#法治国家を壊してはいけない某隣国と同じになるから

日本学術会議法は、推薦者をそのまま任命することを想定している(未定稿)

 2020.10.5


1 日本学術会議法(昭和23710日法律第121号)とは何か

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=323AC0000000121&openerCode=1

(1)条文の抜粋

~第一章 設立及び目的

第二条 日本学術会議は、わが国の科学者の内外に対する代表機関として、科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させることを目的とする。

~第二章 職務及び権限

第三条 日本学術会議は、独立して左の職務を行う。

一 科学に関する重要事項を審議し、その実現を図ること。

二 科学に関する研究の連絡を図り、その能率を向上させること。

第五条 日本学術会議は、左の事項について、政府に勧告することができる

~第三章 組織

第七条

2 会員は、第十七条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する。

~第四章 会員の推薦

第十七条 日本学術会議は、規則で定めるところにより、優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に推薦するものとする。

~第六章 雑則

第二十五条 内閣総理大臣は、会員から病気その他やむを得ない事由による辞職の申出があつたときは、日本学術会議の同意を得て、その辞職を承認することができる。

第二十六条 内閣総理大臣は、会員に会員として不適当な行為があるときは、日本学術会議の申出に基づき、当該会員を退職させることができる。

(2)上記のとおり、会員の身分の得失には、日本学術会議が係わる規定になっている。

~第七条2項「会員は、・・推薦に基づいて・・任命する」

~第十七条「日本学術会議は、・・会員の候補者を選考し、・・内閣総理大臣に推薦する」

~第二十五条「内閣総理大臣は、会員から病気その他やむを得ない事由による辞職の申出があつたときは、日本学術会議の同意を得て、その辞職を承認する」

~第二十六条「内閣総理大臣は、会員に会員として不適当な行為があるときは、日本学術会議の申出に基づき、当該会員を退職させることができる」

(3)解釈の補足

26条で不適当な行為があるときでも、内閣総理大臣は単独の権限で退職させることはできず、同会議の申出に基づくことを要する・

25条でも、会員からの辞職の申出であっても、同会議の同意を得なければ、内閣総理大臣は単独の権限で辞職承認することはできない。

17条のとおり、会員の候補者を選考するのは同会議である。

7条2項のとおり、内閣総理大臣は同会議の推薦に基づいて会員を任命する。

3条のとおり、「日本学術会議は、独立して職務を行う」。即ち、政府・内閣総理大臣の指揮命令から独立していることを意味する。例えば、内閣総理大臣は厚生労働大臣を指揮監督し、厚生労働大臣は厚生労働省の事務次官等を指揮監督するが、このような意味で日本学術会議が内閣総理大臣の指揮監督を受けることは無い。前記のような「会員の身分の得失に、日本学術会議が係わる規定」は、この「独立して」行うことを制度的に裏付けている

5条のように、同会議が「政府に勧告することができる」のは、「独立して職務を行う」からである。指揮命令下の組織であれば、報告する。

(4)内閣総理大臣は、同会議が選考して推薦した候補者を、任命しないことができるか

前記の条文の構成からはできない

~例外的に考えられるのは、推薦・任命の手続き途中に、26条の「会員として不適当な行為」、例えば「1 論文盗用、2 刑事犯罪等、3 同会議の選考で不正(買収や脅迫等)」等が判明した場合だが、この場合でも単独の権限で「任命しない」ことはできない。なぜなら7条、17条、25条、26条との関連で、同会議の「申出に基づき」処理することを要する

(参考)「日本学術会議の会員任命拒否は何が問題か」

https://note.com/horishinb/n/n44bdca12f219#F644H

 

2 日本学術会議会員の決め方

(1)当初(昭和23年、1948年)の法律では、会員は研究者による直接選挙で選んでいた。

「(旧)第7条 日本学術会議は、選挙された・・会員・・をもつて、これを組織する」

(2)昭和58年(1983年)法改正で、同会議が推薦した候補者を、内閣総理大臣が任命するように変えた。

このときの政府答弁・・・では、形式的に任命するものであり、候補者の適否の裁量をしないとした。中曽根康弘首相(当時)が「実態は各学会が推薦権を握っている。政府の行為は形式的行為」などと答弁している。

(3)解釈の補足

当該法律の立法趣旨は、条文だけでなく国会審議で明らかになる。質問・答弁は、法律解釈の基本指針になる。前記1の条文の構成と、前記2(2)の政府答弁から、「同会議が選考して推薦した候補者を、内閣総理大臣が裁量を加えずに形式的に任命する」という解釈になる

 これから逸脱して、「自由裁量で任命したり、しなかったり」ということは違法になる。一部を除いて任命するのは違法な行政処分、任命しないのは違法な不作為になる。

(4)今回以前にも、平成28年の補充人事の選考過程で首相官邸(官房長官?首相?)が難色を示し、複数人が拒否されたとのことである。

 

3 今回の「任命しなかった」ことの解決方法

(1)日本は法治国家であるから、法律が何を規定しているかを議論して、その結果、政府が誤った対応を改めることである

(2)政府が議論に対応しなかったり、具体的な理由を一切説明しないのは、行政権による独裁になる。法治でない人治の某隣国と同じになる。

(3)法律を国会で審議して、立法趣旨・法律解釈の基本を明らかにするにも係わらず、後日に政府が任意に解釈を変えるのでは、国会審議の意味を無くす。国会とは、即ち国民の代表である。

 

4 他の解釈と比べると

(1)憲法・・「・・戦争と、武力による威嚇・・は、国際紛争を解決する手段としては、・・放棄する」「前項の・・、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」~自衛のための自衛隊は、憲法に抵触しない。この解釈は、国会で繰り返し議論している

(2)検察庁法・・

①令和2年1月に黒川弘務東京高検検事長に関して、当時の森雅子法務大臣が求めた閣議決定で、一般の国家公務員法を当てはめて(解釈して)定年延長したのは違法だが、同年5月に賭けマージャンが発覚して辞任したために、違法な定年延長は取消も撤回もされないままになり、また同大臣は進退伺いをしたが安倍晋三内閣総理大臣が慰留したために辞職しなかった

②また令和2年5月に、公務員の65歳定年延長に便乗して、検察官の定年を(裁量で)「内閣や法務大臣が認めれば・・3年まで延長できる」と変える検察庁法改正案に対して、「検察の人事に政治権力が介入することを正当化するものだ」として反対が広がり、当該国会での成立が見送られた。しかし、菅義偉(すがよしひで)前官房長官・現内閣総理大臣は、再提出を見込んでいる

(3)結局、内閣法制局長官を、平成25年に慣例を破って外務省出身者を任命した以降、「法律解釈を条文、立法趣旨、制定時国会審議、等からでなく、そのときの内閣の希望するように回答する」ようになっている模様である。後日に政府が望むとおりに任意に解釈を変えるのでは、国会審議の意味を無くし、法治を崩すことになる