赤井寅三 セラピー -19ページ目
 蝉が死ぬ直前にバタバタと無様に飛びもがくのが、子供の頃から苦手だ。今でも嫌いである。あいつらは歩道橋とかマンションの廊下といった、我々人間にも逃げ場の少ない場所でよくもがいているから困る。夏の終わり頃の夜帰宅してエレベーターが私の家のフロアに着くと、どこかで「ザ」行か「ガ」行の音で蝉の断末魔の声が聞こえると、廊下を歩くのにかなりの勇気が要るのだ。かと言ってブチッと踏むのは気が引ける。本当に厄介なのだ。

 地中に何年もいるくせに、外へ出たらたった数日で死んでしまうのは何故だろう?そういう生態の故に、もがきたい気も判らないでもないが、往生際の悪さには同情ができないのだ。



 一度だけだが、蝉を美しいと思ったことはある。
 近所の公園で、子供たち数人が木の幹を揃って見上げていたのだ。声をかけると、
「セミが羽化したよ」
とある子が教えてくれた。
 私自身、羽化直後のセミは初めて見た。何と言うセミかは知らないが、薄緑の柔らかそうな羽をしていた。あのパリパリした感触の羽ではなく、濡れそぼったような、ビニール素材のような淡い光沢の羽だ。
 私たち人間が取り囲んでも、逃げようにも逃げられないのだろう。鳴きもせず、ただじっと羽が乾ききるのを待っている姿に感動したのを憶えている。実際は全てのセミにこういう時間があるのだろうが、見ていないと判らないものだ。



 勝手な話だが、蝉の声は好きだ。「夏だ!」ということをあれほど一発で判らせる音は少ない。私は夏が大好きなのだ。


 今日、今年初めての蝉の声を聞いた。


 蝉の声を聞く度に目に浮かぶ九十九里浜、なのは「歌舞伎町の女王」だ。夏っぽくもないが夏しか似合いそうもない曲だ。よくあるナンパな夏の音楽とは全く別物の、ヒリヒリする夏。
 この曲で私は椎名林檎を知った。






無罪モラトリアム/椎名林檎

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 いわゆるミステリを初めて読んだのは中学1年の頃だ。母親から借りたアガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」だった。有名な「十人のインディアン」の歌にちなんだ展開ということもあったのか、ぐいぐいと読んでいけたのを覚えている。小学生の頃に学校の図書館で江戸川乱歩の「怪人二十面相」やルブランの「怪盗ルパン」を借りて読んだ経験はあったのだが、「そして誰もいなくなった」の読後感は新鮮だった。オトナの小説を読みきった!ーーーそんな感慨が大きかった。気持ちとして、童貞喪失に近い。

 一度覚えた刺激は、更なる強さを求めてしまうものだ。あいにく家にクリスティの他の著作が置いてなかったので、親の書棚から別のものを物色して見つけたのが、松本清張の短編集だった。
 これは坊主頭の中学生にとっては、まさにドラッグだった!明智小五郎やホームズのような名探偵はほとんど登場しないが、そんなことは全く問題ではなかった。殺人が私と同じ時間軸で起こっているかのような錯覚がした。ヒリヒリするようなリアルな感覚が堪らなかった。童貞を喪ったと思ったらいきなり吉原の泡姫に惚れきってしまうようなものだ。そういう具体的な経験はないが、たぶんそんな感じだ。

 短編集から徐々に現代小説長編へと読み進め、「ゼロの焦点」「点と線」などの代表作も読破し、「砂の器」を上下二巻を読み終える頃には、すっかり清張さんにはまっていた。・・・今思えば、変な中学生だ。以前書いたがこの頃私がよく聴いていた音楽がグレン・ミラーのスウィングジャズだった。自分でもおかしい子供だったと思う。
 中学生の私が松本清張に魅き込まれた理由として、長編の現代小説によく濡れ場が書かれてあることが挙げられる。これは大きな理由だ。大体、政治家や官僚が愛人と逢う場面は作品上必要だ。清張さんはあまりギトギトといやらしく書かないが、その分読み手が場面を想像する。それがかえってエロく感じた。残念ながらこの点は中学生時代と今とで大きな変化は無い。



 ところで先日久し振りに丸善に行くと、あの分厚い唇の松本清張の写真がずらりと並んでいるコーナーを見つけた。まだ生誕百年のイベントをやっているのか、と思ったら、いかにも松本清張にふさわしいムックだった。タイトルを見ただけで買った。

 松本清張と地図。この組み合わせだけで独特の世界観がイメージできる。






松本清張地図帖/帝国書院編集部

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 本日6月25日を韓国では「ユギオ」と呼ぶ。「625」を韓国語で読むと「ユギオ」なのだ。これは朝鮮戦争が勃発した日付だ。
 1950年6月25日に突如始まった朝鮮戦争は、60年経った今も正式には終わっていない。この戦争は北緯38度に設けられた「軍事境界線」を北朝鮮軍が突破して始まったものだが、それ以前に何故朝鮮半島が南北に分断されたのかを考えると、日本人として複雑な思いがしてならない。以下は歴史に「もし」をつけて考えるときりがないことは承知で書く。

 1945年8月15日に日本がポツダム宣言受諾・降伏した後に、もし朝鮮半島に異なるイデオロギーが存在してなかったら、
 それ以前の1910年からの日本による大韓帝国の併合が、もしなされていなければ、
 さらに遡り李氏朝鮮末期の鎖国政策や国力の著しい低下が、もし防げていたら、


 ・・・戦争は、しかも同じ民族同士の戦は、興らなかったかも知れない、と考えてしまう。

 そして、60年前に始まった戦争で、もし北の共産主義軍が朝鮮半島全土を支配し、玄界灘を越えて日本列島にまで攻めて来ていたのなら、

 ・・・朝鮮半島で今も続く悲しみは、この日本にも起こりえたものなのだと思う(実際に北朝鮮軍は一時期釜山にまで侵攻したのだ)。



 お隣の国だから悲しむ戦争ではない。「ユギオ」は日本にとって決して他人事ではない戦争なのだ。
 ワールドカップがいかに平和な戦いであるかが、身にしみる日だった。






勝利なき戦い―朝鮮戦争 1950‐1953〈下〉/ジョン トーランド

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 鉄分なら、鉄パイプを振り回していた若い頃、手のひらから吸収されていると思っていた。俺をチームに入れてくれた先輩から聞いた話を鵜呑みにしていたのだ。だから俺がよくフラフラになると、その先輩がサッと鉄パイプを差し出してくれたものだ。俺は身体を支えるために先輩から受け取った鉄パイプを両手で握ってそれを杖にして身体をなんとか保った。そんな事が月に二~三回はあった。当時の彼女からは「ウチの生理より多い」と笑われていた。鉄分というものが栄養素の一つで、牛乳にたくさん入っているということはかなり最近知った。素手から吸収されるものではなかったのだ。

 今の親分に杯を貰って以来、俺はヤクザとしてはきれいな身体だ。つまりクスリには全く手を出していない。注射が怖いからだ。誰が喜んであんな細長い奴を身体に刺すのだ。大っ嫌いだ。

 そんな俺が今日、生きるか死ぬかのギリギリのセンにいる。

 まず、徹マン明けの今朝、事務所でフラフラになった。運ばれた病院で「採血します」と、立て続けに三本ものシリンダーに血を抜かれた。
「おおおい!ドクドク血が出てるじゃねえかよう!やだよ俺!」
とチーム時代からの弟分に俺のものまねでその時の俺の様子を説明された。俺は笑うしかなかった。その時の事を全く覚えてないのだ。どうも失神したらしい。
 そして医師から「風邪かもしれません」と、立て続けに一発注射を打たれたのだ。断りも無しにだ。
 不運は続く。その後「しばらく静かになさってください」と医師から言われ、ベッドで点滴をブッ刺された。その時も泣いて抵抗したらしいが、また失神したので記憶がない。


 生まれて初めて、俺は一日に三本もの注射を身体に刺された。しかも最後の一本はまだ刺さったまんまだ。これが医者のする事か?点滴の袋を見上げると、まだ半分以上残っている。怖いよう。これだけの液体が俺の血管の中に入っていくのか・・・!やだなあ。俺の血が薄まっちゃうよ。

 ふとその時、朝方の採血のことを思い出した。
 シリンダーに俺の血がドクドク入っていく映像がフラッシュバックした。記憶が飛ぶ直前の映像だ。
 そうか・・・あの血の勢いは、生きている証拠なのか・・・?

 気が付くと俺は左手の親指を中に握りしめていた。看護婦(この人も怖い)が採血の時に俺に指示した握り方だ。
 そうか、俺は今無意識に、採られた血をこの点滴で取り返そうとしてるんだ。
 あのドクドクと出て行った血を、こうして新たに身体の中に入れ替えてるんだ。
 本能ってすげえ。人間って素晴らしい。俺ってすげえ。


 知らずに俺は泣いていた。
 上手くは言えんが、こう、命の大切さに目覚めたと言うか・・・・・・。


*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆


 しかし俺の自分への感動は弟分の言葉でかき消された。
「おお!こりゃいかん!先生ーっ!早く来いや!」
「あ、すいません、点滴の注射、外れちゃいましたねえ」
「先生、早く兄貴に注射し直してくださいよ!」


 ・・・余計な事をしやがって・・・。
 この日通算四本目の注射を刺され、俺はまた失神した。







カラー写真でよくわかる!注射・採血法―適切な進め方と安全管理のポイント (ビジュアル基本手技)/繁田 正毅

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 本日、参議院議員選挙が公示されたので、しばらくはこういったブログにも下手なことは書けなくなった。

 ・・・ひょっとしたらこの記事もどこかから検閲を受けることになるかも知れない。以前も官能小説を書いたら検閲に会い、伏せ字だらけの記事になった苦い経験がある私は、すでにビクビクしている(『官能小説(検閲済)』をご覧ください)。


 まず、あの###緑###一色のポスターはダサい。私はあれを初めて見た時、長いこと####、日に当たり風##。###雨に晒されて色が#####はげ###落ちた####、###ポスターだと思ったのだ。暗にあ##の政####党の古##臭さを表している##ようで、####妙に笑ってしまった。

 かたや####は###が###。これはもう、#####と言った方が適切かも知れない。私はむしろ、###に####な選択だと考えているのだが、####果たして、####かどうか。

 そして忘れてはならないのが、勃#####。まず####政党####名#######、###が####笑える。国民の######、####。

 また、参議院議員選挙はご承知の通り半数を改選するので、###が#####な候補者は####である。これは一言で言うと地#####な####ぽ######に近い。言わば「###」である。

 
 候補者の皆さんも暑い中頑張ってください。







公職選挙法違反判例集/著者不明

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