1930年代のフォードV8に関するメモランダム | 柏駅から70チェーン

1930年代のフォードV8に関するメモランダム

もうじき、ハセガワさんから、1/48でいすゞのトラックが出るのだそうです。今からもう、胸はドキドキ気はそぞろといったところ。でもねぇ、何よりもメジャーなフォードV8がなぜプラキットに恵まれないのか、そこが不思議でならないんですよ。

1930年代の日本では、トラックやバスといえば外国車が猖獗(というのもおかしい話ですが)を極めていました。なかでもフォードは、どこでも部品が調達できるということで、そのエンジンが産業機械にまで使用されていたほどです。

そのフォードですが、関東大震災直後のT型はともかく、昭和期でいいますと、まず1920年代後半に見られたA型級、そして少数派かなと思われるAA型級(こいつのソ連版コピーが、かのGAZ-AAなんです)から30年代初頭のB型級を経て、やがてアメリカのワークホースとしても知られるV8へと変遷を遂げます。
これらのうちで、「昭和10年代の情景」に似合うといえば、やはりV8でしょう。というわけで、今日は、ちょっと戦前期におけるV8の趣味的な外観上の流れを概括してみたいと思います。

アメリカでは、1934年式からV8のトラックが作られます。しかしながら日本国内では、このデザインはちょっと馴染みが薄いんじゃないか。残された写真を色々と見る限りでは、フロントグリルの形から察するに、どうやら1935年型から普及していったのではないかしらん。

さて、フロントグリルの変遷はアメリカと軌を一にしていますから、外観上の興味については、本国アメリカに残されている車をサイト巡りで見てみましょう。そのため、トラックではなくピックアップが多いのは少し残念ですが。
で、まずは1934年式から。

http://www.seriouswheels.com/1930-1939/1934-Ford-Truck-Unrestored-FA.htm

どうもB型級のような面構えで、なんかV8らしくないなぁと思うのは私だけでしょうか。でもアメリカでは、こいつの1/32ミニカーも出ているみたいです。
お次は、1935年式。

http://www.35pickup.com/35Pickup.html

ね。この御面相、戦前の日本の写真でも馴染みがありますね。こういう前傾したグリルが、昭和十年代の最新モードだったわけです。もちろんフォードV8の35年式も国内で走っておりました。このあたりからではないでしょうか、国内を走ったV8といえば。
実はこのモデル、タミヤ取り扱いの1/24ミニカーにあるんです。

http://www.tamiya.com/japan/products/danburymint/coca-cola/d2015.jpg

高級コレクターズアイテムで知られる、かのダンバリーミント(DanburyMint)のミニカーで、積荷の販売機も付いているという魅力ある製品。ただしお値段もそれなりで……^^;
ちなみにダンバリーミント社では、同じ1935年式フォードV8で、タミヤでは扱っていないノーマルのピックアップ及び郵便ピックアップも売っています。こういう趣味の良さを受け入れる素地が、アメリカにはあるんだよなぁ。
余談はさておき、続いて1936年式。

http://www.hotrodders.com/projects/006/01.html

戦前の日本では、トラックに限らず、こんなボンネットを突き出した乗合バスが日本各地を走っていました。もちろん、女性の車掌さんも乗せてです。
そしてお次は1937年式。

http://www.oldbleu.com/

フロントグリルの形が少し変わりましたね。この顔も、古いバスの写真を探せば見つかりますよ。
で、いよいよ真打の登場。1937年に始まった日華事変で、日本軍は大量のトラックを戦場に投入します。もちろんフォードやシボレーとて例外ではありません。それどころか、外資系のトラックは、軍用保護自動車法の下で生産された国産トラックよりも高い評価を得てしまうのです。で、剣道のお面の如き丸いグリルが印象的な1938年型。日本でフォードV8とくれば、この特徴的な顔にトドメを刺します。現在のアメリカでも人気が高いようで、レストア車がたくさんあるようです。

http://www.rasloto.com/
http://www.rasloto.com/gallery/gallery.html

ね、この顔ですよこの顔。日本軍が使っている写真でもよく見かけますでしょう?
色々調べて見ますと、38年式のV8は、1/24、1/32、1/64の各スケールでミニカーも出ているようです。が、やはりここは1/35と1/48の両方でプラキットが欲しいところ。なぜって、考えても御覧なさい。このボンネットとグリルがあれば、トラックだろうとバスだろうと、なんでもござれじゃないですか。それどころか、日本に限らず欧米を舞台とした情景でも使用可能なんですし。もちろん枢軸側でも可能ですよ。ドイツでも、各年式のV8を使用していたんですから。

http://forum.axishistory.com/viewtopic.php?t=115185

いすゞよりも、情景制作における汎用性が高いと思いますけれどねぇ。とりあえず36年式から38年式あたりなら、様々な国の色々な情景で使用可能でしょう。タミヤさん、ハセガワさん、いかがです?