R10C23A9000000/
~コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)の改定を求める提言を発表して、政府や東京証券取引所などへ要望活動を進める方針
(ウ)日本型「三方よし」経営重視で従業員や取引先に分配を 企業統治指針見直し提言(産経 2023.9.11)
https://www.sankei.com/article/20230911-ACP2S6YADJP6HKJZLVVSWLXWXI/
~米国流の「株主第一主義」の思想を崩し、「従業員や取引先にきちんと報いたい」(財界幹部)
売り手よし・買い手よし・世間よしの日本古来の「三方よし」経営を改めて重視する
~投資家(株主)を保護・優遇する仕組みを強めた結果、企業活動に使うべき資金が流出している
米国で貧富の差が大きくなり、社会の不安定感が増した
~財務担当者は3カ月ごとの決算集計に疲弊している、四半期開示の義務付けを廃止すべきだ

【はじめに結論】
(1)CGコードの根底にあるのは「会社は株主のもの」という「本来は決して標準とは言えない考え」であり、これにより「株主・投資家のための指標・情報公開」等に偏っている。これは某ノーベル賞学者が唱えて米国金融(株主)資本主義が日本に要求した。⇒下記【1】末尾
(2)逆に現行CGコードの第2章に入れ込んだ「雑多なもの」(経営理念・会社の行動準則・環境問題 etc.)を中心にする改訂を要する。⇒下記【2】末尾
(3)「企業活動が、社会に良い影響を与えて、人々に最大幸福をもたらして、地球環境・人間社会を持続可能にする」には、「利害関係者全体の利益」と「社会に貢献する」、それに相応しいCGコードを要する。⇒下記【3】末尾
(4)現行CGコードは「企業成長の分配が、株主配当と経営者報酬にしかならない」。この結果「企業成長・経済成長」があったとしても、再分配機能を担うのは、専ら政府施策だけになっている。効率的でなく・合理的に行うには工夫が難しく・効果が限られて限界がある。
~これを改めて、「企業が利益の発生時点で直接再分配する」仕組みも組み合わせる
~即ち、本稿の「CGコードを、三方良しに改訂する」ことになる。⇒下記【4】(3)(4)
【筆者補記】下記【4】「結果」の総括として、日本人の特質(均等で質の高い学力、勤勉さ・向上心、協調性 etc.)を軽んじて、日本企業の成長方式(改善の積み重ね、長期の人材育成・技術開発、利害調整等)を妨げて、国力を衰退させた。この要に、日米経済戦争・構造協議等を背景に導入した現行CGコードが在り、「国のかたち」「国造りの価値観・目標」をも変えて歪ませている。これを改めて「美しい明日」を見通すことが責務(ミッション)だ。⇒下記【関連ブログ】

【1】日本におけるコーポレートガバナンス・コードの導入
(1)コーポレートガバナンス・コードとは?
 「上場企業が行う企業統治において参照すべきガイドライン・原則・指針」を示したもの。
 「Corporate Governance」からCGコードとも言う。
 これに照らして「企業運営の透明性確保・適切な運営」を図る意味がある。
(2)日本では2015年に作り、2018年と2021年に改訂した。
(ア)2015年の策定は、金融庁と東京証券取引所が「コーポレートガバナンス・コード原案」を公表して、これを基に東京証券取引所が作り、上場企業に適用した。
(イ)2018年の改訂は、「最高経営責任者の選任・解任」「女性・外国人等の任用を、経営側(取締役会等)に加えて執行側(管理職等)でも行う」「会社が相互に持ち合う株式を減らすよう促す」等々を加えた。
(ウ)2018年の改訂は、「新型コロナウィルス感染拡大」「デジタルトランスフォーメーション(DX)推進」等を背景に「人的資本の情報開示」「サステナビリティ(持続可能性)への取組み」「取締役会の機能発揮・株主総会」等々を加えた。
(エ)2021年の改訂の前提に、2022年4月からの「東京証券取引所の市場区分再編」(プライム市場・スタンダード市場・グロース市場)がある。
~これを見越して、「プライム市場の独立社外取締役」「経営戦略に照らした取締役会が備える技量(スキル)を特定して開示する(人的資本)」「企業の中核人材に多様性(ダイバーシティー)」「中長期持続可能性(サステナビリティ)」等々を加えた。
(3)2015年、策定の背景
(ア)公式説明は、「少子高齢化での日本経済の成長」「企業の持続的成長の取組み」等を示した上で、「雇用機会の拡大」「賃金上昇」「配当増加」の好循環と述べた。
(イ)しかし実際に起こった結果(2023現在)は、「失業率は低め」ではあるものの、「若者の非正規低賃金雇用が増えて」「先進国で稀な低賃金・2極化」「デフレ・安い日本」であり、「大企業の内部留保・経営者の報酬・投資家への配当だけが増えた」。
(ウ)公式説明以外の背景には、「日米経済戦争(1972繊維、1977鉄鋼・カラーテレビ、1980農産物、1981自動車、1985金融投資サービス、半導体・コンピュータ、円高プラザ合意、1987制裁関税、1989~構造協議、1991-1993バブル崩壊、1990~米中貿易摩擦 etc.)」「小泉構造改革(2001~2006)」「低賃金であり技術力も付けてきた中国等との競争」「米国・米国投資家等からの非関税障壁批判・投資機会の拡大要求」「所謂、物言う投資家からの株主の権利主張」「米国における(金が金を稼ぐ)金融資本主義の跋扈跳梁」がある。
 より広くは、「グローバリズム」「新自由主義」「金融(株主)資本主義」等が背景になる。
(エ)従って、CGコードの根底にあるのは「会社は株主のもの」という「本来は決して標準とは言えない考え」であり、これにより「株主・投資家のための指標・情報公開」等に偏っている

【2】現行コーポレートガバナンス・コードの概要
(1)「原則主義」(プリンシプルベース・アプローチ)と「comply or explain」(コンプライ・オア・エクスプレイン)を採っている。
「原則主義」は、「原則を定めて、細部は企業に任せる」やり方。〔反対に細かく決めるのは「細則主義」(ルールベース・アプローチ)〕
「comply or explain」は、「全ての原則の遵守義務は無く、何故そうしないかを説明すれば良い」
(2)現行CGコードの構成
(ア)2018年版は、「5基本原則、31細原則、47補充原則」で出来ている。
~「5基本原則」は、「第1章:株主の権利・平等性の確保」「第2章:株主以外のステークホルダーとの適切な協働」「第3章:適切な情報開示と透明性の確保」「第4章:取締役会等の責務」「第5章:株主との対話」。
(イ)「5基本原則」に分けているが、核心的なのは第1章「原則1-1:株主の権利の確保」で全てを貫いている。この観点から「株主総会・政策保有株式(持ち合い株)・買収防衛策(株主への経営側の抵抗を制限)」等の原則を規定している。
~第3章「原則3-1:情報開示」等も、投資家が株式を長期短期の自己利益のために売買し易くする規定だ。
~第4章「原則4-1:取締役会の役割」等も、第1章「原則1-1:株主の権利の確保」のための仕掛けであることが最優先の目的になる。
~第5章「原則5-1:株主との対話」等も、CGコードの根底にある「会社は株主のもの」という偏った考えに基づく、「株主・投資家の自己利益」のための対話に限られる
~第2章「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」だけに、僅かに「株主の利益」以外の雑多なものを入れている
 例えば「原則2-1:経営理念」「原則2-2:会社の行動準則」「原則2-3:環境問題」「原則2-4:女性の活躍」「原則2-6:企業年金のアセットオーナー」である。
(ウ)何故、第2章だけに雑多なものを入れ込んだか?「会社は社会に存在して関係を築かないと存続できない」のに、第1章・第3から5章の「株主・投資家の自己利益」だけでは「実もふたも無い!?」からだ。これらは現行CGコードが「実もふたも無い!?」ことを繕うものになるが、中途半端であり、「株主・投資家の自己利益」のためのCGコードであることを維持している。

【3】コーポレートガバナンス・コードの在り方:「企業活動が、社会に良い影響を与えて、人々に最大幸福をもたらして、地球環境・人間社会を持続可能にする」には、「利害関係者全体の利益」と「社会に貢献する」、それに相応しいCGコードを要する
(1)CGコードは「企業経営を管理監督する仕組み」。管理を要する切っ掛けには、次のようなものがある。
(ア)企業の非人道的・非倫理的行動を抑える:男女・人種等雇用差別、日本の技能実習生の不当な処遇、森林伐採・鉱山採掘等での環境破壊・公害発生、途上国での児童労働 etc.
(イ)企業不祥事:贈収賄・違法献金、背任・インサイダー取引、天下り、欠陥製品の放置・隠蔽、製品検査不正、会計経理不正・粉飾決算・虚偽記載 etc.
(ウ)機関投資家等からの要求:年金基金等大口機関投資家からの投資情報要求企業売買での経営状況情報要求 etc.
(エ)国際取引での市場開放要求:貿易、企業進出、非関税障壁(法令規制等)、株式売買 etc.
(2)日本では
メインバンクによる企業監視、取引企業間等の株式持ち合い etc.が伝統的だった
~下記(4)中段の英国のように、監督機能(取締役会)に、(執行機能である)社内出身者が(昇進のような形で)就くことが多い。
元々は長期雇用が基本で、「若いときは安い給料で( On the Job Training で仕事を覚えて)、世帯形成期(結婚・子育て・家購入)に給料が上がる」人生設計には適していた
元々は「会社への帰属意識・忠誠心が高く」、「従業員が率先して製品・サービスの改善、会社の発展に尽くす土壌・作風が有った」。(かつて Japan as Number one と評された頃には、優秀な官僚と共に、こうした民間会社の組織風土が有っただろう。)
~非正規低賃金雇用の当初でも、非正社員等にもこうした高い職業意識は残っていて、仕事の質は落ちなかった。(株主・経営者が安く使い続けた結果)こうした職業倫理は崩れる。当たり前だ。
~その後「国際取引での市場開放要求」等から、CGコードに米国式を取り入れた
(3)米国では
~1990年代のアンケートによると、企業所有「利害関係者全体とするのが24%、株主とするのが76%」になる。ドイツでは「利害関係者83%と株主17%」で、日本では「利害関係者97%と株主3%」とのこと。後者では「会社は利害関係者全体の」「長期的利益を増進するために存在する」と考えている
米国では、(社外に居る)株主の利害を、「社外(!?)取締役」が(社内出身者の取締役に対抗して)「社外株主」の利害を代弁する
~日本の現行CGコードは、上記アンケート、後者の理解と懸け離れている。こうなったのは、米国の金融資本主義(「金が金を稼ぐ」)からの市場開放要求に応えたからだ。背景には、日米の経済戦争での米国への譲歩がある
(4)監督機能と執行機能
~一般的に企業統治のために、監督機能(取締役会)と執行機能(社長・最高経営責任者CEO・執行役員)を分けると言うが、米国企業でも同一人物が兼ねることは多い
英国では、監督機能(取締役会)に、(執行機能である)社内出身者が(昇進のような形で)過半数を占めることが多い。
ドイツでは、取締役会が「監査役会と執行役会」に分かれる。大企業では「監査役を、従業員と株主が半分ずつ選ぶ」。
 間接金融を行う銀行が、寄託されたものを含めて半分程度の議決権を行使する。株式持ち合いも有る。
~従前からドイツや日本に有った「メインバンクや企業グループ間の」「株式持ち合い」は、(米国・金融資本主義から指摘される弊害ばかりではなく)「安定株主」であり、「長期視点の経営」「長期間での成長・技術開発等」に有利で、また近年の「新技術での提携等に伴う」株式持ち合いも、「長期間での技術開発・成長等」に資する
(5)米国は起業が盛んだ。「創業者が独創的な事業案を作って、出資を募る」「創業者のアイデア、それを磨いて推進するスタッフ、これが事業の核心で実態だ」
「社会を発展させる革新(イノベーション)を起こすのは、創業者・スタッフ等だ」
~「事業の核心は出資者(株主)ではない」明らかだ。「ただ金を置いておいても増えない」「ただ金を出資しても増えない」、同じことだ
(6)「出資者(株主)は、(企業という創業者・スタッフ等を含む複合体でなく)株式証書等を所有しているに過ぎない」「利害関係者の”一部を成す”に過ぎない」「株式を売り抜ければ、短期的にも利害関係者で無くなる」。
法人格を持つ法人(株式会社等)が行う様々な契約の”ひとつの相手方”に過ぎない。「出資契約・社債発行契約・雇用契約・仕入れ契約・製品サービス売買契約 etc.」
~また例えば、法人が刑法に抵触して両罰規定で罰せられるときに、出資者(株主)が刑務所に入る訳ではない。同じく法人が民法に抵触して損害賠償義務を負うときに、出資者(株主)が分けて支払う訳ではない。(別法人・別人格だから)(”限定的な”利害関係者だから)(責任が限定的で、権利も限定的ということだ)
(7)「出資者(株主)の利益は、突き詰めれば株価が上がることだけ」「経営者(管理者)にストック・オプション(新株予約権)を与えるのは、出資者(株主)と利害を一致させて、株価が上がるように働かせる便法だ」。
~「社会を発展させる革新(イノベーション)を起こすか、害毒を及ぼすかは、出資者(株主)の利益を下げない限りはどうでもよい」、だから「エンロン事件等不正会計処理、短期的な経営等の副作用・弊害の原因になる」
「企業活動が、社会に良い影響を与えて、人々に最大幸福をもたらして、地球環境・人間社会を持続可能にする」には、「利害関係者全体の利益」と「社会に貢献する」、それに相応しいCGコードを要する

【4】現行コーポレートガバナンス・コードの「結果」の総括
(1)2013年(平成25年)「日本再興戦略ーJAPAN is BACK-」(日本を再び偉大に)「目標」にしたものと「結果」
(ア)日本の企業の「稼ぐ力(収益力)」「企業価値の向上(株価上昇)」「持続的成長」等を目標にした模様。
(イ)上記戦略の目次・事項を見ると、「民間の力」「世界で勝てる人材」「新たなフロンティア(産業領域)」「成長の果実の国民への反映」等が並ぶ。
しかしこれを実現する方策として作った「CGコード」は、前記【2】のように、「株主の利益」だけのものであり、再興戦略の挙げる「民間の力」「人材」も「株主利益のための手段・駒に過ぎない」従って「株主以外の国民に成長の果実が反映する構造になっていない」
(ウ)「産業再興」の「雇用制度改革」には、「雇用維持型から労働移動型」とあるが、実態は「格上がり転職」ではなく「正社員から非正規低賃金雇用」「日雇い派遣・ギグワーカー等の拡大」であった
そもそも経団連を初め、「被雇用者を人材ではなくコスト(最小化すべき費用)に定義して、トリクルダウンが起きる訳が無い」
~上記の前提で「何ら賃金引上げの仕組みが無い」ままでの「女性の活躍」「若者・高齢者の活躍」は、「人手不足を低賃金労働で補う」ことにしかならない。論理的必然の帰結だ。
(2)これまでの「結果」の総括
(ア)バブル崩壊後に、所謂「失われた10年(1991~2001)」という低成長・経済停滞・日本企業等の地位低下(世界の大企業順位・先端論文数順位 etc.)があり、未だに脱してはいない。〔cf.小泉構造改革(2001~2006)〕
(イ)国民の中間層が減り、所謂「富裕層」という言葉が出てきて、「若者の半数程度が非正規低賃金雇用」に成ったから、「成熟社会」でもない。外国人に不動産等も買われる「安い日本」
(ウ)2023年の政策課題に注目を集めている「少子高齢化・人口減少」は、要因に「女性の社会進出を担保する制度の遅れ」と共に、上記「若者の半数程度が非正規低賃金雇用」に成って「結婚・子育て・人生設計できない」ことがある。
(3)「企業成長の分配が、株主配当と経営者報酬にしかならない」
(ア)企業の法人税は下げて来た。
(イ)日本の分配で増えているのは「株主配当」と「経営者報酬」だけだ。
(ウ)金融所得(株主配当)は分離課税になっている。総合課税になっていない
(エ)2023年現在、政府の施策で支出を増やすときは、「消費税、所得税(復興税「定率」上乗せの仕組みの流用)、国債」が話題になるが、「法人税の一部増」の他では、「金融所得の分離課税・総合課税の見直し」には取り組んでいない
(オ)この結果「企業成長・経済成長」があったとしても、「再分配機能を担うのは、専ら政府施策だけ」になっている。効率的でなく・合理的に行うには工夫が難しく・効果が限られて限界がある。
~これを改めて、「企業が利益の発生時点で直接再分配する」仕組みも組み合わせる
~即ち、本稿の「CGコードを、三方良しに改訂する」ことになる。
(4)前記【2】(2)現行CGコードの第2章のように、「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」=「株主の利益以外の雑多なもの」こそを、CGコードの中心にして改訂しなければいけない。 何故なら「会社は社会に存在して関係を築かないと存続できない」、会社の社会での存在理由だ。
~第1章・第3から5章の「株主・投資家の自己利益」だけでは「実もふたも無い!?」
~「社会との関係」を現行CGコード第2章のように、中途半端に投げ込んで、取り繕うのでは全く不十分だ。

【5】コーポレートガバナンス・コードを、三方良しに改訂する
(1)「三方良し」とは?
「近江商人と三方よし」(伊藤忠商事)
https://www.itochu.co.jp/ja/about/history/oumi.html
~近江商人の経営哲学「商売において、売り手と買い手が満足するのは当然のこと、社会に貢献できてこそ良い商売といえる」
 「三方よし」の起源は「商売は菩薩の業(行)、商売道の尊さは、売り買い何れをも益し、世の不足をうずめ(補い)、御仏の心に適うもの」という言葉と考えられる。
 「自らの利益のみを追求することをよしとせず、社会の幸せを願う」
 「三方よし」の精神は、現代のCSRにつながる
~(引用者注記:CSRとは?)
「CSR(Corporate Social Responsibility)とは、企業が社会的存在として果たすべき責任」
「CSRの7つの原則(国際規格 ISO26000)
(ⅰ)説明責任
   企業活動が社会に対して与える影響につき、十分な説明を行う。
(ⅱ)透明性
   経営陣による意思決定や具体的な活動につき、社会に対して透明性を保つ。
(ⅲ)倫理的な行動
   企業活動は、公平・誠実などの倫理観に基づいて行う。
(ⅳ)利害関係者(ステークホルダー)の利害の尊重
   株主だけでなく、債権者・取引先・消費者・従業員など、さまざまな利害関係者(ステークホルダー)に配慮して企業活動を行う。
(ⅴ)法の支配の尊重
   自国の法令や、自社に適用される他国の法令を遵守する。
(ⅵ)国際行動規範の尊重
   法令のみならず、国際的に通用している規範を尊重する。
(ⅶ)人権の尊重
   重要・普遍的である人権を尊重する。」
(2)関西経済連合会の取組み
(ア)「関西ビジョン2030」(関西のありたき姿)2020.12
「パラダイムシフト」(規範になる考え方を転換する)
(a)人口増に支えられたモデル⇒人口減少を前提にしたモデル
(b)先進国からアジアへの一方通行の関係⇒アジア・日本双方間の協力による互恵関係
(c)株主第一主義志向(短期利益重視等)⇒多様な利害関係者を意識した経営
(d)社会課題解決の主体は行政⇒社会課題解決に向けた企業の役割
(e)東京一極集中⇒都市機能の多拠点化(地方分散)
(f)単線型・画一型の人生モデル⇒複線型・多様なライフスタイル(生活の営み方)・キャリア(職務経験)
「関西の本質を見失わない」
(a)歴史に基づく伝統・伝統が育んだ文化の集積
~気候風土が磨いた感性、価値観・行動様式
(b)関西の精神
進取の気性、寛容さ、自主自由、独創性・面白さを評価する気風
(c)関西の本質を活かした発展
(イ)「関西ダイバーシティ&インクルージョン(D&I、多様性&包摂)ビジョン」2021.11
~労働力人口の減少の下で、企業が持続的に成長する。
~社員の多様性(性別・国籍・年齢)、多様な働き方を認める。
各人の個性や強みを組織の力に活かす。(ダイバーシティ・マネジメント)
「多様な人材が、能力を発揮する環境整備」
(a)「基本理念1:多様な人材の活躍の場」「アクション1:複線的なキャリア(職務経験)選択」「アクション2:多様なワークスタイル(働き方)と適正評価」
 「基本理念2:多様な価値観を企業の成長に取り込む」「アクション3:バイアス(偏り)が無い風通しの良い組織風土」「アクション4:トップコミットメント(上級方針)の浸透」
(b)「基本理念・アクション」を受けた「女性の活躍:取組み」
「1 幅広い職種・管理的立場で多くの女性が活躍:女性採用40%以上、管理職30~40%
「2 男女ともに仕事と家庭の両立をし易い制度:男性育休取得100%」
「3 業務推進・意思決定等で多様性を尊重:従業員意識実態調査と課題改善
「4 トップ主導で役員・管理職層で進める:方針に基づく行動計画の策定、女性活躍専門部署の設置」
(c)「会員企業の取組み支援」
~アンケート調査による現状把握、結果を踏まえた会員企業ヒアリング、先進事例の紹介、セミナー開催、情報交換会によるネットワーク形成、課題と対応を整理。
~女性管理職層の交流会、経営視点で考える視野拡大、課題共有と解決の糸口を見つける機会提供、業種を超えたネットワーク形成、ロールモデル(手本・規範・模倣対象になる人物)支援
~フォーラム開催:有識者講演、企業事例紹介(女性・外国人・高齢者・障害者)、機運醸成。
~特設ホームページ拡充
これらを繰り返し行い、目標数値の推移をチェックする
(d)講演例
~「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I、多様性&包摂)」に「Equity(公正性・公平性)」を加えた「DE&I」
ライフイベント(育児・介護等)を考慮した職場運営、仕事量調整、「お互い様精神」を醸成。
~人口減少の人手不足。社員の声を拾い、(立場が違っても)全員が腹落ちできる施策
~数値目標の達成の先にあるイノベーション(革新)の創出を見据えなければ、本質的な効果を得られない。
【引用者感想】高い(抽象的な)理念・目標を挙げて終わらず、具体的に継続して行い、結果を出している。倫理的な「あるべき」に止まらず、「現実からの要請」「企業運営上の効果」に及んでいる
(3)「企業は社会の公器」で、「社会の様々な要請に応え(課題発見)」、「(8種類の)利害関係者等の社会に貢献しながら」「事業継続する」
(ア)「企業は社会の公器」
(a)「会社は公器――経営観・経営理念〈9〉」
https://konosuke-matsushita.com/keywords/management/no9.php
「巨額の資本を集め、広大な土地を占有し、天下の人を擁して事業を営む企業は、形は株式会社、私企業であっても、本質は世間のもの、公器であるという考え」
~(社会資源〔資本・土地・人 etc.〕を預かって事業を行うから)納税に関して「公器が赤字を生むのは罪悪である」
(b)「企業は社会の公器―これからの社会をつくる企業経営とは」(2018.8.1 PHP総研)
https://thinktank.php.co.jp/policy/4976/
「CSR は「経営そのもの」であり、企業は「社会の公器」であるということ」
https://thinktank.php.co.jp/wp-content/uploads/2018/08/20180801_1.pdf
~CSR(Corporate Social Responsibility、企業の社会的責務)
~CSRは「経営そのもの」と考えるべきで、経営理念の達成のために企業は存在する
社会の様々な要請に応え(課題発見)、自社の事業活動やサービス・製品を通して(課題の受け止め、組織の任務目標〔ミッション〕設定、CSR経営)社会に影響を及ぼす
~企業は社会全体のもので、「企業の役割は、社会の足らざるところを補い、これを潤沢に作りだすことで、世の貧困を失わせるもの」
~「事業は人なり」と言うが、企業活動の根幹になる人間は、「天下の人、社会の人材」で預かりもの「人材の育成」は、欠けてはならない
 その人材を介して「事業活動が人びとの役に立ち、社会生活を維持し潤いを持たせ、文化を発展させるものであって、初めて企業は存在できる」
~「企業の株式は、一部の資本家や投資家によって保有されるのではなく、幅広く大衆が保有することが、社会や経済にとっても、企業自身にとっても、重要である」
~「株式や債券の購入を通じて、企業に関わる投資家の中には、長期の成長を期待する人もいれば、短期の利ザヤ稼ぎを志向する人もいる」。
~「近年では、企業に対する情報開示の要求も多岐に及び、四半期ごとの決算の開示も求められる。三カ月ごとに決算を出し、その評価で株が売買され、株価に反映されるようでは、企業側も長期視点を持てるはずもない。
(イ)「企業は社会の公器―自社の存在意義を再確認しよう」(2021.1.11 T&A税理士法人)
https://tax-help.jp/topics/2021/01/post-273.html
~近江商人の経営哲学「三方よし」、商いは「売り手と買い手が満足するのは当然で、更に社会に貢献できるものでなければならない」
「社会」の意味を「8種類の利害関係者(ステークホルダー)」に分けて捉えると、
①顧客、②社員(家族含)、③経営者(家族含)、④取引先、⑤株主、⑥地域社会、⑦環境・資源
、⑧行政機関等になる

「ニーズ(需要・要請)の変化に対応」>「社会貢献」>「事業継続」
(4)「CIとの比較」~MI(マインドアイデンティティ):ミッション(成し遂げたい目標)、ステートメント(宣言)
(ア)「コーポレートアイデンティティ(CI)とは?|戦略事例あり」
https://circl.co.jp/jp/views/branding/what-is-ci/
~(Corporate Identity、コーポレートアイデンティティ)
~「CIとは、顧客や市場はもちろん、その企業で働く社員に対して、自社がどういった存在であるかを示す」「4つの要素で表現する(MI.BI.XI.VI)」「企業が自らの存在価値を提示・発信する」
企業理念やビジョンを、(ⅰ)簡潔な言葉で表し(MI)、(ⅱ)これを軸に社員の行動規範(BI)を示し、(ⅲ)デザインやロゴなどの視覚(VI)的に表現し、(ⅳ)顧客と企業の接点におけるあらゆる体験(XI)を統一化する
~上記(ⅰ)MI(マインドアイデンティティ)を中心に、(ⅱ)BI(ビヘイビアアイデンティティ)、(ⅲ)VI(ビジュアルアイデンティティ)、(ⅳ)XI(エクスペリエンスアイデンティティ)と包括的に設計したものがCI。企業活動の軸となり、長期に変わらず受け継がれ続ける
CIの効果、(a)顧客は商品・サービスに込めた企業の価値観・ストーリーに共感し、商品以上の価値を受け取る、(b)競合企業との違いを打ちだし、唯一無二のポジションを築き、価格競争や他社との競合の頭打ち状態から一歩抜け出す、(c)社員が自社への理解を深め、CIが反映された経営戦略において、自分の役割を認識し、(愛着・忠誠を持って)全社員が同じ目標を目指すことができる
MI(マインドアイデンティティ):ミッション(成し遂げたい目標)、ステートメント(宣言)
(イ)企業・会社統治について、「CI(コーポレート・アイデンティティ)」の復活・推奨
民間会社で働く基本は営利追求なので、「社会との関係で何故働くか」という理由は自分で設定しないと無い。それが無いと、定型的業務(ルーティン)以外の部分、プラスアルファーが出て来ない。会社の共通の意識が無い状態になる。例えば食品会社が「金儲けの○○会社」でなくて「健康に貢献する○○会社」と会社の理念を出す
(5)現行CGコード「5基本原則」の「優先順位と内容を転換する」
(ア)現行の章立ては、「(a)株主の権利、(b)株主以外の利害関係者(ステークホルダー)、(c)情報開示と透明性、(d)取締役会等、(e)株主との対話」になっている。
(イ)これを例えば、「(a)情報開示と透明性、(b)8種類の利害関係者(株主以外のステークホルダー)、(c)株主の権利、(c-2)株主との対話、(d)取締役会等」に順序を変える
(ウ)内容についても、前記【3】CGコードの在り方、【4】「結果」の総括、【5】三方良しに改訂する・CSR・CI、を踏まえて記載する
(a)情報開示と透明性、
 企業不祥事、社会との関係で規定する。
 「単なる投資情報という、下劣な品格の無い矮小な取扱いを止める」
 企業経営を通した「社会的課題の解決方針」を書き込む。
(b)8種類の利害関係者(株主以外のステークホルダー)、
 顧客、社員・従業員、経営者、取引先、株主、日本社会、世界に「三方良し」で貢献する
 社員・従業員を位置づける。日本人の「江戸時代からの識字率の高さ・真面目さ・向上心等」は、企業の利益の源泉であるから、正当な分配を行う。「人は石垣、人は城」「人材流出を防ぐ」
(c)株主の権利、(c-2)株主との対話、
 公正性、適正性等
 「企業は社会の公器」であることを踏まえた「適正な権利行使の責務」を明記する
(d)取締役会等
 会社に係わる「8種類の利害関係者の利益調整」
 「社会の公器」として「企業経営を通した社会貢献」を目指す責務
 「創業家の家訓・理念」(創業精神)に相当するもの~MI(マインドアイデンティティ):ミッション(成し遂げたい目標)、ステートメント(宣言)
 長期的な視点で企業経営する責務

【6】参考情報
(1)「株主還元の呪縛、解けるか」(2023.1.18 朝日新聞「資本主義NEXT会社は誰のために12」)
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15530269.html?_requesturl=articles%2FDA3S15530269.html&pn=4
~関西経済連合会、会長「経営者は、経済が善く回転していくために、分配を公平に考える必要がある」「株主は資金の出し手、経営のお目付け役として尊重する、ただ分配が株主に偏り、格差を広げたのではないかという問題意識」
~1973年、赴任した米国シカゴ。中流家庭でも大企業の社員は豊かな暮らしぶりだった。しかし荒れた地区では、酒や麻薬におぼれ、犯罪に手を染める人たちが増えていた。
~1976年、ノーベル経済学賞を受けたフリードマンは「経営者の役割は、株主のために最大限利益を上げること」だと主張した。1980年代以降、所謂「株主資本主義」(金融資本主義)は米英で「市場重視」「新自由主義」政策を進めた。
~関経連の委託でまとめた研究によると、「株主への配当と自社株買いの金額が増え続けた」一方、「従業員の給与は2000年代半ば以降、横ばい」だ
 2002年以降、「政府が投資家優遇を進めた時期に、特に株主還元が増えた」。「株主利益のために、従業員給与が伸びない」。2001~2006年、koizumi政権の雇用規制緩和等。
~関西財界(近江商人)「長く続くことが最も利益をもたらす」「皆んなが良くないと続かない」、だから「短期の株主利益を重視する株主資本主義からの脱却を重視する」
(例えば株主の意向から自由なオーナー企業は)「目線が遠いこと」「短期の損得に縛られずに、技術開発や投資、人材育成をできる」
創業精神(経営理念)が会社を導く「すぐやる、必ずやる、できるまでやる」etc.
財政・財源が限られれば、国による再分配にできることは限られる
 民間が主体になって、経済全体の公正で持続的な成長を実現すること
(2)「従業員=株主は理想郷か」(2023.1.12 朝日新聞「資本主義NEXT会社は誰のために8」)
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15524635.html
~米国のESOP(従業員株式所有制度):会社が信託組織を作り、毎年、資金を拠出する。信託組織が創業家等から株式を買い取り、従業員に割り当てていく。従業員は退職時に現金化して受け取る。
 会社は拠出金を損金にして節税できる、等優遇措置がある。
 企業売買等と比べると、従業員が解雇されず、地元企業が残り、地域社会が壊れない。
~全米で導入企業は6千社以上。従業員株主1人当たり保有額は約1700万円。
~日本は、米国ほど税制優遇はない。日本版ESOP、社員持ち株会等。

【関連ブログ】
(1)「21世紀の国富論」新技術を生み出す会社・資本の仕組み(2007)
~著者は、「中央アメリカの考古学に没頭するために、まずビジネスで資金を作るために ビジネススクールに入り(2年間国連開発計画・資本開発基金の専門管理職勤務の後)会社設立事業計画書を書いたが、技術開発を担当するエンジニアを雇えないため自ら工学部大学院に入り直し、製造管理工学も含めて学び、実際に開発した製品と設立した企業を売却して、得た資金でベンチャーキャピタリストになった」。
 即ち、技術者でベンチャー企業を育てる事業家で、米国資本主義の真ん中に居る
 この人物が、「米国型企業統治が産業を衰退させた」仕掛けを説き、社会貢献こそ企業の目的、人生の幸せ(の基準)と断言し、「新技術・基幹産業を生み出す」「会社・資本の仕組み」を特定し、「日本への提言」を行う。
ROE(株主資本利益率)経営は「既にあるもの」の整理・効率化はできても「今はないが将来作るもの」の 価値最大化はできず、むしろ切り捨てる指標で、新技術・産業を生み出せない
「理想的なコーポレート・ガバナンスに必要なのは、経営している人々の理念」本来の企業目的、株式公開企業は「有用な製品・サービスを提供して社会に貢献する」のが目的で、「株主の利益はその結果に過ぎない」。企業は従業員や顧客、仕入先を含むパブリックなもので、「株主のもの」ではない
かつて創業者は「どんな企業でありたいか」理念に基づく経営をして、ビジネススクール出身者は経営の数量化が得意な参謀だった。/この参謀(「手段」のことしか知らない人)が社長になると、「数字自体が企業の目的になってしまった」。手段は目的に成り得ないという自制が無い
社会のあり方の変更/目的と手段の転倒を正す/アメリカンドリームの「金持ちになると幸せになれる、幸福の定義」に問題がある。金が無いと惨めだが、金で買ったもので自分は満たされない。/「何が幸せで、何を人生の目標にすべきか」考え直す時期に来ている
 社会貢献こそ企業の目的、人生の幸せ(の基準)
~近江商人の「三方善し」、商売人は「お客様のために善し」「世の中のために善し」「自分のために善し」の「順番を守りぬけ」。顧客に喜ばれ、社会に貢献し、それがやがて利益になって自分に返ってくる。/「世の中の役に立つ」ことは仕事の根幹で、思想ではなく、国や文化を超えた本質論だ。
(2)「リストラなしの「年輪経営」いい会社は「遠きをはかり」ゆっくり成長」(2009)
~社員研修で使う「100年カレンダーの中に自分の命日が必ず有る」「そこで何をするか」人生の達観
~「売上げも利益も、社員を幸せにする手段で、目的ではない」人件費はコストではなく「会社の目的」「そして地域や社会に貢献する」
 正社員から派遣社員への切り替え、非正規社員の首切りをして企業業績が回復しても、 世の中の人は不幸になるという結果。
「遠きを図る」経営戦略、二宮尊徳「遠きを図る者は富み、近くを図る者は貧す、それ遠きを図る者は百年のために、杉苗を植う、まして春蒔きて秋実る物においてをや、故に富有り、近くを図る者は、春植えて秋実る物をも尚遠しとして植えず、唯眼前の利に迷うて蒔かずして取り、植えずして刈 り取る事のみ眼につく、故に貧窮す」
 四半期ごとの決算は労力が掛かり、中長期的な取り組みが疎かになり、 会社の経営にマイナス
~目指す経営ができないから株式上場はしない。株式市場関係者や投資家は誰も「社員の幸せ」とは言わず、株価評価のために四半期・月次・日次の経営数字を求める。「遠きを図る」経営には3年ごとの決算でも十分。
 株主は本来、会社の理念や製品を評価して、応援しようと投資する。株価を上げて売り抜けるのはマネーゲーム。本末転倒。会社は「お金を得る道具」ではない。
個人や部署の業績も、長年培った会社の信用・蓄えた経営資源・周囲のバックアップの積み重ねの上であり、またその個人も誰かに育てられた。お金をぶら下げて社員を走らせるのは間違い。親がトンビでも鷹でも、子供には等しく教育を受ける機会を与える。人は心の底では正義感を持っている。会社が「世のため人のため」になれば、頑張って働く
人はやる気が起きると、仕事に追われるのでなく追うようになる。情報を共有して共通理解を作る。数字の報告に限らずエピソードを話し合う中で会社の考え方や進む方向を合意形成する。
~会社における教育。二義的でない本当の教育は「人間はどう生きるべきなのか」「どう生きるのが正しいのか」を教えること。「幸せに生きる」ことが人生の目的であり、権利であり、義務でもある。「儲けることが正しい」でなく「利他」、「公に奉仕する」「人から感謝されること」
~社会は価値観を変えて儲けランキングでない「新しい物差し」 が必要取引先、顧客、日本、世界の幸せへの貢献度
 「健康な会社」を作れば利益は出る。利益は目的ではなく健康な身体なら自然と出るウンチのようなもの。「バランスのいい会社(製造、販売、開発、財務、社員教育、地域貢献)」
~なお著者はメジャーな賞として、2002年「日刊工業新聞社、中堅・中小企業の優秀経営者顕彰制度の最高賞、最優秀経営者賞」、2007年「社団法人中小企業研究センター、グッドカンパニー大賞の最高賞、グランプリ」を受賞した。
http://www.hi-ho.ne.jp/t1997/z-nenrinkeiei.htm
(3)「CAPITALISM : A LOVE STORY」(邦題「キャピタリズム、マネーは踊る」)(2009)
~監督は、メジャーな賞を多く取った巨匠である。1989年「ロジャー&ミー」(GM工場での大量解雇)で全米批評家協会賞、1995年「TV NATION」でエミー賞情報シリーズ部門最優秀作品賞、2002年「ボウリング・フォー・コロンバイン」(米国銃社会の問題点)でカンヌ映画祭特別賞・アカデミー長編ドキュメンタリー映画賞、2004年「華氏911」(911同時テロ後の米国とブッシュ政権)でカンヌ映画祭最高賞パルムドールを受賞した。
~金を心から愛する超富裕層は自分の金だけでは飽き足らず人々の金を巻き上げる仕組みを作り、政権に深く入り込んで法律・人事を意のままにして、富を独占した
~(引用者注:金融資本主義の投資指標である株主資本利益率(ROE)の計算式では、工場・研究投資や賃金を削れば数字が上がる。この結果、実業・産業の解体が進む。「産業技術によって付加価値を生産する」のでなく、「マネーゲームで人の資産を取り上げること」が唯一稼ぐ方法である金融(株主)資本主義に至る。)
日本と世界の在り方を、「猛獣型資本主義・市場原理主義」から「富国有徳・修正資本主義」へ、明確に軌道修正する
 日本型価値基準/企業・会社統治について、「CI(コーポレート・アイデンティティ)」の復活・推奨。
 日本型価値基準/国造りの価値観について、「富国有徳・修正資本主義」。
http://www.hi-ho.ne.jp/t1997/z-capitalismalove.htm

【参考リンク】
(1)「強欲と争いの穢土に在って普通でない国を目指そう」「三方良しを日本文化の基礎にしよう」(2015)
~徳川260余年の平和が日本にとっての普通、「人種不平等・「啓典の民」1神教の分派抗争・強欲資本主義」の欧米に追従するのは誤り
~日本と世界の在り方、日本型価値基準/国造りの価値観・目標を、「猛獣型資本主義・市場原理主義」から「富国有徳・修正資本主義」へ、明確に軌道修正しよう。
https://ameblo.jp/t1997/entry-12108487279.html
(2)「税制の改革」(1998)
<累進課税は受益者負担>
 高額所得は、実際には、「現在の社会の仕組みが結果として、その人の能力以上の収入を得させた」面が強い。
 金融制度や情報通信基盤などの「社会の仕組み(インフラ)」「公教育」「社会保険」等を整備・維持するためには、大量の税金を投入している。高額所得者は、その受益者であり、税金の累進課税は受益者負担にあたる。
 また、金融商品や株式等のうち、投機的取り引きで儲けた場合は、その実態は、勤労所得や産業の利益とは、異なる。だからこそ、税の「所得の再分配機能」により、公正さを確保することができる。
<総合課税が必要>
 よく言うことに「課税ベースを広くする」というのがあり、その意味するところは「消費税の増税」であったり「所得税課税最低限の引き上げ(下げ)」であったりする。しかし、税制の整合性から「課税ベースを広くする」うえで最優先の事項は総合課税以外に有り得ない
http://www.hi-ho.ne.jp/t1997/z-zeiseinokaikaku.htm